島津荘

島津荘とは

島津荘（しまづのしょう）は、中世の南九州に存在した、近衛家領の荘園です。現在の宮崎県中南部、鹿児島県にまたがる広大な領域を領有し、その規模は最盛期には8000町を超え、日本最大級の荘園として知られています。

島津荘の成立と拡大

島津荘は、11世紀前半の万寿年間（1024年～1028年）に、平季基とその弟・平良宗によって開発が始まりました。当初は日向国諸県郡の島津院を中心に小規模なものでしたが、藤原頼通に寄進された後、大隅国の肝付氏や薩摩国の伊作氏らの所領が寄進され、次第に拡大していきました。特に、藤原忠実の時代には大隅国で約1500町歩の新たな出作地が獲得され、その結果、薩摩・大隅・日向の3ヶ国にまたがる広大な荘園へと発展しました。

この荘園は、薩摩・大隅においては鹿児島神宮領や公領を除く地域をほぼ全て含み、日向国においても総田数の46.7%を占めていたとされています。この広大な荘園は、単なる農地ではなく、地域社会の経済や政治構造にも大きな影響を与えました。

肝付氏による相続と変遷

島津荘の拡大には、肝付氏の存在も欠かせません。肝付氏は元々「伴（ばん）」姓を名乗り、大伴氏の後裔とされています。伴兼行が薩摩掾として下向したのを機に、南九州に進出し、伴兼貞の代には高山に拠点を移し、肝属郡を領有しました。さらに、兼貞は島津荘を開拓した平季基の娘、あるいはその子である伊佐平次兼輔の娘を娶り、島津荘を譲り受けることで、その支配領域を拡大しました。

こうして、肝付氏は藤原摂関家を後ろ盾に、三州にわたる広大な領地を支配するようになりました。しかし、その勢力は平安末期に平家が台頭すると、一時的に衰退します。平家の滅亡後、島津荘は鎌倉幕府に没収され、肝付氏の所領は一部安堵されたものの、その影響力は大きく低下しました。

島津忠久の登場と島津氏の成立

その後、島津荘の下司に任命されたのが、鎌倉幕府の有力御家人である惟宗忠久です。源頼朝によって任命された忠久は、島津荘を本拠として「島津」姓を名乗り、島津氏の祖となりました。忠久は、摂関家の家司であると同時に、頼朝の御家人としても活動し、その関係から島津荘の支配権を得たとされています。

当初、島津氏は鎌倉を拠点としていましたが、第3代当主・島津久経の時代から南九州への在地化が進み、第5代当主・島津貞久の時代には、島津氏の守護所が碇山城に置かれ、南九州における支配体制が確立しました。

島津氏と島津荘意識の形成

島津氏は、3ヶ国の守護職を回復した島津貞久の時代以降、「島津荘は名字の地であり、薩摩・大隅・日向の三州を支配する根拠である」という意識を強く持つようになりました。この意識は、島津氏の領国経営の正当性を支える重要な要素となり、南北朝時代には、相州家と奥州家の両島津家が、この意識に基づいて領国経営の維持・拡大を行いました。

肝付氏と島津氏の対立

島津氏の支配が確立した後も、肝付氏は島津氏に服属するものの、領土問題をめぐって対立を深めました。戦国時代に入ると、肝付氏は日向の伊東氏と結び、島津氏と激しく争いました。しかし、16世紀後半には島津氏に臣従し、その支配下に入ることとなりました。このように、島津荘をめぐる支配権争いは、南九州の勢力図を大きく変える要因となりました。

島津荘の歴史的意義

島津荘は、中世の南九州において、政治・経済・文化の中心的な役割を果たしました。その広大な領域は、地域社会の構造を形成し、その後の歴史に大きな影響を与えました。特に、島津氏による支配は、南九州の歴史を語る上で欠かすことのできない要素であり、島津荘は、その歴史的背景を理解する上で重要な意味を持っています。

関連項目

島津氏
神柱宮
日本の荘園の一覧
梅北町

参考文献

『国史大辞典』 吉川弘文館
『日本史広辞典』 山川出版社

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