星野氏

筑後星野氏：筑後国を拠点とした国人領主の興亡

筑後星野氏は、筑後国生葉郡星野邑を拠点とした有力な国人領主です。鎌倉時代初期に起こり、生葉郡や竹野郡などに広大な所領を持ち、筑後十五城の一つに数えられました。南北朝時代には南朝方として重要な役割を果たしましたが、戦国時代に勢力を失い、その後は九州各地でその血脈を繋ぎました。

出自

筑後星野氏の祖は、嘉禄2年（1226年）に源頼朝の推挙で議奏となった徳大寺実定の子、星野胤実とされています。胤実は猫尾城主である黒木大蔵大輔源助能の猶子となり筑後へ下向しました。八女市黒木町に伝わる『黒木物語』には、胤実の母は後鳥羽院に仕えた待宵の小侍従であったと記されており、その伝承にちなんだ地名も残っています。また、公安3年（1279年）には、星野胤実が霊夢のお告げにより小室谷付近で金鉱を発見し、これが星野金山の始まりであるという言い伝えも存在します。

南北朝時代の活躍

南北朝時代、星野氏は菊池氏と共に南朝方として重要な地位を占めました。延元元年/建武3年（1336年）の多々良浜の合戦では、星野家能が菊池氏や阿蘇氏らと共に足利尊氏と戦いましたが、松浦党の裏切りにより敗北を喫しました。正平14年（1357年）には、菊池武光が懐良親王を奉じて少弐氏と戦った筑後川の戦いにおいて、星野忠実・鎮種・実世らも出陣し勝利に貢献、南朝の征西府が大宰府を掌握する上で大きく貢献しました。

文中元年/応安5年（1372年）以降、室町幕府の九州探題である今川貞世（了俊）の活躍により征西府は大宰府を失い、九州の南朝勢力は衰退しました。しかし、星野氏はその後も菊池氏、五条氏、黒木氏、草野氏らと共に、征西将軍宮良成親王を擁して北朝勢力と戦い続けました。文中3年（1374年）には、生葉荘に攻め入った今川軍を撃退するなどの活躍を見せています。

戦国時代の動乱

戦国時代に入ると、星野氏は筑後十五城と呼ばれる有力国人領主の一角として、大友氏の傘下で勢力を維持しました。しかし、大内氏に通じるなど、独立の動きを見せることもありました。

星野重泰の最期

星野重泰は大友氏に従属しなかったため、大友義長は妙見山城を包囲しました。難攻不落の妙見山城に対し、大友氏は竹尾新左衛門を送り込み、重泰を暗殺させることに成功しました。

星野親忠の抵抗

大友義鑑は、自立の姿勢を崩さない星野親忠を生葉城に攻めますが、攻略できませんでした。その後、幕府の命を受け九州の兵を募り再び星野氏を攻めますが、親忠は城を脱出し越後へ落ち延びたとされています。

星野吉実・鑑泰の時代

星野吉実は、龍造寺隆信が黒木氏の所領に侵攻した際、黒木氏に味方し抗戦しました。吉実の嫡男である親忠は、大内義隆・毛利元就の連合軍と戦い討死。蒲池氏から養子に入った星野鑑泰は、大友氏に従い各地を転戦、最終的には肥後国勝山で討死しました。

立花山城の戦いとその後

天正14年（1586年）の立花山城の戦いにおいて、星野鎮胤とその弟鎮元は、島津軍の殿を務め討死しました。その後、鎮胤の子である長虎丸（鎮之）と熊虎丸は、鍋島氏の家臣となり、小城藩士として存続しました。

近代・現代への影響

星野氏の血を引く人々は、近代以降も様々な分野で活躍しています。久留米高等女学校などの設立に貢献した星野フサ、衆議院議員や小千谷市市長を務めた星野行男、新潟県議会議長を務めた星野伊佐夫などがその例です。また、女優の黒木瞳は、星野家の重臣を務めた樋口家の子孫です。白壁の街並みで知られるうきは市の筑後吉井は、星野氏の城下町が移動して形成された町です。福岡市博多区吉塚の地名は、立花山城の戦いで戦死した星野鎮胤・鎮元兄弟を祀る吉塚地蔵尊に由来します。

関連作品

星野氏を題材とした小説も存在します。北方謙三の『武王の門』や赤神諒の『大友二階崩れ』などがその例です。

まとめ

筑後星野氏は、鎌倉時代から戦国時代にかけて筑後国で勢力を誇った国人領主です。南北朝時代の南朝方としての活躍や、戦国時代の動乱の中で見せた抵抗は、その名を歴史に刻んでいます。その血脈は現代にも受け継がれ、様々な分野で活躍する人々を輩出しています。

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