新アッシリア帝国の王妃

新アッシリア帝国（紀元前934年 - 紀元前609年）における王妃、すなわちアッシリア王の配偶者は、単なる飾りではなく、政治的、経済的、宗教的に重要な役割を担っていました。彼女たちは「宮廷夫人」（issi ekalliまたはsēgallu）と呼ばれ、その地位と権力は王との関係に基づいていましたが、単なる王の妻という枠には収まらない多岐にわたる活動を行っていました。

王妃の称号とシンボル

王妃を指すアッカド語の楔形文字は、mí.é.gal、munus.é.gal、またはmí.kurで、「宮廷夫人」を意味します。興味深いことに、アッシリア語には「女王」（šarratu）という言葉が存在しましたが、これは女神や外国の女性君主に対してのみ用いられ、アッシリアの王妃に対しては使用されませんでした。これは、王妃が自らの権利で統治することはなかったためです。

新アッシリア時代後期には、王族女性の称号が増加し、例えば王太子の妻は「奥方」（bēlat bēti）、王の母は「王母」（ummi šari）と呼ばれるようになりました。「王母」は特に重要な地位を維持し、時には王の死後も影響力を持ち続けました。

王妃のシンボルとして頻繁に用いられたのはサソリであり、これは受胎と密接な関係があり、理想的な母親としての役割を象徴していました。サソリが子供を背負って移動する習性と、王妃が王位継承者を産み育てるという重要な義務が重ね合わされたと考えられます。

王妃の地位と権力

王妃は、王宮内の他の人々と同じく、最終的には王との関係から権力を得ていましたが、彼女たちは単なる飾りではありませんでした。彼女たちは財政問題に関与し、王位継承者を産むという重要な義務を負いながら、政府の高いレベルで多くの責任を担っていました。宗教的活動を主催し、神殿を財政的に支援し、神々への捧げ物を管理しました。また、政治的な決定にも影響力を持っていたと考えられています。

王妃は多数の高級官吏から尊敬を受け、莫大な財源を保有していました。彼女たちの財産と活動に関する文書や、墓から発見された宝物は、彼女たちがアッシリア社会において重要な人物であったことを示しています。センナケリブ王は、妻タシュメトゥ・シャラトを「最愛の妻」と公に称賛し、エサルハドン王は、妻エシャラ・ハンマトの死後、彼女のために巨大な霊廟を建設しました。

王妃は大規模なスタッフを抱え、彼女らの眷属は帝国の行政機構に不可欠な部分を構成していました。王妃の眷属は帝国全土に広大な土地と事務所を所有し、多数の人々を使役していました。王妃のスタッフは、「šakintu」と呼ばれる女性管理者によって率いられ、彼女たち自身もかなりの財力と人員を抱えていました。サルゴン2世の治世には、王妃に仕える軍部隊が創設され、これは王妃の権威を示すものであり、単なる身辺警護以上の役割を果たしていました。

「宮廷夫人」という称号は、王との関係よりも王宮における王妃の役割に重点を置いており、「内なる領域の支配者」としての彼女たちの役割は、王の正妃であること以上の重要性を持っていました。彼女たちの王宮との強い関係は、首都ニムルドの王宮の床下に建設された王妃の墓からも明らかです。

最も強力かつ有名な新アッシリアの王妃は、シャムシ・アダド5世の王妃サンムラマートでした。彼女は夫の死後、息子アダド・ニラリ3世の摂政を務めた可能性があり、息子の軍事遠征にも同行したとされています。サンムラマートは、後世において伝説の女王セミラミスとして語り継がれました。

学術的な論争と問題

王妃の地位が王の地位とどのように結びついていたのか、正確にはわかっていません。王妃が王の死後もその称号と立場を維持していたのか、あるいは称号と地位は新たな王の妻へとすぐに移譲されたのかについては、学術的な論争があります。また、複数の女性が同時に「宮廷夫人」の称号を与えられていた可能性も指摘されています。

服飾とレガリア

アッシリアの王妃は、夫とは異なる体裁の王冠を身に着けていました。彼女らの冠は「城壁冠」と呼ばれ、城壁を連想させるデザインが組み込まれていました。この王冠は、政治的な価値と女性の権力の象徴でした。宗教的な場面など、王冠の着用が不適切な場合には、無地のヘッドバンドなど、より控えめなレガリアを身に着けていました。

王妃の王室の装束は、メソポタミア神話から着想を得ていた可能性があり、特に女神イシュタルの装束との類似性が指摘されています。ニムルドの王妃の墓からは、頭飾り、ネックレス、イヤリング、ブレスレット、指輪、印章、鏡など、多数のレガリアが発見されました。

史料

王妃各個人に関する現存史料は非常に乏しく、名前が判明している王妃は限られています。王妃に関する最も幅広い情報は、ニムルドの王妃の墓から発掘されたものです。行政文書では王妃が名前なしで言及されることは頻繁にあり、彼女たちの眷属、立場と地位について知ることができます。

美術における存在感

新アッシリア時代の王と男性の役人の芸術的描写は数多く残されていますが、王妃の描写は稀です。王妃を描いた最も有名な美術的表現は、アッシュルバニパルの「園遊会」のレリーフであり、寝台でくつろぐアッシュルバニパルと、その対面で高椅子に座る王妃リッバリ・シャラトが描かれています。

王妃の一覧

名前が判明している王妃として、ムリッス・ムカンニシャト・ニヌア、サンムラマート、ハマ、イアバ、バニトゥ、アタリア、タシュメトゥ・シャラト、ナキア、エシャラ・ハンマト、リッバリ・シャラトなどが挙げられます。また、名前不詳の王妃も複数存在します。

新アッシリア帝国の王妃は、政治、経済、宗教、文化の各方面で重要な役割を果たし、その存在は帝国の繁栄に大きく貢献しました。彼女たちの生涯と業績は、古代メソポタミアの歴史において重要な一章を構成しています。

[参考資料]
新アッシリア帝国
ニムルドの王妃の墓

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