武都郡

武都郡：中国史に名を刻む二つの郡

武都郡は、中国の歴史において、異なる時代と地域に二つの流れを持つ郡として知られています。一つは、前漢時代から北魏時代にかけて涼州に存在した武都郡。もう一つは、北魏時代から隋代にかけて岐州に存在した武都郡です。それぞれの歴史を紐解きます。

涼州系武都郡

前漢時代

武都郡は、前漢の元鼎6年（紀元前111年）に武帝によって設置され、涼州に属しました。当時の戸数は51376、人口は235561を数え、以下の9県を領していました。

武都県
上禄県
故道県
河池県
沮県
平楽道
嘉陵道
循成道
下辨道

この地域には、氐族、羌族、犍為族、牂牁族、越巂族といった多様な民族が居住しており、彼らの習俗は巴族や蜀族と共通する部分が多くありました。

新代

王莽が政権を握ると、郡県名が改名され、武都郡は楽平郡と名を改めました。それに伴い、領県名も以下のように変更されました。

武都県→循虜県
故道県→善治県
河池県→楽平亭
下辨道→楊徳県

後漢時代

後漢時代になると、武都郡の戸数は20102、人口は81728に減少しました。城の数は7つでした。

下辨県
武都県
上禄県
故道県
河池県
沮県
羌道県

西晋時代

西晋時代には、戸数は3000にまで減少し、以下の5県を統治しました。

下辨県
河池県
沮県
武都県
故道県

北魏時代

北魏時代には、武都郡は南秦州に属し、以下の4県を領しました。郡治は石門県に置かれました。

石門県（羌道城）
白水県
東平県
孔堤県

西魏～隋代

西魏時代には武州に設置され、戸数は10780、7県を統べました。

将利県（旧：石門県）
建威県（旧：白水県）
覆津県
盤堤県
長松県
曲水県
正西県

唐代

唐代の武徳元年（618年）には武州が設置され、将利、建威、覆津、盤堤の4県を領しました。貞観元年（627年）には建威県が廃止され、将利県が編入されました。天宝元年（742年）には武都郡と改称されましたが、乾元元年（758年）には再び武州に戻されました。

岐州武都郡

岐州武都郡は、北魏の太延5年（439年）に設置され、以下の3県を領しました。

平陽県
南田県
高車県

西魏の大統13年（547年）には洛邑県と改称され、北周は翔州を置きました。隋の大業3年（607年）には虢県となり、扶風郡に属しました。

まとめ

武都郡は、その歴史の中で、所属する州や領する県、名称を幾度となく変えながら、中国の地方行政の一翼を担ってきました。涼州系と岐州系の二つの流れがあり、それぞれの地域で独自の変遷を遂げたことが、武都郡の歴史を複雑かつ興味深いものにしています。

参考資料
『漢書』地理志下
『後漢書』郡国五
『晋書』地理志上
『魏書』志第七 地形二下
『隋書』志第二十四 地理上
* 『旧唐書』志第二十 地理三

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