山田古嗣

山田古嗣（やまた の ふるつぐ）は、平安時代初期に活躍した貴族です。出自は中国系の渡来氏族である山田氏で、周の霊王の子孫とされています。官位は従五位上・相模権介まで昇り、能吏としてその名を馳せました。

生涯

山田古嗣は、平安京の左京で生まれました。父は越後介の山田益人です。弘仁12年（821年）に父が亡くなった際には、その悲しみのあまり、心身を衰弱させてしまったという逸話が残っています。

天長3年（826年）に陸奥按察使記事に任じられたのを皮切りに、天長5年（828年）には少内記、天長6年（829年）には少外記、そして承和元年（834年）には大外記と、主に文筆を扱う官職を歴任しました。その勤務態度は非常に優秀で、広い見識と才能から、公卿や大臣らの顧問として重用されました。この時期には、歴史書『日本後紀』の編纂にも携わっています。能吏でなければ史書の編纂に関わることはないため、このことからも古嗣の能力の高さが伺えます。

承和3年（836年）には外従五位下、承和7年（840年）には従五位下に昇進しました。また、天長10年（833年）には、山田造から山田宿禰へと姓を改めました。

承和13年（846年）には、阿波介として地方官に転じました。当時、阿波国（現在の徳島県）の阿波郡や美馬郡は、常に旱魃に悩まされていました。古嗣は、灌漑事業として溜池や用水路を築造し、その仁政と優れた手腕によって、広く名声を博しました。現在でも、浦池（吉野川市）と古池（三好市）には、古嗣が築造したという伝承が残っています。

仁寿2年（852年）には左京亮、仁寿3年（853年）には従五位上・相模権介に叙任されましたが、同年12月21日に病のため官職在任のまま亡くなりました。享年は56歳でした。

人物

山田古嗣は、清廉で謹厳な性格であり、寡黙な人物であったと伝えられています。また、非常に孝行心に厚く、幼い頃に実母を亡くした後は、叔母を実母のように慕っていたという逸話があります。

ある時、『韓詩外伝』を読んでいた際、「樹欲靜而風不止。子欲養而親不待也。」という一節に出会い、実母に親孝行できなかったことを後悔し、涙で書物を濡らしたとされています。この逸話は、『前賢故実』にも描かれており、古嗣の孝行心を表すものとして知られています。

官歴

天長3年（826年）: 陸奥按察使記事
天長5年（828年）: 少内記
天長6年（829年）: 少外記
天長10年（833年）: 造姓から宿禰姓に改姓
承和元年（834年）: 大外記
時期不詳: 正六位上
承和3年（836年）: 外従五位下
承和7年（840年）: 従五位下（内位）
承和13年（846年）: 阿波介
嘉祥4年（851年）: 見散位
仁寿2年（852年）: 左京亮
仁寿3年（853年）: 従五位上、相模権介、卒去（相模権介従五位上）



山田古嗣は、朝廷での文筆活動、地方での治水事業、そしてその人となりを通して、後世に語り継がれるべき人物であると言えるでしょう。

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