建水分神社

建水分神社（たけみくまりじんじゃ）

大阪府南河内郡千早赤阪村に位置する建水分神社は、古くから地域の人々に崇敬されてきた神社です。式内社であり、旧社格は府社、通称を水分神社（すいぶんじんじゃ）とも呼ばれています。また、水分大明神や上水分社とも称され、金剛山の鎮守、そして楠木氏の氏神として信仰を集めてきました。この神社は、錦織神社、美具久留御魂神社とともに「河内国の三水分社」として知られています。

祭神

本殿の中央には天御中主神、左殿には天水分神と罔象女神、右殿には国水分神と瀬織津姫神が祀られています。これらの祭神のうち、天御中主神を除く神々は水神です。

歴史

神社の伝承によれば、崇神天皇5年（紀元前92年）に全国的な飢饉が発生した際、天皇が溜池や溝の建設を奨励したことを契機に、金剛山の麓に水分神が祀られるようになったとされています。延長5年（927年）に編纂された『延喜式神名帳』には、「河内国石川郡 建水分神社」としてその名が記載されています。「上水分社」という呼称は、美具久留御魂神社を下水分社と呼ぶことに対比したものです。

『日本三代実録』には、貞観5年（863年）に正五位下、貞観16年（874年）に従四位下、元慶3年（879年）に従四位上が朝廷から授けられた記録が残っています。かつては現在の場所より約100メートル北の水越川のほとりに鎮座していましたが、楠木正成が鎌倉幕府に対抗し、赤坂城や千早城で戦った際に兵火によって荒廃しました。その後、建武元年（1334年）に後醍醐天皇の勅命を受けた楠木正成によって現在地に再建、遷座されました。延元2年（1337年）には最高位である正一位の神階を授けられています。また、同じ年には楠木正成を祀る南木神社が摂社として境内に設けられました。延元5年/暦応3年（1340年）には、楠木正成の嫡男である正行が当社に奉納した扁額に「左衛門少尉」の自筆が残されています。

戦国時代には、織田信長の河内侵攻により拝殿などが焼失し、社領を没収されるなど衰退しましたが、豊臣秀吉によって社領が寄進され復興を遂げました。明治6年（1873年）には、付近18ヵ村の総鎮守産土神として郷社に列格。明治40年（1907年）には神饌幣帛料供進社に指定され、氏子地域内の17の神社を合祀し、大正2年（1913年）には府社に昇格しました。戦前には、楠木正成が天皇のために尽くした忠臣として称えられたため、当社と摂社である南木神社には多くの参拝者が訪れました。

境内

本殿

本殿は中殿、左殿、右殿の三殿から構成されており、それぞれが渡廊で連結されています。この独特な形式は「水分造」と呼ばれ、全国でも唯一の様式です。各部の構造は精巧で、建築上の模範とされています。明治33年（1900年）には、大阪府の神社建築として初めて古社寺保存法に基づく特別保護建造物（現在の重要文化財）に指定され、昭和25年（1950年）の文化財保護法施行に伴い、重要文化財となりました。

中殿（重要文化財）: 建武元年（1334年）に後醍醐天皇の勅命で楠木正成により再建。
左殿（重要文化財）: 建武元年（1334年）に後醍醐天皇の勅命で楠木正成により再建。
右殿（重要文化財）: 建武元年（1334年）に後醍醐天皇の勅命で楠木正成により再建。

その他の境内施設

神門
幣殿
拝殿（割拝殿）
大鳥居: 元禄3年（1690年）に建立された石造の鳥居で、笠木の長さ10.6メートル、高さ7.1メートルと、近代以前のものとしては全国有数の規模です。掛けられている勅額「正一位 水分大明神」は、後醍醐天皇の宸筆によるものです。もともとは楠木正行が奉納した後醍醐天皇宸筆の勅額が掛けられていましたが、木製のため磨滅したため、宝永2年（1705年）に前大納言・葉室頼孝が金銅製で作り直したものが現在掛けられています。
狛犬: 万延元年（1860年）に建立された石造の狛犬で、大阪府下では最大級の大きさです。
鐘楼: 神仏習合時代の名残を残す鐘楼です。太平洋戦争中には金属類回収令により多くの寺院の梵鐘が供出されましたが、当社は楠木正成ゆかりの神社であったためか、供出を免れました。
祭器庫
旧宝物庫（国登録有形文化財）
神輿庫
旧絵馬堂
社務所

境外

御旅所: 当社の北西約1キロメートルの場所に位置しています。
御旅所古墳
御旅所北古墳

摂末社

南木神社（なぎじんじゃ）: 祭神は楠木正成。詳細は「南木神社」を参照。
金峯神社（きんぶじんじゃ）: 祭神は天照大御神。

文化財

重要文化財

本殿 3棟: 中殿、左殿、右殿から構成されています。

国登録有形文化財

宝庫
南木神社本殿
南木神社拝殿及び幣殿
南木神社築地塀

千早赤阪村指定有形文化財

建水分神社の延元5年扁額

千早赤阪村指定有形民俗文化財

建水分神社の木造狛犬群 8体

例祭

4月25日：春祭 - 楠木正成の誕生日とされており、通称「くすのきさん」と呼ばれています。
10月第三土曜日：秋祭 - 御旅所にて御神輿を中心に19台の地車が集まり、河内随一の祭りとして知られています。各地車には舞台が設けられ、「河内音頭」の原点ともいわれる「河内 にわか」が奉納されます。

その他

日本海軍の戦艦金剛の艦内神社には、昭和5年（1930年）より建水分神社の御分霊の神鏡が奉安されていました。

外部リンク

水分神社オフィシャルホームページ'>建水分神社オフィシャルホームページ
ななかまど-神社ふり～く（合祀された神社に詳しい）
ウィキメディア・コモンズには、建水分神社に関するカテゴリがあります。

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