山軽駅

山軽駅

山軽駅（やまがるえき）は、かつて北海道の北部、宗谷地方に位置する枝幸郡浜頓別町字山軽に開設されていた、北海道旅客鉄道（JR北海道）天北線の鉄道駅です。鉄道路線廃止に伴い、その役割を終えました。事務管理コードは▲121909でした。駅名の由来は、所在地名から取られたもので、アイヌ語の「ヤムワッカル」に由来するとされています。これは「冷たい水のある道」、あるいは「冷たい水を汲みに行く道」といった意味を持っています。

駅の歴史とその背景

山軽の地は、クッチャロ湖の大沼と小沼を結ぶ細長い水路に面して拓かれた開拓地として始まりました。駅が設けられた当初、集落は川沿いに形成されていました。旧国道は、わざわざこの駅前を経由するために、海側から一度踏切を渡り、駅前を通った後に再び踏切を渡って海側に戻るようなルートが取られていました。この地域の発展は、クッチャロ湖周辺で伐採された木材が湖面を運ばれ、この駅に集められたことに大きく依存していました。木材産業が集落の賑わいを支えていたのです。

第二次世界大戦終結後の食糧不足の時代には、農業開拓者を迎え入れる事業が行われ、一時的に人口が増加しました。しかし、時代が進み木材の需要が低迷し、また、この地域の気候や土壌が農業にあまり適していなかったことから、昭和40年代に入って高度経済成長期を迎える頃には、急速に過疎化が進行します。かつて駅前に広がっていた集落はほとんど姿を消し、新しく整備された国道沿いに点在する酪農家を除いては、ほぼ無人の土地となりました。

このような状況を反映して、山軽駅の利用者は極端に減少しました。1971年度（1971年4月1日から1972年3月31日）には、年間の乗降客数の合計が0人という記録が残されています。

山軽駅は、1919年（大正8年）11月1日、鉄道院宗谷本線の浜頓別駅と浅茅野駅の間が延伸開業した際に、一般駅として開設されました。その後、1930年（昭和5年）4月1日には、音威子府駅から稚内駅までの区間が宗谷本線から天北線へと改称され、山軽駅も天北線の駅となります。1949年（昭和24年）6月1日には、公共企業体である日本国有鉄道（国鉄）に移管されました。路線の名称は、1961年（昭和36年）4月1日に改めて天北線と改称されています。1969年（昭和44年）2月1日には、貨物と荷物の取扱いが廃止されるとともに、駅は無人化されました。国鉄分割民営化に伴い、1987年（昭和62年）4月1日からは北海道旅客鉄道（JR北海道）の駅となりましたが、わずか2年後の1989年（平成元年）5月1日、天北線全線の廃止に伴い、その歴史に幕を閉じました。

駅の構造

廃止された時点の山軽駅は、単式のホームが1面のみ設置された地上駅でした。ホームは線路の西側に位置しており、南稚内方面へ向かう列車から見て左側でした。線路が分岐することのない、いわゆる「棒線駅」となっていました。過去には、列車交換が可能であった時代もあり、その頃は2面2線の相対式ホームを備えていたことがわかっています。

駅が無人化されてからは、有人駅時代の駅舎は撤去されました。ホームから少し離れた場所に、待合所が2棟建てられていました。ホーム自体は、気動車1両分ほどの長さを持つ土盛りの簡素なものでした。

駅周辺と跡地

山軽駅があった周辺は、広大な牧草地や原野が広がっています。近隣を通る主な道路としては、国道238号（オホーツクライン）があります。また、クッチャロ湖が駅から約0.6km西に位置しており、ここは白鳥の飛来地として知られ、帆かけスキーの開催地でもあります。鳥類観測センターも近くにあります。公共交通としては、宗谷バスの天北宗谷岬線に「山軽」停留所が設けられています。

廃止された天北線の線路跡のうち、浜頓別駅から猿払駅にかけての区間は、「北オホーツクサイクリングロード」として整備され転用されています。2001年（平成13年）時点では、このサイクリングロード沿いに山軽駅のホーム、駅名標、そして待合所が残されていました。待合所はサイクリング客の休憩所として利用されていました。2010年（平成22年）時点でもこれらの構造物は残っていましたが、待合所は出入口の扉や窓が無くなるなど、荒廃が進んでいました。ガラスが割れて室内に散乱し、建材が腐敗する匂いが漂うような状態でした。さらに、駅前広場には放置された車両が荒れた状態で置かれており、周囲の景観を著しく損ねていました。2017年（平成29年）6月には、熊の出没情報があったため、浜頓別駅から安別駅の間にあたるこの駅跡付近を含むサイクリングロードが立入禁止区域となりました。

天北線の廃止時における隣駅は、浜頓別駅と安別駅でした。かつては浜頓別駅との間に北頓別仮乗降場が存在しましたが、こちらは1967年（昭和42年）10月1日に既に廃止されていました。

参考文献

『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』 JTBパブリッシング
『日本の廃止駅』 小学館
その他、現地の案内板、関連自治体資料等

関連項目

日本の鉄道駅一覧
特定地方交通線
天北線
* クッチャロ湖

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