岩倉宮忠成王

岩倉宮忠成王

岩倉宮忠成王（いわくらのみやただなりおう）は、鎌倉時代の皇族であり、順徳天皇の第五皇子として生まれました。六条宮、岩倉宮、広御所宮など、様々な称号で呼ばれました。

生涯

貞応元年（1222年）に誕生。父である順徳上皇は、前年の承久の乱に敗れて佐渡国へ配流されており、忠成王は祖母である修明門院の四辻御所の一角で幼少期を過ごしたと伝えられています。

仁治3年（1242年）1月9日、四条天皇が12歳という若さで崩御。皇太子が定まっていなかったため、後継者問題が発生します。忠成王は、土御門天皇の皇子である邦仁王と共に皇嗣候補として名前が挙がりました。九条道家が忠成王を、土御門定通が邦仁王をそれぞれ支持し、鎌倉幕府へ働きかけを行いました。

朝廷内では、忠成王の皇位継承がほぼ確実視され、新天皇が着用する装束も忠成王の身体に合わせて製作されるなど、即位に向けた準備が進められていました。

しかし、幕府執権の北条泰時は、忠成王が即位した場合、幕府に敵対的な順徳上皇が帰京することを警戒。鶴岡八幡宮の神意であるとして、邦仁王を推しました。その結果、1月20日に邦仁王が践祚し、後嵯峨天皇として即位しました（仁治三年の政変）。同年9月、順徳上皇が佐渡で崩御したという知らせを受け、忠成王は深く悲しんだと伝えられています。

その後も忠成王は皇位への望みを捨てきれず、寛元3年（1245年）5月には平経高を呼び、「密事」を語ったとされています。これは、非常手段を用いて自らが皇位に就くことを望んでいたことを示唆していると考えられます。寛元4年（1246年）5月、鎌倉幕府で名越の乱が鎮圧されると、7月には道家が忠成王を皇位に就けようと謀っているとの疑惑が持ち上がり、蟄居処分となります。さらに、道家の子である藤原頼経も鎌倉から追放され、失脚しました（宮騒動）。この事件は、忠成王の皇位継承の願いにとって大きな打撃となりました。

宝治3年（1249年）、平経高の取り計らいにより元服。しかし、幕府は宝治合戦への忠成王の関与を疑い、二階堂幸泰を派遣して修明門院を詰問しました。その後、忠成王は四辻御所を離れ、洛北郊外の岩倉に住み、石蔵宮（岩倉宮）と呼ばれるようになりました。文永元年（1264年）に修明門院が亡くなると、四辻御所を含む遺領は異母弟の善統親王（四辻宮）に継承されたため、後に岩倉宮と四辻宮の間で紛争が起こる原因となりました。

生涯、官位や親王宣下を受けることはなく、弘安3年12月（1281年1月）13日または11日に薨去。享年59歳でした。

系譜

父：順徳天皇
母：藤原清季の娘
妻：藤原範茂の娘
男子：益助
妻：藤原範能の娘
男子：彦豊王
男子：源彦仁（?-1298）
男子：尊忠
生母不詳の子女
男子：承恵
女子：北白川宮

参考文献

『尊卑分脈 第三篇』吉川弘文館、1987年
赤坂恒明『「王」と呼ばれた皇族』吉川弘文館、2020年1月10日。ISBN 978-4-642-08369-0。
曽我部愛「〈宮家〉成立の諸前提」『中世王家の政治と構造』同成社、2021年。ISBN 978-4-88621-879-7。

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