東ローマ・サーサーン戦争 (602年-628年)

東ローマ・サーサーン戦争（602年 - 628年）：古代最後の激戦

東ローマ・サーサーン戦争（602年 - 628年）は、東ローマ帝国（ビザンツ帝国）とサーサーン朝ペルシアの間で繰り広げられた、長きにわたるローマ・ペルシア戦争の最終章であり、最大規模の戦いでした。「古代最後の激戦」とも呼ばれるこの戦争は、中東、エーゲ海、そして東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルを舞台に展開され、両帝国に深刻な影響を与え、その後の歴史を大きく左右しました。

戦争の背景

以前の東ローマ・サーサーン戦争（572年 - 591年）は、サーサーン朝の内乱を背景に、東ローマ帝国がホスロー2世の復位を支援したことで終結しました。しかし、602年に東ローマ皇帝マウリキウスがフォカスによって簒奪され処刑されると、ホスロー2世は「恩人マウリキウスの復讐」を大義名分に掲げ、東ローマ帝国への侵攻を開始しました。

マウリキウス帝の時代、東ローマ帝国は国庫に余裕がありましたが、後継者たちが軍事行動を重ねた結果、財政は悪化しました。マウリキウス帝は財政再建のため軍人の給与を削減し、これが反乱を招きました。602年の反乱では、兵士たちがフォカスを皇帝に推戴し、マウリキウス帝は処刑されました。この混乱に乗じて、サーサーン朝は東ローマ帝国への侵攻を開始したのです。

戦争の経過

602年から622年までの間、サーサーン朝軍は連戦連勝を重ね、レバント地方、エジプト、エーゲ海の島々、そしてアナトリアの一部を占領しました。東ローマ帝国では、フォカスがヘラクレイオスによって打倒され、新たな皇帝として即位しましたが、戦況は依然としてサーサーン朝に有利でした。

しかし、622年から626年にかけて、ヘラクレイオスは軍事作戦を展開し、サーサーン朝軍を徐々に押し戻しました。626年には、サーサーン朝軍はアヴァール人やスラヴ人と同盟を結び、コンスタンティノープルを包囲しましたが、東ローマ帝国の抵抗により失敗に終わりました。627年、ヘラクレイオスは突厥（西突厥）と同盟を結び、第三次ペルソ・テュルク戦争を引き起こしました。同年のニネヴェの戦いでサーサーン朝軍を破ると、628年にはホスロー2世が家臣によって廃位され、新たに即位したカワード2世は東ローマ帝国との和平を求めました。その結果、両国は戦争前の状態に戻すことで合意し、ここに戦争は終結しました。

戦争の影響

東ローマ・サーサーン戦争は、両帝国に甚大な被害をもたらしました。人的・物的資源を使い果たした両国は、630年代に台頭したイスラム帝国の侵攻に対して抵抗する力を失っていました。7世紀のうちに、イスラム軍はレバント、メソポタミア、ペルシア、コーカサス、エジプト、北アフリカなどの広大な地域を征服しました。サーサーン朝は崩壊し、東ローマ帝国も領土と権威を大きく失墜させました。東ローマ帝国はその後も、近東の支配権をめぐってイスラム諸王国と長きにわたり争うことになりました。

戦争の教訓

東ローマ・サーサーン戦争は、古代世界の終焉と中世世界の幕開けを告げる出来事でした。両帝国の疲弊は、新たな勢力の台頭を招き、その後の世界の歴史を大きく変えました。この戦争は、大国間の争いがもたらす悲劇と、それが周辺地域に及ぼす影響を私たちに教えてくれます。

その他の重要なポイント

聖遺物の喪失： 614年のエルサレム占領時、聖墳墓教会が焼かれ、聖十字架などの聖遺物がサーサーン朝の首都クテシフォンに持ち去られました。
エジプトの喪失： 東ローマ帝国の穀倉地帯であったエジプトを失ったことは、コンスタンティノープルにとって大きな打撃でした。
アヴァール人の脅威： 東ローマ帝国は、サーサーン朝との戦いの最中に、アヴァール人の侵攻にも対処しなければなりませんでした。
ビザンツ・突厥同盟： ヘラクレイオスは突厥と同盟を結び、サーサーン朝を挟撃しました。
* ニネヴェの戦い： ヘラクレイオスがサーサーン朝軍を破ったニネヴェの戦いは、戦争の転換点となりました。

この戦争は、古代末期における東ローマ帝国とサーサーン朝の盛衰、そしてその後のイスラム帝国の台頭を理解する上で、非常に重要な出来事と言えるでしょう。

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