林佳龍

林佳龍（リン・カリュウ）とは

林佳龍（リン・カリュウ、1964年2月13日 - ）は、台湾（中華民国）の政治家であり、民主進歩党（民進党）に所属しています。彼は党職員、立法委員（国会議員）、台中市長、交通部長（運輸大臣）といった要職を歴任し、台湾の政治において重要な役割を果たしてきました。台北市万華区出身で、本籍は雲林県麦寮郷です。

家庭環境と生い立ち

林佳龍の父親は雲林県麦寮郷出身の裁縫師で、職を求めて台北市艋舺に移り住みました。母親は彰化県鹿港鎮の出身です。妻の廖婉如は、上場企業である奇美電子の元会長廖錦祥の娘であり、奇美実業の創業者である許文龍の姪にあたります。

学歴と学生時代

林佳龍は、台北市立南門国民小学、台北市立南門国民中学、台北市立建国高級中学を経て、国立台湾大学政治学部を卒業し、修士号を取得しました。その後、アメリカのイェール大学で人文哲学修士、政治学修士、政治学博士号を取得しました。

イェール大学では、自由主義学者の胡佛に師事し、学生運動にも積極的に参加しました。彼は「大陸問題研究社」のサークル長を務め、中国大陸における民主化運動を支持しました。また、台大学長に学内改革を要求し、拒否された際には中華民国立法院へ請願を試みました。学生時代には、学生会会長選挙で民進党議員となる顔萬進と争いましたが、敗れています。

1990年には、学生運動「野百合学運」の共同発起人となり、台湾の民主化運動に貢献しました。1991年にはフルブライト奨学金を得てイェール大学に留学し、政治学者ホアン・リンスのもとで研究に励みました。また、日本の国連大学高等研究所（東京）で研究員として、アジア太平洋の安全保障と中国の発展について研究しました。

1995年には、アメリカのフォード財団の依頼で中国の主要都市を訪問し、地方自治と選挙制度についての調査を行いました。台湾帰国後は、国立中正大学政治学部と国立台中技術学院で助教授を務めました。

政治経歴

2000年、林佳龍は国家安全会議の諮問委員に就任し、民進党政府の組織運営や両岸関係に関する業務に携わりました。また、台湾初のシンクタンクである台湾智庫の設立に協力し、民進党の政策立案に貢献しました。2003年には行政院報道官に、2004年には行政院新聞局局長に就任しました。2019年には交通部長に就任しましたが、2021年の北廻線太魯閣号脱線事故の責任を取り辞任しました。

行政院新聞局局長としての実績

行政院新聞局局長時代には、メディアの質の向上を目指し、公共放送の推進に取り組みました。台湾公共放送集団に中華電視公司を加入させ、有線テレビ放送の周波数割り当てを推進しました。また、児童青少年保護のためのインターネットコンテンツの年齢制限制度や、先住民の言語教育のための客家電視台を設立しました。

立法委員としての実績

立法委員時代には、公民監督国会聯盟による議員評価で、教育文化委員会でトップの評価を複数回獲得しました。また、本会議への出席率も非常に高く、熱心な活動が評価されました。

主な実績として、台中国家歌劇院の国家級ホールへの格上げ、台中都市圏を循環する「大台中山手線」構想の提唱、国立中興大学などの大学合併を推進しました。さらに、公立小中学校での実験教育や在宅学習を認める「実験教育三法」を成立させ、歯科医の地位向上を図るための組織改革を支持しました。また、「湿地保育法」を成立させ、轢き逃げ事故の厳罰化法案を提出するなど、幅広い分野で成果を上げました。台湾人留学生殺人事件を受け、海外での犯罪被害者への補償を可能にする「改正犯罪被害者保護法」の制定にも尽力しました。

