毛興

毛興（もう こう）

毛興は、五胡十六国時代の前秦に仕えた人物であり、氐族の出身です。彼の娘は前秦の君主、苻登の皇后となりました。

生涯

毛興は前秦において撫軍将軍に任じられ、380年には都督河秦二州諸軍事、鎮西将軍、河州刺史として枹罕の鎮守を命じられました。この時、河州には氐族3千戸が配置されています。

383年、苻堅が東晋征伐を大々的に行った淝水の戦いで前秦は大敗。これにより、前秦に服属していた諸部族が各地で反乱を起こし、関中も混乱に陥りました。このような状況下、前秦の皇族である苻登は任を離れ、毛興の治める枹罕に身を寄せました。苻登の兄である苻同成が毛興の参謀を務めていたことが縁となり、毛興は苻登を司馬に任じました。

毛興は苻登の才能を高く評価する一方で、その力量を畏怖し、重要な任務を任せることはありませんでした。384年、姚萇が前秦から離反し後秦を興すと、毛興は姚萇の弟である姚碩徳と長きにわたり対峙することになります。

385年、前秦の首都である長安が西燕の慕容沖によって陥落し、苻堅が姚萇に捕らえられ処刑されるという事態が発生しました。苻堅の死後、苻丕が晋陽で皇帝に即位すると、毛興は使者を派遣して共同で後秦を討つことを誓いました。苻丕はこれに喜び、毛興を車騎大将軍に任じ、開府儀同三司の特権を与え、河州牧に進位させました。

386年、毛興は前秦の益州牧であった王広と対立し、王広は隴西から兵を率いて枹罕を攻撃しました。毛興は衛平に兵を与えて王広の陣営を夜襲させ、これを打ち破りましたが、王広は秦州牧の王統に救援を求めました。毛興は籠城して対抗しましたが、枹罕の氐族たちは度重なる戦いに疲弊し、毛興を殺害しました。その後、彼らは衛平を盟主に立てましたが、最終的には苻登が取って代わることとなりました。

毛興は死に際し、苻同成に対し、後秦との戦いを成し遂げられなかったことを悔やみつつも、後事を苻登に託すよう言い残したとされています。彼は苻登が姚碩徳を滅ぼすであろうと予見し、苻同成に苻登に仕えるように指示しました。

参考文献

『晋書』巻114-115
『資治通鑑』巻104-106

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