新疆天山

新疆天山：自然が織りなす壮大な景観と生態系の宝庫

新疆天山は、中国の新疆ウイグル自治区に広がる天山山脈の一部を指し、その優れた自然美と生態学的価値が認められ、ユネスコの世界遺産に登録されました。この地域は、多様な地形と気候条件が織りなす、他に類を見ない景観と生態系を誇ります。

多様な景観

天山山脈は、高山、氷河、森林、湿地、草原、ステップ、河川、湖、そして赤色の渓谷など、変化に富んだ自然景観を有しています。特に、広大なタクラマカン砂漠に面する乾燥した南斜面と、ジュンガル砂漠に面する湿潤な北斜面とのコントラストは、天山山脈の植物相に多様性をもたらし、温暖湿潤な植物相から乾燥地帯の植物相への移行という、植生の変化を観察することができます。

登録への道のり

新疆天山は、2010年に世界遺産の暫定リストに記載され、2012年に正式に推薦されました。2013年の第37回世界遺産委員会では、国際自然保護連合（IUCN）からの登録勧告を受け、同じく中国から推薦された紅河ハニ棚田群とともに登録が認められました。これは、中国にとって10件目の自然遺産となります。

IUCNは、将来的な拡大登録、特に近隣諸国との国境を越えた世界遺産としての発展に期待を表明しています。

構成資産

新疆天山は、以下の4つの地域で構成されています。

トムール: 天山山脈の最高峰であるポベーダ山（7,443m）を含む地域。トムール峰国家自然保護区が登録対象となっています。
カラジュン＝クエルデニン: カラジュン自然保護区と西天山山脈国家自然保護区からなり、豊かな自然が保護されています。
バインブルク: 標高2,400mから2,600mに広がる草原地帯。バインブルク国家自然保護区が設定されています。
ボグダ: ウルムチ市の東方に位置する山で、山の中腹には景勝地である天池があります。天山天池国立公園として知られています。

貴重な生物相

新疆天山には、希少な動植物が生息しています。植物では、マルス・シエウェルシイ（リンゴ属）、テンザンカンバ（カバノキ属）、トゥリパ・シンキアンゲンシス（チューリップ属）、アモピプタントゥス・ナヌスなどが挙げられます。動物では、ヒメチョウゲンボウ、カタシロワシ、カラフトワシ、セーカーハヤブサ、ノハラクサリヘビ、コイ、モウコノウマ、キガシラウミワシ、イリナキウサギ、ユキヒョウ、シップスタージョンなどが確認されています。

登録基準

新疆天山は、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの: 雪を抱いた山々、氷河を冠した峰、美しい森林や草原、清澄な川や湖、赤い岩床の峡谷群など、自然の要素と広大な砂漠との組み合わせが、他に類を見ない景観を形成しています。
(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの: 温暖な乾燥帯における生物学的・生態学的進化の過程を示す貴重な例であり、鮮新世以来の地形と生態系が保存されています。

新疆天山は、その壮大な景観と多様な生態系を通じて、地球の歴史と進化を物語る、かけがえのない自然遺産です。

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