梅北氏

梅北氏（うめきたし）

梅北氏は、日本の氏族の一つであり、その歴史は平安時代にまで遡ります。大伴氏の後裔である伴氏が、薩摩国に下向したことが始まりとされています。

起源

梅北氏の祖は、伴兼行とされています。兼行は、冷泉天皇の時代（968年）に河内守として大宰府に赴任し、薩摩掾を兼ねて薩摩国に下向しました。彼は、鹿児島郡神敷村（現在の鹿児島市伊敷）に館を建て、薩摩掾として政務を執りました。この館跡は「伴掾御館」として現在も残っています。また、一説には、兼行は薩摩国総追捕使という軍事・警察的な役割も担っていたとされています。

その後、兼行の子孫である伴兼貞が、1036年に大隅国弁済使となり、高山に拠点を移して肝属郡を領しました。弁済使とは、下司とも呼ばれ、荘園の管理事務を行う役職です。

兼貞は、都城盆地に島津荘を開拓した平季基の娘、または平季基の子・伊佐平次兼輔の娘を娶り、5人の子をもうけました。兼貞は、長男の兼俊に肝付宗家を継がせ、次男の兼任を萩原に、三男の俊貞を安楽に、四男の行俊を出水に、五男の兼高を梅北にそれぞれ配置し、宗家を支える存在としました。兼貞自身は梅北城に在り、梅北地方の荘事を掌り、梅北氏を名乗るようになりました。また、神柱神社と八幡神社の斎宮介として、祭祀のことも司りました。

南北朝時代～戦国時代

南北朝時代、肝付宗家は南朝方に与して島津氏と対立しました。梅北氏も南朝方に味方したため、足利尊氏が西下した際に梅北城は尊氏方の畠山直顕の手に渡りましたが、その後も勢力を維持しました。

戦国時代に入ると、薩摩の戦国大名である島津氏は、国衆を合戦で破り、その所領を家臣に与えるようになりました。梅北氏も島津氏の家臣となり、梅北国兼は島津氏の有力家臣として活躍しました。1580年には、梅北国兼は湯尾地頭となりました。

梅北国兼

梅北国兼は、宮内左衛門尉を称し、島津氏の有力家臣として活躍しました。彼は、1554年の岩剣城の戦いをはじめとする数々の合戦で功績を上げ、大隅帖佐郷山田の地頭に任じられました。帖佐郷山田時代には、北山地区の玉城山（為朝城）を居城としました。

また、島津氏の北征では水軍を担当し、大友氏との戦いでは「御舟攻」を進言して武功を上げました。1580年には、薩摩国菱刈郡湯之尾の地頭（湯之尾城主）となりました。

梅北一揆

1592年、豊臣秀吉の命による文禄の役で、梅北国兼は朝鮮出兵のため肥前国平戸にいましたが、佐敷に留まり大規模な一揆を起こしました。国兼は、佐敷城を占拠し、近隣の国衆にも協力を呼びかけましたが、清正の部下による策略によって殺害され、一揆は3日で鎮圧されました。

一揆が失敗した要因として、共闘を呼びかけた古侍層が決起せず、逆に一揆を攻撃したことが挙げられます。国兼は「悪逆人」とされ、一族も処刑されました。

しかし、この一揆は秀吉の朝鮮出兵に対する抵抗運動として、また中世最後の国人一揆として位置づけられています。

乱の結果

この一揆により、梅北国兼の黒幕とされた島津歳久や、一揆に家臣が参加した阿蘇惟光などが処刑されるなど、多くの犠牲者が出ました。梅北国兼の妻は、秀吉への服従を拒んで火あぶりの刑に処せられました。その壮絶な最期は、宣教師ルイス・フロイスによって記録されています。

その後

梅北一揆は、豊臣政権の確立をより確実にする負の役割を果たしました。一揆後、梅北国兼は旧領の山田庄馬場に「神」として祀られ、現在も梅北神社が建立されています。梅北一族は、秀吉の死後に島津家に帰参し、その血は現代にも受け継がれています。

関連項目

梅北一揆
梅北国兼
平季基
島津荘
薩摩藩
神柱宮

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