東亜同文書院大学の人物一覧

東亜同文書院大学に連なる人々

かつて中国大陸に存在した東亜同文書院大学（旧制）は、独自の教育を通じて多数の人材を輩出しました。この記事では、この学び舎で教鞭を執った人々、そして巣立っていった卒業生の中から、特に各界で顕著な功績を残した人物たちを紹介します。

教育と研究に携わった面々

東亜同文書院大学には、多様な分野の専門家が教職員として集いました。初代教頭兼監督を務めた菊池謙二郎は、後に第二高等学校校長も務めた教育者です。

外交官として活躍した清水董三（12期生）は、母校で中国語を教えた後に外務省に入り、翻訳官や中華民国公使などを歴任しました。銀行家の大平賢作は、商務科教授を経て住友銀行会長となりました。また、実業家の下田文一は、教授から転じて南洋拓殖社長を務めました。経営学者の戸田義郎は、教授を経て神戸大学学長に就任しています。

商業学を教えた村井倉松は、外交官としてシャム公使を務めた後、政治家として八戸市長となりました。経済学者の宮下忠雄は、教授を経て神戸大学名誉教授として学術界に貢献しています。

各界で活躍した卒業生（OB）

東亜同文書院大学の卒業生は、その学びを活かして国内外の様々な分野でリーダーシップを発揮しました。

政界

国会議員となった人物も少なくありません。小谷節夫（5期生）や吉田正（15期生）、斉藤正身（20期生）、中西功（29期生）、福岡日出麿（29期生中退）、田代由紀男（35期生）、神谷信之助（42期生）らが衆議院議員や参議院議員を務めました。特に武藤嘉文（46期専門部中退）は、大学を中退して京都大学に進学後、通商産業大臣や外務大臣などを歴任した著名な政治家です。

官界

外交官を多数輩出したことは、東亜同文書院大学の大きな特徴の一つです。若杉要（3期生）はニューヨーク総領事として日米交渉に関わり、『米国共産党調書』を作成しました。石射猪太郎（5期生）は上海総領事やブラジル大使などを歴任し、『外交官の一生』を著しています。山本熊一（9期生）は日米開戦時の外務省北米局長や大東亜省事務次官などを務めました。

また、海軍大佐となった檜貝嚢治（24期生中退）や、満鉄社員から陸軍大尉、山梨県副知事を務め、満州国皇族を救出したことで知られる田中徹雄（35期生）もいます。卒業後、東北帝国大学を経て外交官となった岡田晃（36期生）は、駐香港総領事や駐ブルガリア大使などを歴任しました。小崎昌業（42期生）もモンゴル大使などを務めた外交官です。

財界

経済界においても多くの実業家を輩出しました。大倉邦彦（3期生）は大倉洋紙店社長を務め、大倉精神文化研究所を設立しました。原吉平（18期生）はユニチカ会長や日本貿易振興会（ジェトロ）理事長を歴任しました。坂口幸雄（21期生）は日清製油会長を、福田克美（32期生）は日本碍子会長を務めています。

研究者・学者

学術分野でも活躍した卒業生は多くいます。鈴木択郎（15期生）は、愛知大学で中国語教育・研究に従事し、『中日大辞典』の刊行に尽力しました。病弱のため中退し東京外語に移った魚返善雄（26期中退）は、東洋大学文学部長などを務め、中国語・中国文学研究で知られています。尾崎雄二郎（44期生）は京都大学名誉教授として中国語音韻研究に貢献しました。1944年に入学した市川信愛は、商学者として華僑論を研究しました。予科で学び戦後に上海外国語大学で日本語教育に携わった王宏（1944年予科入学）も特筆されるでしょう。

文学・マスコミ・その他

文学界からは、満鉄調査部を経て満州国の文芸界で活躍した山口慎一（25期生）や、大学閉学により中退し、芥川賞を受賞した作家の大城立裕（44期予科中退）がいます。

マスコミ界では、田中香苗（25期生）が毎日新聞社社長を務めました。伊藤喜久蔵（40期生）は中日新聞論説委員としてボーン国際記者賞を受賞しています。那谷敏郎（42期生）は朝日新聞出版局で編集に携わり、歴史関連の著書も刊行しています。山西由之（43期生）は元TBS社長です。毎日新聞を経て日本大学教授などを務めた江頭数馬（44期生）は、『燕山夜話』解説で菊池寛賞を受賞しました。

この他、”阿片王”と呼ばれた実業家・ジャーナリストの里見甫（13期生）、日本公認会計士協会の初代副会長となった下地玄信（13期生）、満州で伝道した牧師の福井二郎（17期生）など、多様な分野で個性的な足跡を残した人々がいます。

東亜同文書院大学は、激動の時代に多くの有為な人材を育成し、その卒業生たちは各界の発展に寄与しました。同窓会組織である滬友会は、現在は愛知大学同窓会に合流しています。

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