文藝春秋読者賞

文藝春秋読者賞（ぶんげい しゅんじゅう どくしゃしょう）

文藝春秋読者賞は、日本の代表的な総合雑誌である『文藝春秋』が、読者の意見を反映して選出する文学賞です。その年に同誌に掲載された数ある記事の中から、最も優れた一篇を表彰することを目的としています。

本賞の最大の特徴は、選考の出発点に読者の声がある点です。毎年12月号の発行に合わせて、読者への投票が呼びかけられます。読者は、その年の1月号から12月号までに掲載された記事全てを対象に、連載、コラム、グラビアなども含めて、最も心に残った、あるいは興味深かった記事を一つ選びます。投票は、誌面に用意された専用の葉書に記入し、編集部へ郵送する方式で行われます。

集計された読者投票の結果、得票数の多かった上位記事が候補となります。最終的な受賞作は、これらの候補の中から、選考委員会が慎重な審議を経て決定します。受賞作の発表は、通常、翌年の2月号誌上にて行われます。

受賞者には、栄誉と共に、賞金として五十万円と記念の時計が贈られます。また、投票に参加した読者へ感謝の意を表し、抽選で三十名に三万円、二百名に図書カード三千円分が贈呈されます。

文藝春秋読者賞は1949年に創設されました。当初は年一回の選考でしたが、1954年から1963年にかけては、上半期と下半期に分けて年に二回選考が行われていました。1964年からは現在の年一回の選考体制が続いています。

この賞は、読者が直接選考に関わることで、『文藝春秋』という媒体と読者との結びつきを強め、多様な言論を奨励する役割も果たしています。これまでに日本の言論界や文学界を牽引してきた多くの著名な書き手たちが受賞しています。

以下に、歴代の主な受賞作品と過去の選考委員の一部を紹介します。（発表年は当該年度の翌年2月号）

歴代受賞作（一部）

第1回（1949年） 辰野隆、サトウハチロー、徳川夢声「天皇陛下大いに笑ふ」
第16回（1959年） 松本清張「小説帝銀事件」
第23回（1962年） 堀江謙一「太平洋ひとりぼっち」
第36回（1974年） 立花隆・児玉隆也「特集　田中角栄研究」
第56回（1994年） 柳田邦男「犠牲　わが息子・脳死の11日」
第72回（2010年） 村木厚子「私は泣かない、屈さない」渡辺淳一「天上紅蓮」
第81回（2019年） 村上春樹「猫を棄てる―父親について語るときに僕が語ること」、グレッグ・ケリー「西川廣人さんに日産社長の資格はない」

歴代選考委員（主な年代）

1956-1958年：辰野隆、今日出海、宮澤俊義、河上徹太郎、浦松佐美太郎、福原麟太郎、金森徳次郎
1973-1975年：会田雄次、江藤淳、丸谷才一、曽野綾子、沢村三木男
1985-1989年：阿川弘之、佐伯彰一、桐島洋子、上林吾郎
1998-2000年：渡辺淳一、浅利慶太、櫻井よしこ、安藤満
2019年-現在：片山杜秀、本郷和人、三浦瑠麗、中部嘉人

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