弥次㐂夛道中記

映画『弥次㐂夛道中記』

『弥次㐂夛道中記』（やじきたどうちゅうき）は、1938年に公開された日本のコメディ映画で、小唄時代劇の特色を持っています。この作品は、日活京都撮影所が製作し、マキノ正博が監督を務めたものであり、当時30歳であった彼の若き日の成果として記憶されています。マキノは後に日本の映画界の巨匠と称される存在となる監督です。この映画は日活とテイチクの提携作品の一環として製作され、日活配給により観客へ届きました。

概要とストーリー

本作は、十返舎一九による19世紀の滑稽本『東海道中膝栗毛』にインスパイアされた作品で、小国英雄がオリジナル脚本を書き上げています。物語は、片岡千恵蔵が演じる遠山金四郎の若き日の放蕩生活を描きつつ、旅先で出会う旅人（杉狂児）との愉快な交流を通して展開します。二人は架空の人物である「弥次さん」と「喜多さん」として混乱を招きつつも、やがて半年後に再会する約束をするというユニークな設定が魅力です。

この作品は、翌1939年に製作されるオペレッタ時代劇『鴛鴦歌合戦』の原型ともされており、わずか10日間という短い期間で撮影された同作とは異なり、本作では多くのロケーション撮影が行われ、観客に多彩な風景を楽しませました。また、監督のマキノの得意技であるダイナミックなカットを交えた演出も随所に見られ、視覚的な楽しさが加えられています。

スタッフとキャスト

『弥次㐂夛道中記』の原作および脚色は小国英雄が手掛け、撮影は石本秀雄が担当しました。また、音楽には古賀政男が作曲・編曲・指揮を行い、時雨音羽の作詞による歌が作品を彩ります。録音は海原幸夫、編集は宮本信夫が担当しています。

主要キャストには次のような俳優が含まれています：

• - 片岡千恵蔵（遠山金四郎／「弥次さん」）
• - 河部五郎（村雨藤五郎）
• - 瀬川路三郎（目明し伝七）
• - 香川良介（遠山河内守）
• - 尾上華丈（千太、次郎吉の子分）
• - 志村喬（文太夫、金四郎の爺や）
• - 林誠之助（親分尻鍋）
• - 団徳麿（手品師）
• - 石川秀道（駿河屋亭主）
• - 藤川三之祐（遠山相模守）
• - 原駒子（奥方お石）
• - 中野かほる（お銀）
• - 比良多恵子（お雪）
• - 末廣華子（女中お仲）
• - 小松みどり（茶店の婆さん）

特別出演として、楠木繁夫（栃面屋弥次郎兵衛）、ディック・ミネ（喜多八）、美ち奴（座頭お國）、服部富子（大原女梯子売）などの俳優も加わり、作品に一層の彩りを添えています。

まとめ

この映画は、当時の日本における独特な漫才や旅物の風俗を背景に、コミカルな要素と人間ドラマが交錯した作品であり、今もなお日本映画史に残る傑作の一つとされています。マキノ正博の監督としての才能が発揮されているこの作品を通して、観客は昭和の時代に思いを馳せることができるでしょう。

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