徳川治察

徳川治察（とくがわ はるあき / はるさと）

徳川治察は、江戸時代中期に活躍した武士であり、御三卿の一つである田安徳川家の二代目当主です。田安家は、八代将軍徳川吉宗の次男である徳川宗武を初代とする家柄で、治察はその宗武の五男として生まれました。以下に、その生涯と人物像を詳細に記述します。

生涯

徳川治察は、宝暦3年（1753年）10月6日に田安邸にて、田安家初代当主である徳川宗武の五男として誕生しました。母は近衛家久の娘である森姫（宝蓮院）です。幼名は寿麻呂、または寿丸と称しました。当初は松平氏を名乗っていましたが、翌宝暦4年（1754年）1月29日に父・宗武の世子となり、徳川氏を称することとなりました。

明和元年（1764年）11月15日には元服し、当時の将軍であった徳川家治から偏諱を賜り、「治察」と名乗りました。その翌年、明和2年（1765年）12月15日には従三位大蔵卿兼左近衛権中将に任じられ、公家としての位も得ました。

明和7年（1770年）には、吹上庭にて馬術を披露し、その腕前を認められて「広瀬」という馬を拝領しました。これは、治察が武芸にも優れていたことを示すエピソードと言えるでしょう。

しかし、明和8年（1771年）6月4日に父・宗武が死去し、同年7月3日に治察は田安家の家督を継ぐこととなりました。ところが、安永3年（1774年）9月8日、治察は田安邸にて22歳という若さでこの世を去りました。法名は高尚院とされ、同月29日には東叡山寛永寺の凌雲院に葬られました。死後、天明3年（1783年）6月4日には参議が追贈されています。

人物

徳川治察は、父・宗武から受け継いだ文才や国学の知識に長けていました。その才能は、編著である『泣血集話』や、詩文遺稿集である『克一堂稿』といった著作にも表れています。これらの作品は、治察の文学的才能を示す貴重な資料となっています。

治察死後の田安家

治察には、妻子がいませんでした。当時、田安邸には実弟である松平定信が、陸奥国白河藩主・松平定邦の養子となったばかりで暮らしていました。治察の死後、母・宝蓮院は、大奥の老女である高岳に、定信による田安家相続を希望しました。しかし、御三卿の創立者である徳川吉宗の意向により、御三卿の当主に子供がいない場合には相続は認められないという決まりがあったため、この希望は叶いませんでした。

治察の死は、同年9月8日に公表されましたが、その後、田安家は14年間もの間、当主不在の状態が続きました。最終的に、天明7年（1787年）になって、一橋家の徳川治済の五男である斉匡（後の徳川家斉の弟）が田安家を相続し、ようやく当主不在の状態が解消されました。

まとめ

徳川治察は、若くして亡くなりましたが、文学的才能に恵まれ、その遺した作品は今もなお評価されています。また、田安家の当主として、短い間ながらもその責務を果たしました。彼の死後、田安家が一時的に当主不在となったことは、当時の幕府における御三卿の位置づけや、相続に関する制度を考える上で重要な出来事と言えるでしょう。

脚注

参考文献として『徳川諸家系譜』 第三、続群書類従完成会、1979年3月25日。NDLJP:12207381。
外部リンクとしてデジタル版 日本人名大辞典+Plus『田安治察』 - コトバンク を参照してください。

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