山内豊敷

山内豊敷（やまうちとよのぶ）は、江戸時代中期の大名で、土佐藩の第8代藩主です。正徳2年（1712年）に、土佐藩家老の深尾家分家である山内規重の長男として生まれました。幼名は重固。父の規重は、第2代藩主・山内忠義の弟である深尾重昌の子孫で、山内一族の中でも人望があり、家老として藩主を補佐するほどの人物でした。

享保6年（1721年）に父が亡くなったため、家督を継ぎました。その後、享保10年（1725年）に第7代藩主・山内豊常が亡くなり、豊常には子がいなかったため、豊常の妹である長姫の夫であった豊敷が、豊常の養子となって藩主となりました。同年、将軍徳川吉宗に御目見えし、従四位下・民部大輔に叙任。さらに、享保13年（1729年）には侍従に任官しました。

藩主となった豊敷でしたが、藩政は苦難の連続でした。享保12年（1727年）には高知城が焼失、享保17年（1732年）には害虫による凶作、さらに翌年には前年の凶作による飢饉に見舞われました。これらの災害や飢饉により、藩の財政は逼迫し、幕府から1万5000両を借り受ける状況となりました。このため、豊敷は藩財政再建のため藩政改革を断行します。行政整理や風俗の徹底、製鉄業の奨励、藩士からの半知借上などを実施し、宝暦2年（1752年）には国産方役所を設置し製紙業の専売化を図りました。しかし、この専売化に反対する中平善之進らによる一揆が発生し、一揆側の要求を受け入れて宝暦10年（1760年）に役所を一時的に廃止するなど、藩政改革は失敗に終わりました。

藩政が混乱する中、豊敷は宝暦9年（1759年）に藩校・教授館を創設し、文武を奨励しました。また、目安箱を設置して広く意見を求めましたが、藩政を立て直すまでには至りませんでした。明和4年（1767年）11月19日、56歳で死去しました。跡は四男の豊雍が継ぎました。

豊敷の系譜は以下の通りです。
父：山内規重
母：富姫（西大路隆栄の娘）
養父：山内豊常
正室：長姫（山内豊隆の娘）
側室：加恵（伊笹氏）
四男：山内豊雍
五男：山内豊泰（山内豊産の養子）
生母不明の子女：山内豊治、山内豊儀、山内豊根、峰（松平朝矩正室）、賀（佐竹義敦正室）、正（小笠原忠苗正室）

豊敷は、藩政においては苦難の連続でしたが、藩校の創設など、文化的な面での貢献も残しました。また、目安箱を設置するなど、広く意見を求める姿勢は、当時の大名としては珍しいものでした。

もう一度検索