楊阜

楊阜（よう ふ）

楊阜（生没年不詳）は、後漢末期から三国時代の魏に仕えた武将、政治家です。字は義山（ぎざん）。涼州漢陽郡冀県（現在の甘粛省天水市）の人。その生涯は、故郷への忠誠と魏への献身に彩られています。

生涯

涼州での活躍

若い頃から、同郷の尹奉（いん ほう）や趙昂（ちょう こう）と共にその名を知られていました。曹操（そうそう）と袁紹（えんしょう）が覇権を争っていた頃、涼州の州牧であった韋端（い たん）の命により許都（きょと）へ赴き、安定郡（あんていぐん）の長史（ちょうし）に任命されます。帰還後、曹操の勝利を確信し、その事を周囲に伝えたとされています。

長史の職を辞した後、韋端が太僕（たいぼく）に任命され、その子の韋康（い こう）が涼州刺史（しし）となると、別駕（べつが）として再び仕えます。孝廉（こうれん）に推挙され、丞相府（じょうしょうふ）からの召喚も受けましたが、涼州側は上奏して彼を留め置き、参軍（さんぐん）としました。

涼州騒乱と復讐

潼関（どうかん）の戦いで曹操に敗れた馬超（ば ちょう）は、西方に逃れて勢力を盛り返し、再び侵攻を開始します。楊阜は曹操に対し、馬超への警戒を促しましたが、同時期に河間（かかん）で反乱が発生したため、曹操は兵を引いてしまいます。

その後、馬超は冀城（きじょう）を攻撃し、韋康や諸郡の太守らは籠城しますが、8ヶ月に及ぶ包囲の末、韋康は降伏を決意します。楊阜は涙を流して諫めますが聞き入れられず、韋康は馬超によって殺害されてしまいます。

復讐を誓った楊阜は、妻の葬儀を理由に一時帰郷し、姜叙（きょう じょ）ら同志を集め、馬超打倒の計画を練ります。そして212年、姜叙と共に挙兵し、冀城を奪還。しかし、この反乱で楊阜の一族7人が殺害され、自身も重傷を負います。

214年、夏侯淵（かこうえん）の援軍を得て馬超を撃退し、漢中（かんちゅう）へ追放。隴右（ろうゆう）平定の功績により、曹操から関内侯（かんないこう）に封じられようとしますが、固辞します。しかし、曹操の度重なる要請に応じ、最終的にはこれを受け入れました。

蜀との戦いと諫諍

215年、漢中討伐時に益州刺史（えきしゅうしし）に任じられ、帰還後は金城太守（きんじょうたいしゅ）、後に武都太守（ぶとたいしゅ）に任命されます。劉備（りゅうび）が統治する益州との国境に近い地域である事も考慮して、法の厳格な適用に拘らない統治を心がけました。

218年、劉備軍の張飛（ちょうひ）と馬超が武都に侵攻すると、曹操は曹洪（そうこう）を派遣してこれを撃退。曹洪が勝利の宴で女性に舞を披露させた際、楊阜は曹洪の不行跡を諫め、曹洪を恐縮させました。

その後、曹操は武都の住民を内地へ移住させようとしますが、楊阜の統治が信頼を得ていたため、多くの住民がこれに応じました。

曹丕（文帝）の時代には、その評判を聞いた曹丕が楊阜を召し出そうとしましたが、果たせぬまま急死。曹叡（明帝）の代になると中央に召され、城門校尉（じょうもんこうい）、将作大匠（しょうさくだいしょう）、少府（しょうふ）と昇進します。その間、曹叡に対して度重なる諫言を行い、その忠義の心は曹叡をも動かしました。

しかし、諫言が聞き入れられないこともあり、官を辞退しようとしたところ、その願いが叶わぬまま死去。家には財産を遺さなかったと伝えられています。

楊阜の生涯は、激動の時代にあって、故郷への愛と国への忠義を貫いた人物として、後世に語り継がれています。

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