明津

明津（あくつ）とは

神奈川県川崎市高津区に位置する明津は、住居表示が未実施の大字です。面積は約19.3ヘクタールで、高津区の南東端に位置し、矢上川と江川という2つの河川に挟まれた低湿地帯です。この地域は、かつては水害の影響を受けやすい土地でしたが、現在は都市化が進み、集合住宅や運輸関連の企業が多く見られます。

地理

明津は、北東端で江川を挟んで中原区の下小田中、井田杉山町、井田中ノ町と、南端で矢上川を挟んで蟹ケ谷や中原区井田と、西端で子母口と隣接しています。地域の中心部を尻手黒川道路が東西に貫いており、この道路沿いは準住居地域、東側は第一種中高層住居専用地域、西側は第二種中高層住居専用地域に指定されています。

明津には、北川久保、西川久保、南川久保、東川久保、仲町という小字が存在しますが、これらは登記簿上のみの存在であり、一般的に地名として使われることはありません。

地価

2024年7月1日時点の神奈川県地価調査によると、明津字仲町216番10の地点で、住宅地の地価は1平方メートルあたり31万5000円となっています。

歴史

中世以前

明津は、縄文海進の頃には海であり、その後も矢上川沿いの沖積低地でした。水害時に水面上に残る「水塚」は、古墳であると考えられており、古代から開発が行われていたことを示唆しています。

中世には子母口村の一部でしたが、文禄期に一村として分立したと考えられています。

江戸時代

江戸時代の明津は、旗本領、天領、増上寺領と支配者が変わり、湿田がほとんどでした。村高は、正保期の『武蔵田園簿』で55石8斗余り、『元禄郷帳』や幕末の『旧高旧領取調帳』で72石9斗余りでした。1765年の記録では、13軒の家があり、そのうち3軒が馬を飼育していました。

明治以降

明治維新により、明津は神奈川県に属し、明津村、橘村を経て川崎市となりました。戦時中には空襲の被害を受けましたが、昭和30年代頃までは農村でした。その後、神奈川県道14号鶴見溝ノ口線の拡幅や尻手黒川道路の開通により、都市化が急速に進みました。1960年には98世帯（うち農家12世帯）だった世帯数が、1971年には500世帯に激増し、農家は6世帯に減少しました。

地名の由来

「あくつ」は川沿いの低湿地を意味し、関東・東北地方に多く見られる地名ですが、「明津」と表記される例は珍しく、圷、阿久津、悪津などと表記されることが多いです。古くは「悪津村」と表記されていた記録も残っています。

沿革

文禄年間：子母口から分立。
1633年（寛永10年）：旗本駒井氏の領地となる。
1697年（元禄10年）：天領となる。
1713年（正徳3年）：増上寺領となる。
1868年（明治元年）：明治維新により神奈川県に所属。
1874年（明治7年）：大区小区制により、第4大区第8小区に属する。
1889年（明治22年）：町村制施行により橘村が成立し、その大字となる。
1909年（明治42年）：熊野神社が橘樹神社へ合祀される。
1937年（昭和12年）：橘村が川崎市に編入され、川崎市明津となる。
1938年（昭和13年）：耕地整理により、子母口、蟹ケ谷、井田と一部境界を変更。
1945年（昭和20年）：空襲の被害を受ける。
1962年（昭和37年）：神奈川県道14号鶴見溝ノ口線の拡幅工事。
1972年（昭和47年）4月1日：川崎市が政令指定都市に移行し、川崎市高津区明津となる。
1973年（昭和48年）4月1日：飛び地が井田へ編入される。
1986年（昭和61年）：熊野神社が再建される。

世帯数と人口

2024年9月30日現在の川崎市発表によると、世帯数と人口は以下の通りです。

（実際の数値は川崎市の公式発表資料を参照してください）

学区

市立小・中学校の学区は以下の通りです。（2023年10月時点）

（実際の学区は川崎市の公式発表資料を参照してください）

事業所

2021年経済センサス調査による事業所数と従業員数は以下の通りです。

（実際の数値は経済センサスの公式発表資料を参照してください）

交通

路線バス

明津には川崎市バス井田営業所があり、川崎駅、武蔵小杉駅、武蔵新城駅、向ヶ丘遊園駅など各方面へのバスが運行されています。

道路

尻手黒川道路（神奈川県道14号鶴見溝ノ口線）が、明津を東西に貫いています。

施設

熊野神社
常専寺

その他

日本郵便
郵便番号：213-0024（集配局：高津郵便局）
警察
管轄区域については、川崎市警察署の管轄区域を参照してください

参考文献

『川崎の町名』日本地名研究所 編、川崎市、1995年。
『川崎地名辞典（上）』日本地名研究所 編、川崎市、2004年。
『角川日本地名大辞典 14 神奈川県』角川書店、1984年。

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