王統

王統（おう とう）

王統は、五胡十六国時代の前秦から後秦にかけて活躍した武将です。彼の生涯を紐解きます。

生涯

王統は、秦州休屠（きゅうしゅうきゅうと、匈奴の一族）の出身で、父は王擢（おうたく）、弟は王広（おうこう）です。父の王擢は隴西一帯の実力者であり、その影響力は各王朝からも重んじられていました。

354年、王擢は身の危険を感じ、前涼から前秦へ亡命し、尚書として仕えました。王統も父に従い前秦に仕官し、359年には扶風内史に任じられます。

371年、王統は益州刺史に任命され、左衛将軍苻雅（ふが）に従って仇池（きゅうち）討伐に参加。歩騎7万を率いて仇池を滅ぼす功績を挙げました。

同年12月、隴西で勢力を誇っていた乞伏司繁（きつふくしはん）を攻撃。苑川（現在の甘粛省蘭州市楡中県）で3万騎を率いて迎撃してきた乞伏司繁に対し、王統は密かに度堅山（現在の甘粛省白銀市靖遠県）を攻撃。これにより、乞伏司繁の部落5万余が降伏し、戦わずして敵軍を壊滅させることに成功。帰る場所を失った乞伏司繁は、王統に降伏しました。

373年、王統は秘書監朱肜（しゅゆう）と共に2万の兵を率いて漢川から、前禁将軍毛当（もうとう）・鷹揚将軍徐成（じょせい）は3万の兵を率いて剣門から梁州・益州を攻略。東晋の梁州刺史楊亮（ようりょう）率いる軍勢と青谷で激突し、これを打ち破りました。楊亮は西城へ退却し、守りを固めますが、王統らは漢中を攻略、徐成は剣門を攻略し、勝利を収めました。同年11月、梁州・益州は前秦の領土となり、王統は苻堅（ふけん）から南秦州刺史に任じられ、仇池の鎮守を任されました。

376年、使持節・武衛将軍苟萇（こうちょう）率いる13万の歩騎が前涼討伐に向かうと、苻堅は涼州刺史の王統、秦州刺史の苟池（こうち）、河州刺史の李弁（りべん）に、苟萇軍の後続として前涼へ向かわせます。同年8月、中書令梁熙（りょうき）、歩兵校尉姚萇（ようちょう）、王統、李弁らは清石津を渡り、前涼の驍烈将軍梁済（りょうさい）が守る河会城を攻め落としました。その後、苟萇らと合流し、纏縮城を攻略。前秦軍は姑臧（こぞう）に到達し、前涼を滅ぼしました。

385年、弟で益州刺史の王広が、益州の兵3万を率いて王統の元へ合流。

386年、王統と王広は皇帝苻丕（ふひ）に後秦を討つことを願い出ます。苻丕はこれを喜び、王統を鎮西大将軍・開府儀同三司・散騎常侍・秦州牧、王広を安西将軍・益州牧に任じました。

しかし、386年、王広は車騎大将軍毛興（もうこう）を攻めますが、毛興の反撃にあい秦州へ敗走。毛興は勢いに乗じて王統を攻め、王統は上邽（じょうけい）に籠城します。同年8月、姚碩徳（ようせきとく）が後秦の皇帝・姚萇に呼応して挙兵。姚碩徳は王統と対峙し、姚萇も合流して王統を攻めたため、戦況は徐々に後秦側に傾き、同年9月、王統は後秦に降伏しました。

392年、姚萇は病に倒れ、皇太子姚興（ようこう）は征南将軍姚方成（ようほうせい）から「王統らは部曲を持ち、後の災いとなる」との進言を受けます。姚興はこれを受け入れ、王統らを殺害しました。

人物・逸話

姚萇が王統を攻めた際、周辺の胡族の多くが姚萇に呼応しました。そのうちの一人、吉成詵（きつせいしん）は姚萇に対し、「王統は人材を登用せず、座して珠玉を弄ぶばかりでした。秦州の金帛を六軍に施し、賢人を顕彰すれば、州人の望みに叶うでしょう」と進言。姚萇はこの意見を受け入れました。

姚興らが王統らを殺害したと聞くと、姚萇は「王統兄弟は怪しい意図など抱いてはいなかった。徐成らは秦の名将であり、天下が定まったら任務を委ねようと考えていたのだ。これらを誅して気落ちさせるとは何事だ」と激怒したと伝えられています。

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