平間寺

川崎大師 平間寺

平間寺（へいけんじ）は、神奈川県川崎市川崎区にある真言宗智山派の大本山で、一般には「川崎大師」の名で広く知られています。山号を金剛山、院号を金乗院と称し、1128年（大治3年）に尊賢上人によって開山されました。開基は平間兼乗です。2022年時点では、第45世・中興第2世の藤田隆乗貫首が寺務を司っています。

歴史

平間寺の創建は、平間兼乗が海中から弘法大師の木像を引き揚げたことに始まります。兼乗は木像を丁寧に洗い清め、供養のために小さな堂を建てました。その後、諸国を遊行していた高野山の尊賢上人がこの話を聞き、兼乗と協力して1128年に平間寺を建立しました。江戸時代には徳川幕府の将軍も訪れるなど、歴史の中で重要な役割を果たしました。

1945年の空襲で多くの堂宇が焼失しましたが、戦後に再建され、現在の姿に至っています。1899年には、参詣客輸送のために大師電気鉄道（現・京急大師線）が開業し、川崎大師は近代以降の初詣ブームの発祥の地となりました。鉄道会社やメディアのプロモーションも手伝い、正月には多くの参拝客で賑わいます。2012年には、初詣客数が296万人に達し、全国で3位、神奈川県内では1位を記録しました。

2020年には、公式キャラクターとして「ひらまくん」が誕生しました。これは、「せんとくん」のデザイナーである籔内佐斗司が、平間兼乗をモチーフに制作したものです。また、10年に一度の大開帳では、参拝者に「赤札」と呼ばれる特別な護符が授与されます（2024年は5月1日から5月31日まで実施）。

伽藍

大本堂

1964年に落慶した大本堂は、本尊の厄除弘法大師を祀る中心的な建物です。堂内には稚児大師、救世観音像、不動[[明王]]、愛染明王、金剛界曼荼羅、胎蔵界曼荼羅が奉安されています。毎朝の晨朝護摩供をはじめ、日々護摩が行われ、参拝者の諸願成就が祈願されています。勅願寺であるため、大棟には菊花紋章が許されています。

大山門

1977年に落慶した大山門は、開創850年を記念して建立されました。京都東寺の四天王像を模して安置されています。上層部は経庫となっており、写経会で写経された経文が納められています。以前安置されていた薬師如来像は、薬師殿の落慶に伴い遷座されました。

不動堂

1890年に創建された不動堂は、1964年に再建されました。本尊の不動[[明王]]は、成田山新勝寺から勧請されたものです。関東三十六不動霊場第7番、武相不動霊場第1番札所となっています。

不動門

戦後、第43世隆超和上が福島県から移設した山門で、大山門建立後は不動門として利用されています。

薬師殿

1963年に創建され、1970年に現在のインド風の建物になりました。2008年に薬師殿として落慶するまでは、自動車交通安全祈祷殿として使用されていました。

中興塔（八角五重塔）

1984年に落慶した八角形の五重塔です。毎月第一日曜日と21日の縁日に内部拝観が可能です。二層には恵果和上像、弘法大師像、興教大師像、両界[[曼荼羅]]が安置されています。初層には真言八祖の図像、金剛界五智[[如来]]像、地下には釈迦如来が奉安されています。

経蔵

2004年に落慶した経蔵には、中国の乾隆版大蔵経が収蔵されています。本尊は釈迦如来で、天井には仏画家・染川英輔による「飛天」図が描かれています。正面には巨大な五鈷杵が安置されています。京浜急行電鉄と川崎信用金庫が、それぞれ天井画と扁額、賽銭箱を奉納しました。この経蔵の完成により、川崎大師の七堂伽藍が整い、戦後の復興が完了しました。

その他の堂宇

福徳稲荷堂は、太平洋戦争を生き残った唯一の堂宇です。その他、聖徳太子堂、清瀧権現堂、鐘楼堂などがあります。大本坊は寺務所として機能しており、一般信徒も拝観できます。信徒会館にはステンドグラスや噴水が設置されており、地下には大講堂があります。中書院は茶室として利用できます。金剛閣は、護摩札の渡し場所や信徒の接待に使われます。護持志納受付所では、護摩札の申し込みや志納を受け付けています。清浄光院は檀徒菩提所で、一般信徒は立ち入りできません。境内には檀徒墓地があり、北の湖敏満、川崎弘子の墓所があります。

像

遍路大師像は、弘法大師が遍路姿の立像で、周囲に新四国八十八箇所札所の石柱があります。降魔成道釈迦如来像は、釈迦如来の坐像で、胎内には真身仏舎利が奉安されています。「祈りと平和」の像は、文化勲章受章者の円鍔勝三の作品で、中央に女神、周囲に天女が描かれています。また、北の湖敏満の銅像は、八角五重塔を見据えるように建てられています。

年中行事

平間寺では、年間を通して様々な行事が行われます。1月1日には元朝大護摩供、1月第2月曜日には成人式法楽、1月21日には初大師が行われます。2月には節分会・豆まき式、星まつり、3月には御影供まつり、正御影供、4月には大般若経転読会、5月中旬には弘法大師降誕会、7月中旬には風鈴市、8月には夏期講座、12月には成道会、納めの大師、大晦日には除夜法楽が執り行われます。

施設

平間寺には、川崎大師教学研究所、自動車交通安全祈祷殿、大師幼稚園などの施設があります。また、川崎大師引声念仏・双盤念仏は、市重要習俗技芸に指定されています。

双盤念仏

双盤念仏は、鉦を叩きながら唱える念仏で、浄土宗特有のものです。川崎大師では、引声念仏と双盤念仏の二つの形式があります。引声念仏は、御簾の開閉を伴う「引帳念仏」とも呼ばれ、正御影供の際に行われます。双盤念仏は、明治時代に始まり、現在も月に一度行われています。双盤念仏を習得するには、3年から5年程度の期間が必要とされています。

所在地と交通

所在地は、〒210-8521 神奈川県川崎市川崎区大師町4番48号です。京急大師線川崎大師駅から徒歩5分、東門前駅から徒歩10分です。初詣シーズンには、JR川崎駅より直行バスが運行されます。

別院

平間寺の別院として、東京には薬研堀不動院、京都には笠原寺があります。

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