御鉢

御鉢（おはち）とは

御鉢（おはち、みはち）は、九州南部に位置する霧島山を構成する活[[火山]]の一つです。高千穂峰の西側に隣接しており、歴史的に繰り返し噴火を起こしていることで知られています。かつては火常峰と呼ばれていましたが、火口の形状が飯櫃に似ていることから、御鉢という通称が広まり、現在では一般的にこの名で呼ばれています。

御鉢の火口内と西斜面は鹿児島県霧島市、北斜面は宮崎県小林市、南斜面は宮崎県都城市にそれぞれ属しており、三つの県境にまたがっています。

山容

御鉢は、高千穂峰の西斜面に寄り添うようにそびえ立つ円錐形の火山です。直径約600メートル、深さ約200メートルの円形火口を持ち、火口からは常に噴気が立ち上り、火山性微動が観測されています。火口壁の頂上付近は切り立った崖となっており、その上を通る登山道は「馬の背越え」と呼ばれ、登山者にとってはスリリングな場所となっています。

また、火口東端と高千穂峰の間には「背門丘（せとを）」と呼ばれる窪地があります。この場所は、天孫降臨の舞台と伝えられ、かつては千里谷や天河原とも呼ばれていました。霧島神宮は、もともとこの地に創建されましたが、度重なる噴火によって焼失したため、現在の高千穂河原（古宮址）に移されました。

御鉢の山体は、主に輝石安山岩で構成されています。度重なる噴火の影響で、頂上付近の植生は乏しいものの、ミヤマキリシマなどの荒れ地に強い植物が自生しています。

噴火の歴史

御鉢は、高千穂峰が形成された約3000年前から活動を開始しました。霧島山の中でも特に活動が活発な火山で、有史以降、数多くの噴火記録が残っています。以下に、主な噴火について解説します。

江戸時代以前

天平噴火（742年）： 太鼓のような音と共に噴火したと記録されています。この噴火日は、11月28日とする説もあります。
延暦噴火（788年）： この噴火で噴出したものは、片添スコリアと呼ばれています。
文暦噴火（1235年）： 雷鳴のような音や火炎、火光を伴う大規模な噴火が発生しました。霧島山に関する記録に残る中では最大規模の噴火であり、大量の噴石、火山灰、溶岩を噴出しました。周辺の寺社は焼失し、火山灰は火口から20キロメートル離れた場所でも60センチメートルの厚さに達したとされています。噴出物は火口東側に広く分布しており、高原スコリアと呼ばれています。
永禄噴火（1566年）： この噴火では、多くの死者が出た記録が残っています。
宝永噴火（1706年）： 周辺の寺社が焼失する被害が発生しました。

明治時代

1880年： 噴煙が確認され、火口底に深さ3メートルの池が出現しました。
1886年： 火口底に大量の硫黄が堆積し始め、硫黄の採掘が行われるようになりました。
1887年： 火口底の池は深さ12メートルにまで達し、高温になることもありました。
1888年： 火口からの噴煙や噴石の放出が始まり、爆発を繰り返しました。硫黄採掘作業者は事前に下山し、被害は免れました。
1889年： 麓の高原村では、昼間でも空が真っ暗になるほどの噴煙に覆われました。
1891年: 一日に14回噴火があり噴石を放出しました。同年11月にも同様の被害が発生しました。
1894年： 爆発的な噴火が発生し、噴石と火山灰が放出されました。
1895年： 登山者3名が噴石によって死亡し、周辺の家屋も焼失する被害が発生しました。この噴火は鹿児島市内でも爆発音が聞こえ、火口東側に火山灰が降り積もりました。その後も噴火が続き、1896年と1900年にも登山者が噴石によって死亡する事故が発生しました。

噴火は1903年に一旦収束しました。

大正時代以降

1913年： 地震が多発する前兆現象の後、爆発が起こり、高温の噴石と火山灰が放出されました。1923年には噴火により登山者が死亡する事故が起きました。
2002年以降： しばしば火山性微動が観測されています。

防災

御鉢は現在も活発な活動を続けているため、噴火警戒レベルが設定されています。最新の警戒レベルについては、気象庁のウェブサイトで確認することが推奨されています。

関連情報

関連項目： 高千穂峰、霧島神宮
参考文献： 鹿児島県、鹿児島地方気象台編・発行『鹿児島県災異誌』、橋口兼古、五代秀堯、橋口兼柄『三国名勝図会 巻之33』
外部リンク： 気象庁、産業技術総合研究所 地質調査総合センター、霧島ジオパーク推進連絡協議会事務局

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