岩村城の戦い

岩村城の戦い：美濃を舞台にした武田と織田の激闘

岩村城の戦いは、元亀3年（1572年）から天正3年（1575年）にかけて、美濃国恵那郡（現在の岐阜県恵那市）で繰り広げられた、武田氏と織田氏による岩村城をめぐる一連の戦いです。この戦いは、戦国時代の激しい勢力争いを象徴する出来事の一つであり、多くの武将たちの運命を翻弄しました。

戦いの背景

戦いの舞台となった岩村城は、もともと美濃東部を支配していた遠山氏の居城でした。遠山氏は、当初武田氏に従属していましたが、織田信長が叔母のおつやの方を遠山景任に嫁がせたことで、織田氏の傘下に入りました。しかし、景任が後継ぎのないまま病死したため、信長は織田信広や河尻秀隆らを派遣し、岩村城を占拠、自身の五男である御坊丸を遠山氏の養子としました。幼い御坊丸に代わり、実質的な城主となったのはおつやの方でした。

武田氏の侵攻と岩村城の陥落

元亀3年（1572年）、武田信玄は西上作戦を開始し、武田軍は岩村城を包囲しました。武田軍を率いる秋山虎繁は、おつやの方に結婚を条件に開城を迫りました。おつやの方はこれを受け入れ、岩村城は武田氏の手に落ちました。これにより、岩村[[遠山氏]]の一族や郎党も武田氏に従うこととなりました。

織田信長は、岩村[[遠山氏]]の一族でありながら織田方に残った延友佐渡守に対し、その功を労い、領地を与えました。しかし、岩村城を失った事実は、信長にとって大きな痛手となりました。

大圓寺の焼討ちと悲劇

岩村城の近くには、遠山氏の菩提寺である大圓寺がありました。住持の希菴玄密は、武田信玄と旧知の仲でしたが、信玄の再三の誘いを拒否したため、信玄の怒りを買い、大圓寺は焼き討ちに遭い、希菴は逃亡中に殺害されました。しかし、その殺害に関わった者たちは、直後に悲惨な死を遂げたという逸話が残っています。

三方ヶ原の戦いと武田氏の勢力拡大

岩村城を奪取した武田氏は、その勢いを駆って徳川氏との間で三方ヶ原の戦いを繰り広げました。この戦いで武田氏は徳川軍を破り、その勢力を拡大しました。しかし、武田信玄は、間もなく病死し、武田家の家督は、四男の武田勝頼が継承しました。

武田勝頼の侵攻と東美濃の混乱

天正2年（1574年）、武田勝頼は織田信長をさらに圧迫するため、東美濃に侵攻しました。勝頼は、東美濃の城や砦を次々と陥落させ、岩村城に進出、明知城を包囲しました。信長は嫡男の織田信忠と共に出陣しましたが、明知城の裏切りにより、東濃から撤退を余儀なくされました。

長篠の戦いと織田氏の反撃

天正3年（1575年）、武田勝頼は長篠の戦いで織田・徳川連合軍に大敗し、多くの重臣を失いました。これを機に、織田・徳川軍は武田氏への反撃を開始しました。織田信長は、嫡男の信忠に軍を預けて岩村城に侵攻させました。岩村城は、補給路を断たれ飢餓状態となり、武田軍は戦意を喪失しました。秋山虎繁は信長に降伏を申し出ました。

秋山虎繁の最期と岩村城の奪還

信長は、自らの叔母であるおつやの方を妻とし、岩村城を乗っ取った秋山虎繁を許さず、おつやの方と共に、逆さ磔の極刑に処しました。岩村城に籠城していた武田方の兵士たちは、帰国を許されましたが、その途中で織田軍の襲撃を受け、命を落としました。岩村城に籠城していた遠山氏の一族や郎党も、多くが自刃したり、殺害されたりして、悲劇的な結末を迎えました。

岩村城の戦いは、戦国時代の転換期における、武田氏と織田氏の激しい勢力争いを象徴する出来事でした。この戦いを通して、多くの武将たちが栄枯盛衰を経験し、その後の歴史に大きな影響を与えることとなりました。

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