日産ディーゼル・RN/EN

日産ディーゼル・RN/EN「スペースランナー7」

日産ディーゼル・RNおよび日産ディーゼル・EN「スペースランナー7」は、かつて日産ディーゼル工業（現UDトラックス）が生産していた全長7m・全幅2.3mクラスの小型バスです。ここでは、路線バスとして活躍したRNと、観光仕様のENについて、その概要と詳細を解説します。

RN（ワンステップ路線バス）

概要

1996年9月26日に発売されたRNは、京王帝都電鉄（現：京王電鉄バスグループ）の要望に応えて開発された、全長7m・全幅2.3mクラスの小型ワンステップ路線バスです。日産ディーゼル初の小型路線バスであり、京王帝都電鉄、日産ディーゼル、富士重工業（伊勢崎事業所）の共同開発によって誕生しました。

当時、標準床のツーステップ小型路線バスは存在しましたが、バリアフリー対応のワンステップ低床構造で、車椅子用スロープ板を装着できるRNは、日本初の試みでした。1990年代はコミュニティバスが全国的に普及した時期でしたが、従来の車椅子対応車両はリフト付きのツーステップバスが主流で、乗降に時間と手間がかかるという課題がありました。そのような状況下で、京王バスからの要望と日産ディーゼルのダウンサイジングの模索が合致し、RNの開発がスタートしました。

京王バスグループ内では、そのコンパクトさから「チョロQ」という愛称で親しまれていました。首都圏など都市部で導入された車両は、経年により引退後、地方の事業者へ移籍して活躍しているものも多く存在します。

シリーズの変遷

KC-RN210CSN (1996年9月26日発売)

中型車のRMと同じ直列6気筒OHVのFE6E型（195PS）エンジンを横置きで搭載し、三菱ふそう・エアロミディMJと同様にアングルドライブで動力を伝達します。変速装置はFCT5速マニュアルを採用。前中2扉の折戸が標準で、車椅子での乗降に配慮した幅広の扉が特徴です。小型バスながら49名の乗車定員を確保しています。

サスペンションはリーフサスのみで、エアサスの設定はありません。ワンステップ仕様のみで、車椅子用スロープ板が標準装備されています。一部にはトップドア仕様の車両も存在します。窓形状は逆T字窓が標準ですが、引き違い窓（メトロ窓）の車両も見られます。

車体は当初、富士重工製R18型E (8E) のみでしたが、1997年には西日本車体工業製96MCも加わりました。市販車第1号（富士重工製車体）は京王バスに、西工製車体の第1号は西鉄バスに納入されました。

京王バスでは1996年10月よりRNの営業運転を開始し、「日本初の車椅子スロープ付き超低床小型バス」としてアピールしました。京王バス専用カードには、京王マスクのRNのイラストがデザインされていました。1997年に発足した京王バス東では、RNを大量導入し、収支改善と旅客サービス向上に貢献しました。

1997年以降の京王バス向け富士重工8E車体は、丸みを帯びた「京王マスク」と呼ばれる特注仕様で納入されました。京王れーるランドには特注マスクの車両が保存されています。また、京王バスの特注マスクの車両3台が、除籍後に日本航空の羽田空港内無料シャトルバスへ移籍しました。

西東京バスでも1997年からRNの一括導入が始まりましたが、特注マスク車は採用されませんでした。関東バスでも1999年3月に特注マスクの車体が5台導入され、2016年まで稼働していました。

西武バスでもコミュニティバス用に富士重工車体のRNを導入し、入間市や所沢市で運行されました。その後、RNは全国のバス事業者でコミュニティバスを中心に普及しました。

西日本では、1997年に京阪宇治交通に富士重工車体のRNが導入されました。京阪宇治交通で導入された車両は、京阪宇治交サービスを経て京阪宇治バスに再譲渡されました。一部車両は京阪バスに移籍後、浜松バスへ移籍しました。

京王バスでは、1999年式のKC-RNは西工車体3台のみとなりました。西工製車体の3台は新宿パークタワーの東京ガスショールーム「リビングデザインセンターOZONE」シャトルバスとして使用されていましたが、路線バスに転用されました。

京王バスでは、RN全車引退にあたり2012年6月23日から7月8日にかけて、最後の1台で「"チョロQバス" さよなら運転」を実施しました。

KK-RN252CSN (1999年)

平成10年排出ガス規制に伴いモデルチェンジ。エンジンはFE6F型（205PS）に変更されました。富士重工がRN系の車体架装から撤退したため、富士重工8E車体はサンプルカー1台のみで、大半は西日本車体工業96MC車体となりました。

富士重工8E車体で唯一製造された車両は、東観光バス、日本城タクシーを経て、八晃運輸に譲渡され、岡山市循環バス「めぐりん」で使用されています。

京王バスおよび西東京バスでは、KK-RNは導入されませんでした。宮城交通では、長町ループバス「ながまちくん」の専用車両として使用されました。西武バスでは西工車体のKK-RNを導入し、西東京市や入間市で運行されました。

RNシリーズは2004年に生産を終了しました。

EN（スペースランナー7）

概要

1993年の第30回東京モーターショーで発表された、全長7m・全幅2.3mの小型観光バスです。他社に遅れての登場でしたが、1994年にスペースランナー7として正式発売されました。エンジンをミッドシップに搭載し、同クラス唯一の全軸エアサスを標準採用していました。ハイデッカータイプで、車体は富士重工業製のR18型M、西日本車体工業製のスペースランナーボディが選択可能でした。

EN系は平成10年排出ガス規制にも対応していましたが、生産台数は少なく、平成16年排出ガス規制には対応せず生産終了しました。

シリーズの変遷

U-EN210DAN (1994年)

自然吸気のFE6E型エンジン (195PS) またはインタークーラーターボ付のFE6TA型エンジン (235PS) を搭載。車体は富士重工業18型M、または西日本車体工業のスペースランナーボディが架装されました。

KC-EN211DAN・KC-EN250DAN (1995年)

U-EN210DANに小改良を施し、平成6年排出ガス規制に適合。エンジンの設定は変わらず、FE6E型 (195PS) とFE6TA型 (235PS) でしたが、型式が区別されました。西武バスグループではKC-EN250DANを4台導入しました。

KK-EN252DAN (1999年)

平成10年排出ガス規制に適合させるため小改良。エンジンはターボ付のFE6TA型 (240PS) のみとなり、生産は少数にとどまりました。

以降の動向

2006年、日産ディーゼル工業と三菱ふそうトラック・バスはバス事業における提携を行いましたが、2010年に解消。このクラスの小型バスが再度販売されることはないまま、2011年にUDトラックスはバス製造事業から撤退しました。

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