憶礼福留

憶礼福留（おくらい ふくる、生没年不詳）は、百済の官吏、または武人として知られています。官位は達卒でした。彼の名前「憶礼」は「憶頼」とも表記され、その意味は百済の聖地を指すという説や、百済の雅称である「意流」「尉礼」「意呂」に由来するという説があります。

百済が滅亡すると、憶礼福留は白村江の戦いの後、他の百済の民と共に倭国（日本）へ亡命しました。『日本書紀』によると、天智天皇2年（663年）9月24日、彼は余自信、木素貴子、谷那晋首らと共に弖礼城に到着し、翌日には倭国へ向けて出発しました。

憶礼福留は兵法に詳しく、天智天皇4年（665年）8月には、同じく百済の遺臣である達卒の四比福夫と共に、筑紫国に大野城と椽城という古代山城を築きました。これらの城は、当時の日本にとって重要な防衛拠点となったと考えられます。

その功績が認められ、天智天皇10年（671年）1月には、憶礼福留は大山下の冠位を授けられました。これは、彼が日本社会において一定の地位を確立したことを示しています。

また、憶礼福留の一族には、天平宝字5年（761年）3月の記事に登場する憶頼子老がいます。『新撰姓氏録』によれば、憶頼子老は近肖古王の孫であり、石野連の祖先であるとされています。これにより、憶礼福留の一族が日本の歴史の中で重要な役割を果たしたことがわかります。

憶礼福留の生涯は、百済の滅亡と、その後の日本での活動という、激動の時代を反映しています。彼の足跡は、古代東アジアの国際関係や、亡命者たちが新たな土地でどのように生き抜いたかを示す貴重な歴史的証拠と言えるでしょう。

参考文献

『日本書紀』（五）岩波文庫、1995年
『日本書紀』全現代語訳(下)、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1988年
『続日本紀』全現代語訳(中)、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1992年
『日本古代氏族事典』【新装版】佐伯有清：編、雄山閣、2015年
『白村江―古代東アジア大戦の謎』遠山美都男、講談社現代新書、1997年
『戦争の日本古代史 好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで』倉本一宏、講談社現代新書、2017年

関連項目

白村江の戦い
壬申の乱
唐・新羅戦争

外部リンク

天智天皇（十四）百済の名は今日、絶えた
天智天皇（二十）長門と筑紫に城・劉徳高の来日
天智天皇（四十）百済の遺臣に冠位を・橘は己が枝々…

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