永冨正之

永冨正之（ながとみ まさゆき）

永冨正之（1932年10月13日 - 2020年12月17日）は、日本の現代音楽を牽引した作曲家、そして音楽教育者として多大な功績を残しました。東京藝術大学の名誉教授であり、その教育活動は後進の育成に大きく貢献しました。また、音楽理論家としても知られ、多くの著作を出版しました。ピアニストの永冨和子を妻に持ち、音楽一家としても知られています。

生涯

兵庫県西宮市に生まれた永冨は、東京藝術大学音楽学部作曲科で作曲を学び、池内友次郎、伊福部昭に師事しました。在学中から才能を発揮し、1954年には管弦楽作品「演奏会用アレグロ」が日本音楽コンクールで3位入賞を果たしました。1955年に同大学を卒業後、1959年にはフランスへ留学、パリ国立高等音楽院でトニー・オーバン、アンリエット・ピュイグ＝ロジェに師事し、作曲と音楽理論を深く学びました。特にピュイグ＝ロジェに師事した外国人学生としては、永冨が最初であったとされています。留学中には、フーガのクラスで1等賞、作曲科で1等賞、ピアノ伴奏科で2等賞を獲得するなど、その才能は高く評価されました。

1964年には、パリに留学していたピアニストの関原和子（後の永冨和子）と結婚。パリで切磋琢磨していた音楽家たちと交流を深めました。1968年には、演奏会で自身の作品「ピアノのための3つのエスキス」が妻である和子によって演奏されるなど、演奏家としても活躍しました。

1969年に帰国後、東京藝術大学で教鞭を執り始め、1984年には教授に就任。作曲とソルフェージュの指導に尽力しました。また、1979年には師であるアンリエット・ピュイグ=ロジェを客員教授として招聘するなど、教育者として多岐に渡る活動を行いました。1991年から1997年までは附属音楽高等学校の校長も兼務し、教育現場の発展に貢献しました。2000年に東京藝術大学を定年退職後も、聖徳大学で教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。

音楽理論家としては、数多くの著作を出版し、その理論は日本の音楽教育に大きな影響を与えました。1990年には、フランス教育功労章シュヴァリエを受章するなど、その功績は国際的にも認められています。また、日仏音楽協会や日本[[現代音楽協会]]の会員としても活動しました。永冨の教え子には、野平一郎、小鍛冶邦隆、横山幸雄、阿部加奈子など、現代音楽界を代表する音楽家たちがいます。

2020年12月17日、永冨正之は生涯を閉じましたが、彼の音楽と教育への情熱は、後世に受け継がれています。

作品

永冨正之の作品は、その緻密な構成と繊細な表現力が特徴です。以下に代表的な作品を挙げます。

演奏会用アレグロ（1954年）: 日本音楽コンクールで3位入賞を果たした管弦楽作品。
歌曲「落葉松（からまつ）」（1960年）: 北原白秋の詩による歌曲。
ピアノ・ソナタ（1961年）：ピアノ音楽における重要な作品の一つ。
弦楽四重奏曲（1962年）：室内楽作品における代表作。
1楽章の交響曲（1963年）: パリ国立高等音楽院作曲科卒業コンクールで1位入賞。2023年に日本初演された。
2台のピアノのための組曲（1963年）：独特な音楽的対話が魅力的な作品。
ピアノのための3つのエスキス（1967年）: 妻である永冨和子によって初演された。
「風のうた」（1980年）：フルートソロのための作品。
「詩篇23、98」（1987年）：男声合唱とピアノのための作品。

論文・出版

永冨正之は、音楽理論に関する論文や書籍を数多く執筆しました。特に、ソルフェージュ教育に関する研究は、日本の音楽教育に大きな影響を与えました。以下に代表的な論文・書籍を挙げます。

論文

ソルフェージュ教育概説（1974年）：東京藝術大学音楽学部年誌に掲載された論文。
バルトークのミクロコスモスの中のソルフェージュ（1980-1982年）：ムジカノーヴァ誌に連載された論文。
音楽と音楽言語－西洋器楽音楽の成立に果した言語の役割について－（2001年）：聖徳大学人文学部音楽文化研究会に掲載された論文。

出版

『和声の歴史』 (共訳)：オリヴィエ・アラン著。西洋音楽の和声の歴史を解説。
『ピュイグ=ロジェピアノ教本』 (訳)：アンリエット・ピュイグ＝ロジェ編。ピアノ教育における重要な教本。
『和声法』 (共訳)：イヴォンヌ・デポルト、アラン・ベルノー著。和声理論の基礎を解説。
『小さくたってじょうずな手』 (解説・運指)：アンリエット・ピュイグ=ロジェ作曲。ピアノ学習者のための小品集。
『サルーンのピアノ』 (解説)：アンリエット・ピュイグ=ロジェ作曲。生徒と先生のためのピアノ連弾曲集。

脚注

永冨正之は、現代音楽の発展に貢献しただけでなく、音楽教育の分野でも多大な功績を残しました。その音楽への情熱と教育者としての姿勢は、多くの音楽家に影響を与え、今もなお、その精神は受け継がれています。

外部リンク

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