斎藤瀏
斎藤瀏（さいとう りゅう）は、1879年（明治12年）に長野県で生まれ、1953年（昭和28年）にその生涯を閉じた陸軍軍人であり、著名な歌人でもありました。最終階級は陸軍少将で、歌人として知られる斎藤史は彼の長女です。
斎藤瀏は、旧松本藩士の家に四男として誕生しましたが、実家が既に帰農していたため、平民籍でした。幼少期には貧困のため丁稚奉公を経験しました。旧制松本中学（現在の長野県松本深志高等学校）を経て、1901年に陸軍士官学校（12期）を卒業し、歩兵少尉に任官しました。同期には、杉山元や小磯國昭といった後に要職を務める人物たちがいました。彼は、旧制中学時代に医師で漢学者の斎藤順の養子となっています。
1903年に中尉に昇進し、1904年には日露戦争に従軍しました。この時期に短歌の道に進むことを決意し、佐佐木信綱に師事しました。翌年に負傷し帰国し、功五級金鵄勲章を授与されました。1906年には大尉に昇進、1909年には陸軍大学校（21期）を卒業。同期には寺内寿一や中村孝太郎らがいました。佐佐木信綱が主宰する竹柏会の歌誌『心の花』で歌人としての腕を磨きました。
1914年に少佐へ昇進し、教育総監部参謀として上原勇作教育総監のもとで勤務しました。1918年には大佐に昇進し、1924年には旭川の第7師団参謀長に就任しました。1927年には陸軍少将に昇進し、1928年の山東出兵では歩兵第11旅団長として済南事件で革命軍と交戦した結果、待命となります。そして1930年に予備役となりました。
1936年、二・二六事件において反乱軍を援助したとして禁固5年の刑となり入獄しました。これにより、従四位を失い、勲二等、功五級、および従軍記章、大礼記念章も褫奪されました。収監された陸軍衛戍刑務所では、家族ぐるみで親交があった栗原安秀と共に刑に服しました。1938年に出獄後は、軍国主義イデオローグとして活動する一方で、歌人として『短歌人』を創刊し主宰しました。1942年には、愛国百人一首の選定委員の一人として名を連ねています。同年には、大日本言論報国会の理事も務めました。1945年には、長野県北安曇郡池田町に疎開し、終戦後は公職追放の対象となりました。戦後は、歌集のほか、二・二六事件の回想録なども発表しました。1953年に長野市の娘である斎藤史の家で亡くなりました。
1987年、NHKに保存されていた二・二六事件の電話傍受記録から、栗原安秀が首相官邸から斎藤にかけた電話が事件終結直前の2月29日未明のものであることが判明しました。斎藤は電話で、軍による討伐が迫っていることを伝え、内閣の総理大臣候補について栗原とやり取りをしました。この事実は、翌1988年にNHK特集で取り上げられました。番組制作に携わった中田整一は、斎藤史にこの録音のコピーを送りましたが、彼女が生前に聞いたかどうかは不明です。
斎藤は、戦後に著した回想録『二・二六』の中で、事件中に自宅の電話が傍受されていたのではないかという疑念を抱いていたことを記しています。また、軍の諜報機関などによると思われる、要領を得ない謀略めいた電話が度々かかってきたとも記しており、後の調査でこの疑念が事実である可能性が高いことが判明しています。
位階
1901年（明治34年）10月10日 - 正八位
勲章等
1906年（明治39年）4月1日 - 功五級金鵄勲章・勲六等単光旭日章
1937年（昭和12年）1月18日 - 功五級金鵄勲章褫奪
斎藤瀏は、多数の著書を残しており、その中には軍事関係のものから短歌集、回想録まで幅広い分野にわたるものがあります。
『青年将校の修養』兵事雑誌社 1915
『霧華』竹柏会 心の華叢書 1929
『万葉名歌鑑賞』人文書院 1935
『波濤 歌集』人文書院 1939
『悪童記 短歌と随想』三省堂 1940
『獄中の記』東京堂 1940
『防人の歌』東京堂 1942
『四天雲晴』東京堂 1942
『万葉のこころ』朝日新聞社 1942
『わが悲懐』那珂書店 1942
『信念の書 日本世界観・指導原理』東京堂 1943
『名婦評伝』人文書院 1944
『光土』八雲書店 新日本歌集 1945
『自然と短歌』人文書院 1947
『二・二六』改造社 1951
『肉弾は歌ふ』編 八雲書林 1939
『戰陣訓讀本』編 三省堂 1941
『日本の決勝戦此の一年』石原広一郎共述 明倫会京都支部 1941
き花 - 旭川市の壺屋総本店が販売する菓子。斎藤瀏の短歌に詠まれた「霧華」に由来して命名されました。
斎藤瀏は、軍人として、また歌人として、激動の時代を生き抜いた人物です。二・二六事件への関与など、その行動には賛否両論ありますが、彼の残した作品と業績は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。
