松山運転所

松山運転所（まつやまうんてんしょ）は、愛媛県伊予市に位置する四国旅客鉄道（JR四国）の重要な鉄道施設です。この運転所は、車両の保守・点検・留置といった車両基地としての役割に加え、列車を運転する運転士や列車に乗務する車掌が所属する乗務員基地としての機能も併せ持っています。

移転の背景と経緯

かつて松山運転所はJR松山駅に隣接していましたが、JR四国や自治体が進める松山駅周辺の高架化事業に伴い、移転が計画されました。この高架化事業は2009年に着手され、当初計画からは遅れたものの、2024年 9月 29日に完成しています。運転所自体は、高架化に先立つ2020年 3月14日に、予讃線の北伊予駅と伊予横田駅間に新設された南伊予駅のすぐ隣接地へ移転しました。これにより、現代的な設備を備えた新たな車両・乗務員基地として運用されています。

所属車両の概要

2023年4月1日現在、松山運転所には様々な形式の車両が配置されています。車両の所属を示す表記は、国鉄時代に製造された車両には「四マツ」（四＝JR四国、マツ＝松山の電報略号）、JR移行後に製造された気動車には「松」（＝松山）が用いられます。電車には特定の所属表記はありません。特筆すべき点として、2016年 3月以降、普通列車として運用される当所の所属車両には、トイレが設置されている車両が一つもありません。

電車

8000系電車: 特急「しおかぜ」「いしづち」の主力車両の一つです。5両編成6本と3両編成5本の計45両が所属しています。これらのうち一部編成は「アンパンマン列車」として特別な装飾が施されています。予備編成を含め、主に岡山・高松方面への特急列車として運用されます。
8600系電車: こちらも特急「しおかぜ」「いしづち」を中心に運用される新型特急形電車です。3両編成3本と2両編成4本の計17両が配置されています。柔軟な編成組成が可能で、通常の7両編成のほか、早朝・深夜帯や多客時には増結された編成でも運用されます。
7000系電車: 予讃線（高松〜伊予市間）や土讃線（多度津〜琴平間）の普通列車として広く利用されています。両運転台の7000形と片運転台の7100形があり、合計20両が在籍しています。

気動車

2000系・N2000系気動車: 主に特急「宇和海」（松山〜宇和島間）で運用される車両です。改良型のN2000系も含め、20両が配置されています。N2000系は高松運転所からの転入により、現在は全て松山運転所に集約されました。一部には「アンパンマン列車」や「サイクルルームつき車両」といった特別な車両も含まれます。繁忙期には高知運転所に貸し出され、特急「あしずり」「しまんと」の運用に入ることもあります。
キハ185系気動車: 普通列車仕様（3100番台）と観光列車「伊予灘ものがたり」仕様の車両が配置されています。普通列車用は予讃線（松山〜宇和島間）や内子線で主に2両編成で運用されます。「伊予灘ものがたり」は本系列を改造した車両で運行されており、特別な内装や外装が特徴です。
キハ54形気動車: 0番台の全12両が当運転所に集結しており、新製配置以来約25年ぶりに再び全車が松山に戻った経緯を持ちます。予讃線（松山〜宇和島間）、内子線、予土線の普通列車で活躍しています。
キハ32形気動車: 16両が配置されており、キハ54形と同様に予讃線や内子線、予土線の普通列車で運用されます。ただし、勾配区間における安定運行のため、予讃線の八幡浜〜宇和島間では通常キハ54形と連結して運転されています。また、試験的に取り付けられた排障器が後に改良されて全車両に装備されました。

貨車

トラ45000形貨車: 1両（トラ152462）が配置されており、「しまんトロッコ」などの特別なトロッコ列車に使用されています。

過去の配置車両

松山運転所には、かつて様々な形式の車両が所属していました。代表的なものとしては、老朽化やアスベスト問題により2008年度までに運用を終了・廃車となったキハ58形・キハ65形気動車があります。一部は現在、四国鉄道文化館で保存されています。また、キハ47形気動車も普通列車用として配置されていましたが、他の運転所への転属や廃車が進みました。臨時の観光列車「伊予灘ものがたり」として運用されたキロ47形も、現在のキハ185系に置き換えられるまで当所に所属していました。さらに遡ると、蒸気機関車やディーゼル機関車（DD13形、DE10形など）もこの地に配置されていた歴史があります。

沿革

1927年 4月：松山機関庫として開設。
1936年 9月：松山機関区に改称。
1946年 7月：松山検車区（後の客貨車区）が設置される。
1961年 1月：松山機関区と松山客貨車区が統合され、松山気動車区が発足。
1987年 4月1日：国鉄分割民営化に伴い、四国旅客鉄道に移管される。
1989年 4月1日：松山車掌区と統合され、松山運転所となる。
1990年 11月：2000系気動車の配置が始まる。
1993年 3月：8000系電車の配置が始まる。
* 2020年 3月14日：南伊予駅付近の新施設へ移転する。

松山運転所は、四国における鉄道輸送、特に愛媛県を中心としたエリアの運行を支える重要な拠点であり続けています。

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