市制 (単位系)

市制とは

市制（しせい）は、中国で用いられてきた伝統的な単位系を、20世紀にメートル法に基づいて再定義したものです。日本の尺貫法に相当しますが、「貫」は使用しないため、日本では「尺斤法」と呼ばれることもあります。市制は、国際単位系（SI）を「公制」、ヤード・ポンド法を「英制」と呼ぶのに対し、中国独自の単位系として区別されます。

SI単位やヤード・ポンド法の単位の中国語名は、値が近い伝統的な単位の名称が用いられることが多いため、単位を区別する必要がある際は、市制の場合は「市」、ヤード・ポンド法の場合は「英」、SIの場合は「公」を単位の前に付けます。長さ、面積、質量の単位には「分」「厘」「毫」など共通するものがありますが、これらは元々割合を表すもので、それぞれの単位に対する割合を示しています。

歴史

中国では1915年に伝統的な単位系である営造尺・庫平両をメートル法で定義しました。1929年にはメートル法を主とする度量衡法が制定されましたが、従来の単位名も併用されました。この従来の単位系が市制です。市制の各単位の大きさは、従来の営造尺・庫平両とは大きく異なっています。

日本でも尺貫法の単位をメートル法に基づいた定義に改めていますが、日本ではできるだけ元の値に近づけようとしたため換算が複雑になっています。一方、中国では2分の1や3分の1など単純な換算になるようにしました。単位同士の関係は原則として十進法的ですが、里（1500尺）、畝（6000平方尺）、斤（16両）は例外です。また、升は27立方寸に相当します。

中華人民共和国でも市制は使用されましたが、本来1斤は16両だったのを10両に変更したため、両以下の値が異なります。1977年には、国務院が市制をメートル法に置き換える方針を示し、徐々に使われなくなっています。

香港では、質量単位として市制や庫平制とは異なる「司馬斤」を元にした体系が広く使用されています。中国国内では、香港でのみ「1斤=16両、1両=10銭、1銭=10分」という換算が、食糧や貴金属の売買で用いられます。特に貴金属で使われる単位は「金衡両」と呼ばれ、司馬両とは少し異なる値となります。

日本やオランダに支配された経験のある台湾では、同じ名称でも異なる値の単位系（台制）が使用されています。台湾では市制は1954年に廃止されています。

市制の単位

市制の主な単位は以下の通りです。

長さ

里（リ）：1500尺
引（イン）：10丈
丈（ジョウ）：10尺
尺（シャク）：10寸
寸（スン）：10分
分（フン）：10厘
厘（リ）：10毫
毫（ゴウ）

面積

土地の面積

頃（ケイ）：100畝
畝（ボ）：6000平方尺
分（フン）

土地以外

平方丈（ヘイホウジョウ）
平方尺（ヘイホウシャク）
平方寸（ヘイホウスン）

体積

石（コク）
斗（ト）：10升
升（ショウ）：10合
合（ゴウ）：10勺
勺（シャク）

質量

担（タン）：100斤
斤（キン）：10両
両（リョウ）：10銭
銭（セン）：10分
分（フン）

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