林秀貞

林秀貞：織田信長を支えた智将の生涯

林秀貞は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将であり、織田氏に仕えた重臣です。通称は新五郎、後に佐渡守を名乗りました。父は林通安、弟に林通具、子に林通政と林一吉がいます。長らく「通勝」と誤記されてきましたが、史料『言継卿記』などから「秀貞」が正しいとされています。これは、同時代の松永久秀の家臣に同名の人物がいたためと考えられています。しかし、一族の通字が「通」や「勝」であることから、元は「通勝」で、後に織田信秀の偏諱を受けて「秀貞」に改名した可能性も指摘されています。

織田信秀への仕えと信長後見役

林氏は尾張国春日井郡沖村（現在の愛知県北名古屋市沖村）を本貫とする土豪でした。秀貞は父と共に織田信秀に仕え、優れた政治力と外交力で頭角を現し、軍団の統率者として信秀からの厚い信頼を得て重臣となりました。

織田信長が那古野城を拠点とした際には、平手政秀と共に信長付きの家臣として仕え、信長の元服にも介添え役を務めるなど、まさに信長の後見役として重要な役割を担いました。しかし、信長の型破りな行動には頭を悩ませることもあったようです。

織田信勝擁立と稲生の戦い

織田信秀の死後、平手政秀も亡くなると、秀貞は信長の弟である織田信勝（信行）の擁立を画策するようになりました。信長が清洲城を掌握すると、秀貞は那古野城の留守居役を務めました。しかし、信長の勢力拡大にも不安を感じていた秀貞は、弘治2年（1556年）、柴田勝家や弟・通具らと共に信勝を擁立して信長に反旗を翻しました。これが稲生の戦いですが、秀貞自身は戦に参加せず、その動向は不明です。結果的に信長に敗れ、弟の通具は戦死しました。しかし、その後は信長に許され、宿老の地位を保ちました。

『信長公記』には、稲生の戦い前に信長が単身那古野城を訪れた際、通具が信長暗殺を主張したのに対し、秀貞が反対したという逸話が残されています。

織田信長の筆頭家老として

稲生の戦い後、秀貞は信長から信頼され続けました。その手腕は、主に政治と外交面に見られました。秀貞は行政官として優れた能力を発揮し、清洲同盟の立会人を務めるなど、織田家の家宰として重要な役割を果たしました。信長が発給した政治文書にも常に署名しており、信長の上洛時には、義昭の重臣と交わした起請文にトップで署名しています。また、『言継卿記』によれば、山科言継が信長に謁見する際には、秀貞が奏者として常に同行していたとされます。

武将としての活躍は少ないものの、播磨神吉城攻防戦などに出陣した記録も残っています。おそらくは軍監や後詰などの役割を担っていたと考えられます。

織田信忠への仕えと突然の追放

天正4年（1576年）、信長が家督を信忠に譲ると、秀貞は信忠付きの家老となりました。所領の面では他の重臣に劣りましたが、筆頭家老としての地位は維持し、信長の茶会にも招かれるなど、信長からの信頼は厚かったようです。安土城天主完成時には、村井貞勝と共に天主の見物も許されています。

しかし、天正8年（1580年）8月、突如として安藤守就、丹羽氏勝と共に織田家から追放されました。信長は、秀貞がかつて信勝を擁立したことを理由に挙げましたが、24年も前の出来事であり、その真意は不明です。老齢による能力低下や、信長包囲網時の謀反疑惑なども囁かれていますが、いずれも確証はありません。

追放後と最期

追放された秀貞は、京都に移り住み、南部勝利と改名したとも、安芸国に移ったとも伝えられています。高齢であった秀貞は、追放のショックが大きく、追放から2ヶ月後の天正8年10月15日に死去したとされます。享年は68歳と伝えられています。現在も広島市内に墓石が残されています。子の林一吉は、父と共に追放され、後に山内一豊に仕え、子孫は土佐藩で重臣となりました。

ドラマにおける林秀貞

数々の時代劇で林秀貞は描かれてきましたが、多くの作品では「林通勝」という名前で登場しています。綿引勝彦、宇津井健、高松英郎、山本晋也、苅谷俊介といった俳優が演じています。

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