四比福夫

四比福夫（しひ ふくぶ）とは

四比福夫は、生没年不詳の百済の官吏、または武人とされる人物です。官位は達卒。百済が滅亡した際、白村江の戦いを経て倭国（日本）へ亡命しました。

名前について

「四比」という姓は、百済の都であった泗沘城（しひじょう）に由来するという説が有力です。この説は、岸俊男によって提唱されました。

日本での活動

『日本書紀』には、天智天皇4年（665年）8月に、同じく百済の遺臣である憶礼福留（おくらいふくとめ）とともに筑紫国に派遣されたという記述があります。

彼らは、大宰府の防衛のために二つの古代山城を築きました。一つは大宰府の背後を、もう一つは南部を守るように配置されました。これらの城は、福留や福夫ら亡命百済人の指導によって築かれたとされています。このことから、大宰府の都市構造にも百済の都城との類似性が指摘されています。

四比氏について

四比福夫の一族は、日本に帰化した後もその名を残しました。『続日本紀』には、一族の四比忠勇が神亀元年（724年）に椎野連の氏姓を賜与されたという記録があります。また、天平神護2年（766年）には、四比河守も同じく椎野連の氏姓を賜りました。

女性では、和銅7年（714年）に四比信紗が、亡夫の両親への孝養により課役を免除されたという記述が残っています。これらの記録から、四比一族が日本社会に深く根付き、重要な役割を果たしていたことが伺えます。

まとめ

四比福夫は、百済の滅亡という歴史の転換期に、日本に渡り、その後の日本の防衛体制構築に貢献しました。彼の足跡は、古代日本の国際関係や文化交流を理解する上で、非常に重要な意味を持っています。

参考文献

『日本の古代9 都城の生態』、岸俊男：編、中公文庫、1996年
『日本書紀』（五）岩波文庫、1995年
『日本書紀』全現代語訳(下)、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1988年
『続日本紀』1・2・3 新日本古典文学大系12・13・14　岩波書店、1989年・1990年・1992年
『続日本紀』全現代語訳（上）・（中）、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1992年
『日本古代氏族事典』【新装版】佐伯有清：編、雄山閣、2015年
『白村江-古代東アジア大戦の謎』遠山美都男、講談社現代新書、1997年
『戦争の日本古代史 好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで』倉本一宏、講談社現代新書、2017年

関連項目

壬申の乱
唐・新羅戦争
* 椎野長年

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