毛公鼎

毛公鼎（もうこうてい）

毛公鼎は、紀元前9世紀頃の西周時代に製作された青銅器の鼎で、台湾国立故宮博物院に所蔵されています。翠玉白菜、肉形石と並び、故宮三宝の一つとして非常に有名であり、台湾の国宝にも指定されています。特筆すべきは、その内側に刻まれた497字という、現存する最長の金文です。

金文

毛公鼎の最大の特徴は、その内側に刻まれた497字の金文です。この金文は、西周王朝の中興の祖である宣王が、臣下の毛公瘖（もうこうあん）に与えた官職任命の辞と訓戒を記したものです。毛公瘖は、文王の子である毛叔鄭の子孫とされ、宣王による西周王朝の中興を支えた重要な人物でした。鼎自体は、高さ53.8cm、口径47.9cm、重さ34.5kgと、金文の長さに比べてそれほど大きくはありません。

伝来と受容

毛公鼎は、清の道光23年（1843年）に陝西省岐山県で発見されました。その後、陳介祺、端方、葉恭綽といった個人が所有した後、国共内戦中の1946年に中華民国中央博物院（現在の南京博物院）に収蔵されました。その後、台湾に移送される際に、故宮（紫禁城）の旧蔵品と共に台湾に渡りました。

毛公鼎が注目されるようになったのは、民国初期のことです。イギリス人記者のシンプソンが購入しようとした際に、国外流出を阻止しようとする世論が起こり、また、王国維や郭沫若らによる出土文字資料の研究が進んだことが大きな要因でした。

現在では、国立故宮博物院の主要な収蔵品として、翠玉白菜、肉形石と共に故宮三宝として知られています。また、散氏盤、㝬鐘と共に故宮三大青銅器にも数えられ、台湾の国宝としてその価値を高く評価されています。

関連項目

毛 (春秋)
金石学
中国の青銅器
礼器

脚注

参考文献

参考文献

家永真幸『国宝の政治史: 「中国」の故宮とパンダ』東京大学出版会、2017年。ISBN 978-4-13-026156-2。
家永真幸『「中華民国」国宝の政治史: 国境の創出と隠蔽をめぐる力学』東京大学、2015年。 NAID 500001492782。https://doi.org/10.15083/00072975。
佐藤信弥『周 理想化された古代王朝』中央公論新社〈中公新書〉、2016年。ISBN 978-4121023964。
* 竹内康浩 著「毛公鼎」、尾崎雄二郎; 竺沙雅章; 戸川芳郎 編『中国文化史大事典』大修館書店、2013年、1167頁。ISBN 9784469012842。

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