愛宕山武司

愛宕山 武司（あたごやま たけし、本名：大澤 慶吉）は、1936年1月11日に愛媛県八幡浜市幸町に生まれた大相撲力士である。高砂部屋に所属し、得意手は左四つ、突っ張り、寄り。最高位は1959年11月場所の西前頭3枚目。身長177cm、体重117kg。2000年5月5日に64歳で逝去した。

地元中学校卒業後、当時の幕内力士であった前ノ山の紹介で高砂部屋に入門した。1951年5月場所、本名である「大澤」の四股名で初土俵を踏んだ。同期には後の前頭・起雲山らがいる。初土俵場所では、番付外と新序において連続して良好な成績を収めたため、翌場所では序ノ口を経ず序二段に付け出された。これは異例の速さでの昇進と言える。1952年5月場所からは、故郷八幡浜市にある山にちなみ「愛宕山」に四股名を改名した。

その後も順調に番付を上げ、満20歳となった1956年1月場所で新十両に昇進した。直前場所で東幕下26枚目ながら8戦全勝という好成績を挙げたことが評価されての抜擢であり、当時の内規を鑑みると特例的な昇進であった。さらに歩を進め、1957年3月場所には新入幕を果たし、幕内力士となる。一時的に十両への陥落を経験するものの、同年11月場所からは再び幕内の地位に定着した。

幕内定着後、愛宕山はその実力を発揮した。特に西前頭15枚目に在った1959年9月場所では、上位陣を破るなどして優勝争いに加わる健闘を見せ、大いに注目を集めた。しかし、場所終盤に連敗を喫したことで、惜しくも優勝や三賞受賞の機会を逃している。得意としたのは左四つに組んでからの寄りや、立ち合いからの鋭い突っ張りだが、相手に粘られて連相撲となる場面も少なくなかったとされる。キャリアの最高位である西前頭3枚目には、1959年11月場所で到達した。

しかし、順風満帆に見えた力士人生は、この時期を境に暗転していく。左足の怪我に加え、持病の腎臓病や糖尿病といった病気にも苦しむようになり、体調面での不安が成績に大きく影響を与え始めた。1960年以降は星が伸び悩み、同年5月場所を最後に幕内の座から遠ざかることとなった。その後は健康状態が改善せず、番付は下降の一途をたどる。現役晩年には幕下64枚目まで大きく番付を落とすことになった。

怪我と病気による低迷が続いた結果、愛宕山武司は1962年1月場所限りで、26歳という比較的若い年齢で現役を引退することを決断した。引退時の四股名は「大沢」に戻していた。力士生活に区切りをつけた後は、角界とは異なる道を選択し、東京都内で不動産業に従事した。第二の人生を歩み、2000年5月5日に64歳でその生涯を終えている。

主な成績は、通算50場所の在位で263勝256敗62休、勝率.507である。幕内在位は17場所で、成績は104勝120敗31休、勝率.464を記録している。各段優勝としては、十両で1回（1957年9月場所）、幕下で2回（1954年5月場所、1955年9月場所）の優勝経験がある。

特に印象的な場所として挙げられる1959年9月場所では、千秋楽の対戦相手である若ノ海に勝利していれば、当時の東前頭3枚目であった柏戸（後の横綱）とともに敢闘賞を受賞する可能性があった。しかし、この一番に敗れたため、敢闘賞は柏戸が単独で受賞することになった。

改名歴：大澤（1951年9月場所-1952年1月場所）→ 愛宕山 武司（1952年5月場所-1960年11月場所）→ 大沢（1961年1月場所-1962年1月場所）。

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