山田宗睦

山田宗睦：戦後思想を彩る哲学者、評論家

山田宗睦は、1925年山口県下関市に生まれ、2024年6月17日に99歳で永眠しました。日本の戦後思想史に大きな足跡を残した哲学者にして、鋭い批評眼を持つ評論家として知られています。

山口県下関市での誕生後、幼少期は下関、稚内、金沢、函館と各地を転々とし、多様な文化に触れながら成長しました。水戸高等学校を経て、1946年には京都帝国大学文学部哲学科に入学。同大学卒業後は、北海道第二師範学校で助教授を務めました。その後、東京大学出版会編集者などの経験を経て、1959年から本格的な評論活動をスタートさせます。

1962年には『思想の科学』編集長に就任。そして、1965年に発表された『危険な思想家』は、ベストセラーとなり、彼の名を世に知らしめました。この著作では、武者小路実篤、安倍能成、大熊信行、竹山道雄、石原慎太郎、三島由紀夫、福田恆存、林健太郎、林房雄、高坂正堯、江藤淳など、当時の言論界をリードする「保守」と目される知識人たちを鋭く批判。戦後日本の思想状況に一石を投じ、大きな反響を呼びました。

京都学派への批判を起点に、左翼・戦後民主主義者の立場から評論活動を展開した山田氏ですが、『危険な思想家』以降は、『古事記』や『日本書紀』の現代語訳・注釈にも取り組みました。古典研究にも力を注ぎ、多角的な視点から日本の歴史・文化を考察した著作を残しています。

桃山学院大学教授を経て、1977年から1995年まで関東学院大学教授を務めました。1977年には、作家の中山千夏氏らと共に革新自由連合を結成するなど、政治活動にも関与。大学教授としての教育活動、多様な執筆活動と並行して、時代の変遷を見据えながら、精力的に社会活動も展開しました。1989年頃からは神奈川県藤沢市辻堂に居住していました。

主な著作には、『危険な思想家』の他に、『忍法』（足立巻一・尾崎秀樹氏と共編著）、『戦後生活文化史 私たちの生きた道』（尾崎秀樹氏と共著）、『日本の「道」 その源流と展開』（林屋辰三郎・上田正昭氏と共著）、『私の教科書批判』（丸谷才一、松本清張氏らと共著）、『無名戦士の手記 声なき声いまも響きて』（鶴見俊輔・安田武氏と共編著）、『菊-日本文化を考える』（川添登氏と共著）などがあります。また、『対暴力の思想』（ラリー・Ng著の翻訳）、『日本書紀』（全3冊）、『日本書紀史注』（巻第1－4）などの翻訳、注釈も手掛けています。

山田宗睦の生涯は、激動の戦後日本を鋭く見つめ、多様な視点から社会と文化を深く考察し続けた、知の探求者としての道のりでした。彼の著作は、現代においても、日本の思想史や文化を考える上で貴重な資料であり、多くの読者に影響を与え続けています。99歳という生涯にわたって、旺盛な知的好奇心と社会への関与を貫いた彼の功績は、今後も高く評価されることでしょう。

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