生涯
斎藤瀏は、旧松本藩士の家に四男として誕生しましたが、実家が既に帰農していたため、平民籍でした。幼少期には貧困のため丁稚奉公を経験しました。旧制松本中学（現在の長野県松本深志高等学校）を経て、1901年に陸軍士官学校（12期）を卒業し、歩兵少尉に任官しました。同期には、杉山元や小磯國昭といった後に要職を務める人物たちがいました。彼は、旧制中学時代に医師で漢学者の斎藤順の養子となっています。
1903年に中尉に昇進し、1904年には日露戦争に従軍しました。この時期に短歌の道に進むことを決意し、佐佐木信綱に師事しました。翌年に負傷し帰国し、功五級金鵄勲章を授与されました。1906年には大尉に昇進、1909年には陸軍大学校（21期）を卒業。同期には寺内寿一や中村孝太郎らがいました。佐佐木信綱が主宰する竹柏会の歌誌『心の花』で歌人としての腕を磨きました。
1914年に少佐へ昇進し、教育総監部参謀として上原勇作教育総監のもとで勤務しました。1918年には大佐に昇進し、1924年には旭川の第7師団参謀長に就任しました。1927年には陸軍少将に昇進し、1928年の山東出兵では歩兵第11旅団長として済南事件で革命軍と交戦した結果、待命となります。そして1930年に予備役となりました。
1936年、二・二六事件において反乱軍を援助したとして禁固5年の刑となり入獄しました。これにより、従四位を失い、勲二等、功五級、および従軍記章、大礼記念章も褫奪されました。収監された陸軍衛戍刑務所では、家族ぐるみで親交があった栗原安秀と共に刑に服しました。1938年に出獄後は、軍国主義イデオローグとして活動する一方で、歌人として『短歌人』を創刊し主宰しました。1942年には、愛国百人一首の選定委員の一人として名を連ねています。同年には、大日本言論報国会の理事も務めました。1945年には、長野県北安曇郡池田町に疎開し、終戦後は公職追放の対象となりました。戦後は、歌集のほか、二・二六事件の回想録なども発表しました。1953年に長野市の娘である斎藤史の家で亡くなりました。
没後
1987年、NHKに保存されていた二・二六事件の電話傍受記録から、栗原安秀が首相官邸から斎藤にかけた電話が事件終結直前の2月29日未明のものであることが判明しました。斎藤は電話で、軍による討伐が迫っていることを伝え、内閣の総理大臣候補について栗原とやり取りをしました。この事実は、翌1988年にNHK特集で取り上げられました。番組制作に携わった中田整一は、斎藤史にこの録音のコピーを送りましたが、彼女が生前に聞いたかどうかは不明です。
斎藤は、戦後に著した回想録『二・二六』の中で、事件中に自宅の電話が傍受されていたのではないかという疑念を抱いていたことを記しています。また、軍の諜報機関などによると思われる、要領を得ない謀略めいた電話が度々かかってきたとも記しており、後の調査でこの疑念が事実である可能性が高いことが判明しています。
栄典
位階
1901年（明治34年）10月10日 - 正八位
勲章等
1906年（明治39年）4月1日 - 功五級金鵄勲章・勲六等単光旭日章
1937年（昭和12年）1月18日 - 功五級金鵄勲章褫奪
著書
斎藤瀏は、多数の著書を残しており、その中には軍事関係のものから短歌集、回想録まで幅広い分野にわたるものがあります。
『青年将校の修養』兵事雑誌社 1915
『霧華』竹柏会 心の華叢書 1929
『万葉名歌鑑賞』人文書院 1935
『波濤 歌集』人文書院 1939
『悪童記 短歌と随想』三省堂 1940
『獄中の記』東京堂 1940
『防人の歌』東京堂 1942
『四天雲晴』東京堂 1942
『万葉のこころ』朝日新聞社 1942
『わが悲懐』那珂書店 1942
『信念の書 日本世界観・指導原理』東京堂 1943
『名婦評伝』人文書院 1944
『光土』八雲書店 新日本歌集 1945
『自然と短歌』人文書院 1947
『二・二六』改造社 1951
編共著
『肉弾は歌ふ』編 八雲書林 1939
『戰陣訓讀本』編 三省堂 1941
『日本の決勝戦此の一年』石原広一郎共述 明倫会京都支部 1941
関連項目
き花 - 旭川市の壺屋総本店が販売する菓子。斎藤瀏の短歌に詠まれた「霧華」に由来して命名されました。
斎藤瀏は、軍人として、また歌人として、激動の時代を生き抜いた人物です。二・二六事件への関与など、その行動には賛否両論ありますが、彼の残した作品と業績は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。
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