岡村徳長

岡村徳長：異色の海軍軍人、その生涯

岡村徳長（おかむら とくなが）は、1897年1月10日に高知県で生まれ、1972年7月19日に没した日本の海軍軍人です。最終階級は海軍中佐。型破りな人物として知られ、戦後は日本共産党員としても活動しました。彼の生涯は、激動の時代を背景に、異彩を放っています。

海軍軍人としての歩み

岡村は海軍兵学校45期生として入校。同期には、後に鹿屋基地司令となる岡村基春大佐がいます。また、末妹は、艦爆の神様と称された江草隆繁大佐の妻です。海軍在籍中から、彼はその天衣無縫な性格と奇行で知られていました。航空機開発に情熱を燃やし、大西瀧治郎中将に心酔していたといいます。

横須賀航空隊教官時代には、計器飛行の実験中に主翼が海面に接触し、九死に一生を得る経験もしています。1928年には、一三式艦上攻撃機に搭乗中、悪天候のため佐賀県鹿島付近に墜落・炎上。この事故で顔に大火傷を負い、同乗していた後藤勇吉は殉職しました。

1932年の五・一五事件では、事件に同調したとされています。1935年には、航空発展への情熱から自ら予備役に編入し、中島飛行機に入社しますが、会社幹部との衝突からか、1,2年後に退職。その後、先輩や知人の資金援助を受け、「富士航空」という航空機会社を設立し、妹と共に経営しました。

太平洋戦争の開戦を予見した岡村は、海軍当局や知人に飛行機の改良・増産を訴え、1941年に会社を他人に任せ、召集を受けます。ガダルカナル島の戦いでは、第13設営隊隊長として、自らも工事に参加。「もうあらかた出来上がったから1日も早く戦闘機を送れ」と頻繁に打電しましたが、アメリカ軍の上陸により、その願いは叶いませんでした。後に中佐に昇進し、終戦を迎えます。

戦後の転身：共産党員として

戦後、岡村は戦争体験と反省からマルクス主義に関心を深め、日本共産党に入党。徳田球一とも親交を持ち、赤旗の購読を呼びかけるなど、晩年まで熱心な党員として活動しました。後輩の黛治夫とは個人的な親交があり、戦後もその関係は続いたといいます。

型破りなエピソード

岡村徳長には、数々の型破りなエピソードが残されています。

中学時代、教練の時間に「前へ進め」の号令で、グラウンドから川へ突っ込んだ。
海軍大臣への挨拶中、「大臣、そのような話はもうわかっちょる。やめい、やめい。」と言った。
謹慎処分中、海軍省人事局に「忙しいから訓練を休めない」と訴え、謹慎期間を短縮させた。
人力車夫にチップを弾み、酔った勢いで礼服を着せて自分は車夫姿で車を引いた。
礼服のまま海に飛び込み、内火艇を追いかけた。
釣り禁止の軍港内で平然と釣りを行い、注意されても「ええきに、ええきに」と取り合わなかった。

これらのエピソードは、彼の破天荒な人柄をよく表しています。

その死と遺産

岡村徳長は、1972年7月19日に胃癌で亡くなりました。享年75歳。彼の生涯は、海軍軍人から共産党員へという異色の転身、そして数々の型破りなエピソードによって彩られています。彼は、激動の時代を自分らしく生きた、特異な人物として記憶されるでしょう。

年譜

1897年：高知県安芸郡井ノ口村で生まれる
1917年：海軍兵学校卒業
1918年：海軍少尉に任官
1920年：海軍中尉に任官、横須賀海軍航空隊附
1924年：海軍大尉に任官
1934年：能登呂飛行長
1935年：予備役編入
1941年：予備役応召
1942年：第13設営隊長としてガダルカナル島に上陸
1943年：海軍中佐に任官
1944年：第21警備隊司令、築城海軍航空隊富高分遣隊長
1945年：岩国海軍航空隊司令兼副長
1947年：公職追放仮指定
1948年：共産党に入党
* 1972年：死去

もう一度検索