楊洪

楊洪（よう こう）

楊洪は、中国後漢末期から三国時代の蜀漢に仕えた政治家で、字は季休、益州犍為郡武陽県の出身です。

経歴

当初は劉璋に仕え、各地の官吏を歴任しました。劉備が益州を平定した後、犍為太守となった李厳に功曹として仕えます。李厳が郡役所の移転を計画した際、楊洪は益州にとって重要な拠点であるとして強く反対しました。後に李厳の推薦により、蜀部従事に任命され、蜀郡の監察官として活躍しました。

劉備が漢中を巡って曹操と争った際には、兵の徴発について諸葛亮に意見を求められ、「漢中は益州の要であり、失えば益州も危うくなる」と進言しました。法正の後任として蜀郡太守を代行し、その職務を円滑に遂行したことから、正式に蜀郡太守に任命されました。その後、益州治中従事に転任しています。

夷陵の戦いの後、劉備が白帝城で危篤に陥り、諸葛亮が成都を離れていた際、漢嘉太守の黄元が反乱を起こしました。楊洪は留守を預かる太子劉禅に適切な助言を行い、陳曶と鄭綽に黄元を討伐させました。

建興元年（223年）には、関内侯に封じられ、再び蜀郡太守に任じられ、忠節将軍を兼任しました。その後、蜀郡太守のまま越騎校尉にも任じられています。

建興5年（227年）、諸葛亮が留府長史として張裔を任用しようとした際、楊洪は張裔の能力を認めつつも、その性格に難があると異議を唱え、向朗を推薦しました。かつて友人であった二人ですが、過去に楊洪が張裔の子の罪を特別に赦免しなかったことが原因で、張裔は楊洪を恨んでいたため、周囲は楊洪の行動に疑念を抱きました。しかし、後に張裔が岑述と対立し、諸葛亮に叱責されると、楊洪に私心がないことが明らかになりました。

建興6年（228年）、在任中に亡くなりました。

人物

『三国志』蜀書「楊洪伝」には、「若い頃は学問を好まなかったが、忠義・清廉・誠実・明晰な人物であり、公事を憂えること、正に自分の家を憂えるようであった」と記されています。また、「継母に孝行を尽くした」とも伝えられています。

楊洪は、何祗の才能を見抜き、取り立てました。何祗はすぐに楊洪と同格の太守にまで出世したため、人々は楊洪の人物眼と、彼を登用した諸葛亮を称賛しました。

楊洪は、蜀漢の安定と発展に大きく貢献した人物として、後世に語り継がれています。

参考文献

『三国志』蜀書「楊洪伝」
『華陽国志』校補図注巻七「劉後主志」
* 『三国職官表』(洪飴孫 撰、清・道光2年(1822年))

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