姚碩徳

姚碩徳（よう せきとく）：後秦を支えた名将

姚碩徳（生没年不詳）は、五胡十六国時代の後秦に仕えた傑出した軍人です。彼は羌族の部族長である姚弋仲の子として生まれ、後秦の創始者である姚萇の同母弟にあたります。その軍事的才能と忠誠心により、後秦の西方における勢力拡大に大きく貢献しました。

生涯

386年、姚萇が安定に拠点を移すと、姚碩徳は隴上で自らの部族を率いて呼応し、挙兵しました。彼は征西将軍を自称し、冀城を拠点としました。一族の者を要衝に配置し、前秦の勢力に対抗しました。

同年7月、姚碩徳は姚萇の要請に応じて合流し、前秦の王統を攻撃しました。天水や略陽からの援軍も加わり、戦況は後秦側に有利に展開しました。同年9月には王統が降伏し、姚萇は姚碩徳を都督隴右諸軍事・征西将軍・秦州刺史・領護羌校尉に任じ、上邽に鎮守させました。

しかし、同年10月、前秦の苻登が秦州に侵攻し、姚萇自身が救援に向かいました。胡奴阜での戦いでは後秦軍は大敗を喫し、姚萇も重傷を負い上邽へ退却しました。その後は姚碩徳が残存兵力を指揮することとなりました。

387年4月、姚碩徳は後仇池の楊定に圧迫され、涇陽まで退却しました。苻纂と楊定との戦いでも大敗を喫しましたが、姚萇自らの救援により危機を脱しました。

389年8月、大界の戦いで前秦軍に大勝した姚萇は、姚碩徳を安定に鎮守させました。同年9月には、姚碩徳に秦州内の守将を選ばせ、防備を固めさせました。

391年5月、姚萇が馬頭原で苻登に敗れた後、再戦を挑もうとした際、姚碩徳は慎重な態度を求めました。しかし、姚萇は苻登の戦略の甘さを見抜き、再戦を決意。姚碩徳は軍を率いて苻登軍と激戦の末、これを打ち破りました。

392年3月、姚萇が病に倒れると、李潤を鎮守させました。393年12月に姚萇が亡くなり、姚興が後を継ぐと、姚碩徳は陰密に鎮守しました。周囲からは姚興に殺されることを危惧する声も上がりましたが、姚碩徳は姚興のもとへ赴き、丁重に迎えられました。

395年、姚興が皇帝に即位すると、姚碩徳は隴西王に封じられました。396年には、後秦に背いた姜乳を討伐し、降伏させました。その後も、秦州刺史・領護東羌校尉として上邽に鎮しました。

強煕と権千成が反乱を起こし、上邽を包囲しましたが、姚碩徳はこれを撃破しました。その後も転戦し、洛城で金豹を破るなどの戦功を挙げました。

399年、姚興が天王を称すると、姚碩徳は王爵を辞退しましたが許されず、最終的に鎮西大将軍・隴西公に任じられました。

400年5月、姚碩徳は征西大将軍として5万の兵を率いて西秦に侵攻しました。同年7月には、補給路を断たれ危機に陥りましたが、姚興自らの援軍により西秦軍を打ち破りました。この戦いの後、西秦は一時的に滅亡しました。

401年5月、姚碩徳は焦朗の進言を受け、姚興に後涼討伐を進言し、6万の兵を率いて後涼に侵攻しました。かつて降伏した乞伏乾帰も兵を率いて参戦し、後涼を圧倒しました。

同年7月、後秦軍は後涼の都である姑臧まで進軍し、連戦連勝。西涼の李暠、南涼の禿髪利鹿孤、北涼の沮渠蒙遜らが後秦に服属を申し出ました。同年9月、後涼王呂隆は降伏し、姚碩徳は鳩摩羅什を伴って常安に帰還しました。

405年6月、姚碩徳は3万の兵を率いて後仇池討伐に出陣しました。同年7月には楊盛を降伏させ、帰還しました。

姚碩徳の没年は不明ですが、死後、太宰の位を贈られ、恭王と諡されました。412年には、姚萇の廟に合祀されました。

人物・逸話

姚碩徳が率いた私兵集団は「後秦最強の部曲」と称され、その精強さを誇りました。姚萇の死後、周囲が姚興に猜疑されることを恐れ、秦州に拠ることを勧めましたが、姚碩徳はこれを一蹴し、姚興への忠誠を示しました。

姚興は姚碩徳を深く信頼し、特別な礼遇を尽くしました。また、姚碩徳の権威が大きいことから、彼が小人に惑わされることを恐れ、清廉な人物を補佐につけました。姚碩徳の軍は軍令が厳格で、民衆からの信頼も厚く、彼の死後も長く語り継がれました。

家庭

父：姚弋仲
兄弟：姚益、姚若、姚襄、姚萇、姚緒、姚尹買、姚旻、姚晃、姚紹、姚靖

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