張勲 (清末民初)

張勲（ちょう くん）とは

張勲は、清朝末期から中華民国初期にかけて活躍した軍人であり、政治家です。字は少軒、号は松寿老人。清朝への忠誠心が非常に強く、革命後もその信念を貫き続けました。

生涯

清末の軍人としての台頭

1884年、張勲は遅れて軍人の道を歩み始め、長沙で兵士となりました。その後、広西提督の蘇元春の配下に入り、参将に昇進。1894年には宋慶率いる毅軍の一員として奉天に駐留します。翌年、袁世凱の配下となり、工兵営管帯に任ぜられ、頭角を現しました。1899年には山東省に赴き、義和団の鎮圧に貢献し、副将、総兵と順調に昇進を果たしました。

1902年、張勲は北京へ異動し、西太后と光緒帝の警護という重要な任務を担います。その後、奉天、雲南、甘粛と各地を転々としますが、実際に赴任したのは奉天のみで、昌図県に駐留し続けました。1910年には南京の浦口へ異動し、江防営を指揮、翌年には江南提督に昇進します。1911年10月、武昌起義（辛亥革命）が勃発すると、張勲は両江総督の命で南京に急行し、革命軍を迎え撃ちました。雨花台での戦闘では一時的に革命軍を退けることに成功しましたが、革命派の勢力拡大には抗えず、徐州へと撤退を余儀なくされます。その後、清朝から江蘇巡撫、両江総督兼南洋大臣に任命されましたが、既に時代は中華民国へと移り変わろうとしていました。

中華民国成立後の動向

1912年1月、中華民国が成立しましたが、張勲は清朝への忠誠を捨てず、革命に反発し続けました。袁世凱が中華民国大総統代理に就任すると、張勲は武衛前軍としての再編を受け入れましたが、洋装を嫌い、自らも兵士も辮髪を切ることを拒否し、「辮帥（べんすい）」と呼ばれました。

1913年4月、張勲は溥儀の再擁立を計画しますが、事前に計画が漏洩し断念。同年、孫文らの革命派が起こした第二革命（二次革命）では、袁世凱の命を受け革命派を鎮圧。南京を攻略した際には、略奪や殺戮を行うなど、その苛烈な性格が垣間見えます。鎮圧の功により江蘇都督に任命され、その後、長江巡閲使として徐州に駐屯しました。袁世凱が皇帝即位を画策すると、張勲は清朝復権を願っていたため、不満を抱くようになりました。しかし、護国戦争が勃発すると、袁世凱を支持しました。1916年、安徽将軍（のち督軍）に任命され、約2万人の兵力を率いるまでになりました。

張勲復辟事件

袁世凱の死後、大総統黎元洪と国務総理段祺瑞との政争（府院の争い）が激化すると、張勲は段祺瑞を支持します。そして、康有為らの助言を受け、孔教（儒教）の国教化を主張。1917年6月、7省の督軍を徐州に集め「督軍団」を結成し、そのリーダー格となります。その後、13省に拡大した「十三省区連合会」の盟主にも推戴されました。段祺瑞に対独宣戦をめぐる対立が激化すると、張勲はドイツからの資金援助を受け、対独宣戦に反対の立場をとります。しかし、黎元洪派についたわけではなく、段とのつながりも維持していました。同年5月、張勲は段祺瑞の腹心から黎元洪の打倒を唆され、翌日、黎が段を罷免したため、各地の督軍が反黎の独立を始めました。劣勢に追い込まれた黎元洪は張勲を北京に招聘、張勲は辮軍を率いて北京へ向かいます。1917年7月1日、張勲は清朝の復活を宣言し、溥儀を再び皇帝の座につけました。

復辟の失敗と晩年

張勲復辟は世論や諸勢力の猛反発を招き、張勲を支持する者はほとんどいませんでした。段祺瑞は討逆軍を組織し、わずか12日間で張勲復辟は失敗に終わりました。張勲はオランダ公使館に逃れ、1918年に特赦を受けますが、実権を失います。1921年には熱河林墾督弁に任命されますが、実際には赴任せず、1923年、天津で病没しました。享年70歳。諡は忠武。

まとめ

張勲は、清朝への忠誠心と保守的な信念を貫いた人物でした。その復辟事件は、時代の流れに逆行するものであり、彼の生涯における大きな転換点となりました。しかし、彼の行動は、清朝への忠誠を貫こうとした信念の表れでもありました。

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