小野田守

小野田守（おの の たもり）

小野田守は、奈良時代に活躍した貴族です。名前は「淡理」とも記され、その出自は明らかではありませんが、従五位上・刑部少輔の官位にまで昇りつめました。

経歴

小野田守の記録は、聖武天皇の時代から見られます。天平2年（730年）には、大宰帥であった大伴旅人の邸宅で催された「梅花の宴」に参加しており、その際に詠んだ歌が『万葉集』に収められています。このことから、彼は文化的な素養も持ち合わせていたことが伺えます。天平19年（747年）には従五位下に叙せられ、官僚としてのキャリアを本格的にスタートさせました。

天平感宝元年（749年）には大宰少弐に任ぜられ、以降、外交関係の官職を歴任しました。特に重要なのは、孝謙朝の天平勝宝5年（753年）に遣新羅大使として新羅へ派遣されたことです。しかし、新羅側が日本と対等な立場を主張し、使節団は礼を失した扱いを受け、任務を果たすことなく帰国することになりました。帰国後、天平勝宝6年（754年）には再び大宰少弐に任ぜられました。この時、唐での滞在経験が豊富で兵学にも精通していた吉備真備が大宰大弐に任命されており、これは新羅との関係緊張を考慮した人事であるという見方があります。

その後、小野田守は左少弁として京官に復帰しますが、天平宝字元年（757年）には刑部少輔に転じ、まもなく遣渤海大使に任命されます。天平宝字2年（758年）には、彼の渤海派遣を祝う宴が藤原仲麻呂邸で開かれ、その際、大伴家持が詠んだ歌が『万葉集』に残されています。小野田守は渤海へ渡り、同年9月には渤海大使である揚承慶らを伴って帰国しました。帰国後には、当時唐で発生していた安史の乱の状況を朝廷に報告しています。この報告を受け、淳仁天皇は、大宰府（大宰帥・船王、大宰大弐・吉備真備）に対し、安禄山の侵攻に備えるよう命じています。同年、彼の渤海派遣の功績により、従五位上に叙されました。

官歴

小野田守の官歴は、『続日本紀』に詳細が記されています。

時期不詳：正六位上
天平19年（747年）正月20日：従五位下
天平感宝元年（749年）閏5月1日：大宰少弐
天平勝宝5年（753年）2月9日：遣新羅大使
天平勝宝6年（754年）4月5日：大宰少弐
天平勝宝8歳（756年）5月3日：山作司（聖武上皇崩御）。6月9日：見左少弁
天平宝字元年（757年）7月12日：刑部少輔
天平宝字2年（758年）2月10日：見遣渤海大使。10月28日：従五位上

まとめ

小野田守は、奈良時代の外交官として、新羅や渤海との関係構築に尽力しました。特に、渤海との外交は、当時の国際情勢を考慮する上で非常に重要な役割を果たしました。彼の足跡は、当時の朝廷が抱えていた外交上の課題や、国際関係を読み解く上で貴重な資料となっています。

参考文献

宇治谷孟『続日本紀 （中）』講談社学術文庫、1995年
宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年
* 平あゆみ「吉備真備右大臣就任の歴史的諸前提 -孝謙称徳女帝の師傅と「軍事参謀」への論考-」『政治経済史学 第295号』、日本政治経済史学研究所、1990年

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