山本粂吉

山本 粂吉（やまもと くめきち）は、明治26年（1893年）7月25日に生まれ、昭和49年（1974年）2月17日に80歳で生涯を閉じた日本の政治家、弁護士です。元は瀬尾姓で、茨城県新治郡小幡村（現在の石岡市）にて、茨城県士族の瀬尾由三郎の子として生まれます。

絶家となっていた山本家の家督を継承した後、台湾で公学校の教諭を務めます。その後、明治大学の法科専門部を卒業し、弁護士としての道を歩み始めました。弁護士としては、東京弁護士会の副会長や司法省の委員といった要職を歴任する一方、台湾における有力者であった板橋林家の法律顧問も務めるなど、幅広い分野で活躍しました。

政治の世界へ足を踏み入れたのは昭和11年（1936年）です。第19回衆議院議員総選挙に、旧茨城3区から立憲民政党公認候補として出馬し、初当選を果たします。戦時体制下で政党が解散された後の翼賛選挙では、翼賛政治体制協議会の推薦を受けて当選し、翼賛議会においては戦時刑事特別法改正法律案委員会の理事を務めました。

終戦後、幣原内閣のもとで大蔵参与官に就任し、また日本進歩党の結党にも関与しました。しかし、翼賛選挙での推薦候補であった経歴から、GHQによる公職追放の対象となり、一時的に政治活動から遠ざかることとなります。

公職追放が解除された後、昭和27年（1952年）の第25回衆議院議員総選挙に改進党公認で立候補し、再び衆議院議員に当選、政界に復帰しました。改進党では党務委員長という要職を務めますが、翌昭和28年（1953年）の第26回総選挙では惜しくも落選します。しかし、昭和30年（1955年）の第27回総選挙では日本民主党公認で当選し、再び国政の場に戻りました。

改進党、日本民主党、そして自由民主党へと続く中で、山本粂吉は旧民政党系の右派政治家である大麻唯男、宮沢胤勇、野田武夫、小泉純也、浜野清吾、真鍋儀十、中村庸一郎らが集う大麻派に所属しました。大麻唯男の死後には、他の大麻派のメンバーと共に岸派へと合流しています。

その後、昭和33年（1958年）の第28回衆議院議員総選挙、昭和35年（1960年）の第29回衆議院議員総選挙には自民党公認で立候補しますが、いずれも議席を獲得することはできず落選し、これを機に政界から身を引くこととなりました。

衆議院議員としては、戦前に3回、戦後に2回、合計で5期にわたり当選を果たしています。議員活動と並行して、

塩増産本部参与
裁判官弾劾裁判所第一代理裁判長
* 衆議院内閣委員長

といった役職も歴任しました。

人物としては、野球を趣味とし、宗教は日蓮宗を信仰していました。また、郷里にある石岡市立小幡小学校の校歌の作詞を手がけるなど、地域とのつながりも大切にしていました。

家族は、東京市豊島区雑司ヶ谷町に居を構え、妻（明治25年（1892年）生）、一男、一女がいました。

自身の回顧録として、『わが生涯の回顧』という著書（山本粂吉事務所、昭和41年（1966年）11月刊行）を残しています。昭和49年（1974年）2月17日、80歳でこの世を去りました。

もう一度検索