台中市長としての実績

2014年、林佳龍は台中市長に当選し、1期4年を務めました。市長時代には、社会的弱者の食育普及のための「フードバンク自治条例」制定や、「托育一條龍」政策による幼稚園の無償化・補助金制度を導入しました。市立図書館の開館時間延長や、自動車・二輪車窃盗事件数の大幅減少、欠食児童へのミールクーポン配布など、社会福祉の向上に努めました。また、「人口10万人当たり犯罪発生率」で6大都市中最小件数を記録するなど、治安改善にも成果を上げました。

交通面では、「大台中一二三計画」や「Mr.B&B交通網」による複合公共交通網の整備を推進しました。任期中に500kmの舗装・歩道改良を行い、交通事故件数と死傷者数を大幅に減少させました。また、学生向けスクールバスの導入や、捷運緑線の延伸、台中BRT藍線の廃止と捷運藍線計画の推進など、公共交通網の整備に力を注ぎました。さらに、台中空港の国際化を推進し、正式名称を「台中国際空港」に変更しました。台中線の市内高架化を完成させ、市内の交通インフラを大きく改善しました。

文化・教育面では、国家歌劇院の国家級ホールへの昇格を実現し、東アジアユースゲームズの2019年大会の招致に成功しました。

都市外交・経済面では、日本や欧州への視察や企業誘致を精力的に行い、三井アウトレットパークの誘致や大分県との定期チャーター便就航、中部広域観光推進協議会との観光友好交流協定締結など、国際交流を活発化させました。また、オランダのアールスメール花市場での台中市産オンシジュームの取り扱いに関する覚書を締結するなど、海外市場の開拓にも尽力しました。

その他にも、食の安全を推進するための評価システムや、登山者の救助費用請求に関する条例改正を行うなど、幅広い分野で政策を推進しました。

市長任期中の騒動

BRTの廃止や台湾タワーの中止、捷運建設現場での事故など、市長任期中には様々な騒動が発生しました。また、市議会との予算審議や、国家歌劇院の閉鎖、ランタンフェスティバルでのトラブルなど、様々な問題に直面しました。

逸話・エピソード

学生運動の経験から、2014年のひまわり[[学生運動]]も側面支援しました。時代力量の洪慈庸とは良好な関係を築き、互いに選挙協力を行いました。また、部下の結婚式にも参列するなど、人柄の良さが伺えます。2015年には、教科書改訂反対運動を支持する一方で、市議会で生徒を「腕白な子供」と表現しようとして言い間違えるハプニングがありました。

プロ野球の賭けで負けた際には、相手チームのユニフォームを着用するなど、ユーモアのある一面も持ち合わせています。また、ネット掲示板の意見を参考に市のロゴマークを変更するなど、市民の意見を積極的に取り入れる姿勢を示しました。

日本との関係

林佳龍は日本統治時代の文化遺産の保存に積極的で、親台派の国会議員や首長との会談も頻繁に行っています。また、市内の小学校卒業生と日本統治時代の教員との再会を支援し、地震発生後には被災地への哀悼の意を表明し、寄付を行うなど、日本との友好関係を重視しています。

中国、アメリカとの関係

中国とは、研究員時代に交流があったものの、日台関係への介入には否定的です。アメリカとは、ドナルド・トランプの大統領就任式典に民進党代表団の一員として参加するなど、良好な関係を築いています。

選挙記録

2005年の台中市長選挙では敗北しましたが、2012年の立法委員選挙で当選し、2014年の台中市長選挙で当選しました。2018年の台中市長選挙では再選を逃しました。

著書一覧

林佳龍は多くの学術論文や著書を発表しており、政治学、民主化、都市計画などの分野で幅広い知識を有しています。主な著書には、『未来中国：退化的極権主義』、『做対的事，把事做対』、『城市夢想家』などがあります。

まとめ

林佳龍は、学生運動から政治の世界に入り、立法委員、台中市長、交通部長を歴任し、台湾の政治において重要な役割を果たしてきた人物です。彼は幅広い分野で政策を推進し、台湾の民主化と発展に大きく貢献しました。その政治キャリアと多岐にわたる業績は、台湾の政治史において重要な位置を占めています。

もう一度検索