島津宗信

島津宗信（しまづ むねのぶ）

島津宗信は、江戸時代中期に薩摩藩を治めた第6代藩主であり、島津氏の第23代当主です。1728年、5代藩主・島津継豊の長男として生まれました。幼名は益之助、又三郎。初めは忠顕と名乗っていましたが、後に8代将軍・徳川吉宗より偏諱を賜り、宗信と改名しました。官位は従四位上、薩摩守、左近衛中将にまで昇っています。

生涯

宗信は、幼少の頃からその才能を発揮し、将来を嘱望されていました。仁徳者として知られた伊集院仁右衛門の教育を受け、その才覚は早くから周囲に認められていました。1739年には従四位下侍従に叙任され、松平薩摩守を称しました。その後、1746年に父・継豊が隠居したことを受け、家督を継いで藩主となります。同年には左近衛少将にも叙任されています。1748年には従四位上左近衛中将に叙任されるなど、順調に出世を重ねました。

しかし、藩主となって間もない1749年、宗信は膝の痛みに悩まされるようになります。夏季の移動が困難であったため、3月に江戸を出発しましたが、その途中で浮腫を発症し、症状は悪化していきました。5月18日に鹿児島に到着したものの、病状は回復せず、7月10日に22歳という若さで亡くなりました。戒名は慈徳院殿俊厳良英大居士。後を弟の重年が継ぐことになります。

人物像と逸話

宗信は、弓術を重んじたことでも知られています。薩摩藩主は代々、東郷重尚の子孫から日置流弓術を学んでいましたが、宗信は特にこの流派を重用しました。参勤交代の際には、弓術練習用の巻藁を行列に持たせ、宿泊先で師範の東郷実明から指導を受け、練習を欠かさなかったといわれています。これは、彼の武道に対する真摯な姿勢を示すエピソードと言えるでしょう。

また、『島津国史』には、生母である於嘉久の方が、宗信の後継者を心配し、側室を持つことを勧めたものの、宗信は婚約者である徳川宗勝の娘・房姫に義理立てし、これを拒否したという逸話が残っています。結果として、御嘉久の心配が的中し、宗信は子を成すことなく亡くなってしまいます。この話は、宗信の誠実さと、家への責任感を示していると言えるでしょう。

系譜

父：島津継豊（1702-1760）
母：於嘉久 - 渋谷貫臣の娘
同母兄弟
女子：鐘 - 肝付兼伯室
女子：鉄 - 島津久隆（市大夫）室
男子：入来院定勝（1736-1781） - 入来院定恒の養子
正室：なし
婚約者：房姫 - 徳川宗勝の長女、邦姫 - 徳川宗勝の五女

参考文献

「島津氏正統系図」
「島津国史」

宗信を取り上げた書籍

* 海音寺潮五郎『乱世の英雄』 - 「お大名」という編で、宗信の大胆不敵な才気を紹介しています。

宗信は、若くして亡くなったものの、その短い生涯の中で藩主としての責任を果たし、また武道に励んだ人物として後世に語り継がれています。彼の生き様は、現代においても多くの人々に影響を与えています。

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