江の島道

江の島道：古の賑わいを今に伝える道

江の島道は、かつて藤沢宿（現在の清浄光寺（遊行寺）周辺）や鎌倉街道から江の島へと通じる主要な道でした。これらの旧道は、江の島を目指す人々や地域住民の生活路として賑わい、多くの寺社や旧家が立ち並んでいました。しかし、明治時代以降になると鉄道や新道の開通により次第に廃れていき、現在は道標などが往時の姿を偲ばせるのみとなっています。

藤沢宿から江の島への道

旧藤沢宿から江の島へと続く道は約4kmで、現在の国道467号とほぼ並行しています。かつて東海道が境川を渡っていた遊行寺橋（旧大鋸橋）のたもとには、江島神社の一の鳥居があり、江の島道の入口となっていました。鳥居の脇には道標が立っていたと言われ、現在でも清浄光寺内には「江の島弁才天道標」が残っています。鳥居は関東大震災後の道路拡張工事で撤去されましたが、3代目の袴石が清浄光寺の宝物館前に保存されています。

国道467号を少し南下すると、旧江ノ島道への入り口があります。そこから蔵前、遊行通りを経て藤沢駅に至ります。遊行通りの入り口には、杉山検校が建てた道標が残っています。この道は神奈川県道306号藤沢停車場線となり、藤沢駅北口に達します。藤沢市役所新館脇には、杉山検校が建てた2基の道標が並んでいます。これらは元々、藤沢宿近くと辻堂にあったものを移設したものです。また、「従是右江嶋遍/當所龍口」と刻まれた道標も並んでいます。

藤沢駅北口からは、地下道を通って南口に出られます。南口正面には江ノ電ビルがあり、東側から「ファミリー通り」商店街がかつての江の島道です。約1kmほど進むと、かつて「石上の渡し」があった場所に至ります。境川は、この付近で大きく蛇行していました。道は東にカーブし、「上山本橋」で境川を渡り、ミネベアミツミの工場沿いに進むと、鎌倉道道標を兼ねた庚申塔があります。そこから川沿いの道を進み、「新屋敷橋」を過ぎると緩やかな上り坂になり、藤沢市立片瀬小学校の南門脇には杉山検校が建てた道標があります。

さらに進むと泉蔵寺があり、その先で三叉路を左に進むと、密蔵寺の山門前に「弘法大師道」「向 江嶋道」と刻まれた道標があります。密蔵寺先の三叉路には、杉山検校の道標と庚申塔があり、左に進みます。道は緩やかに右にカーブし、片瀬市民センター前に杉山検校の道標があり、その先には「西行の戻り松」と、その脇にも杉山検校の道標があります。この道標には「西行のもどり松」と裏面に刻まれています。道なりに進むと、湘南モノレール湘南江の島駅が見え、その手前の三叉路には「従是右江島遍」「左龍口遍」と刻まれた道標があります。交差点を渡ると江ノ島電鉄の踏切があり、左手が江の島駅です。

江の島駅からは「州鼻通り」となり、土産物店や飲食店が立ち並ぶ観光地らしい通りになります。この通りにも杉山検校が建てた道標があります。州鼻通りを抜けると、片瀬江ノ島駅へ渡る「弁天橋」があり、直進すると国道134号の交差点になります。地下道を抜けると、江の島弁天橋に到着します。

1902年に開通した江之島電氣鐵道は、当初この江の島道を路面電車として敷設する予定でしたが、人力車夫の反対により現行路線に変更されました。また、髙瀨彌一が設立した「江之島水道株式会社」は、1926年に江の島まで水道を送ることに成功しました。

小袋谷から江の島への道

鎌倉街道から分岐し、小袋谷村（鎌倉市小袋谷）から深沢を経由し、青蓮寺のあたりを抜け、津村・腰越村・龍口を経て江の島に至る道も江の島道と呼ばれました。津村・腰越付近は現在の神奈川県道304号腰越大船線とほぼ並行していますが、深沢周辺は工場の進出により旧道の位置が不明確になっています。青蓮寺付近にある谷戸坂の切り通しは、近世の姿をそのまま残しており、「鎌倉景観百選」に選ばれています。

その他の江の島道

江の島裏街道

藤沢市鵠沼神明の法照寺参道入口には、杉山検校が建てた江の島弁才天道標があります。この道標は、もともとは別の場所にありましたが、線路敷設や工場建設の影響で法照寺に集められました。工場建設以前の地図によると、中学通り（現在の湘南通り）から分岐し、現在の小田急江ノ島線と並行して東海道本線一本松踏切に至る道が江の島道であり、その途中に法照寺の道標があったと考えられます。一本松踏切を過ぎて左折した道は、小田急江ノ島線の踏切を渡り、「橘の辻」に至ります。この辻には、「右ゑのしまみち」と彫られた庚申塔があり、ここから右に進む道が「江の島裏街道」です。この道を進むと、藤沢橘通郵便局のある辻に至り、その先は宅地造成により不明瞭になっていますが、境川の石上の渡しで藤沢宿からの江の島道に合流していたと考えられます。

浜道

鴨長明の歌にもあるように、海岸線に沿った道も存在していたと考えられています。江戸時代には、大山詣りの帰りに江の島などを回るルートも利用されていました。大山と江の島を結ぶ最短ルートは不明確ですが、杉山検校の道標が藤沢市辻堂や鵠沼海岸にあったことから、これらを結ぶ江の島道の存在が考えられます。

脚注

これらの道は、歴史の中で多くの人々に利用され、様々な物語を紡いできました。現在ではその一部しか残っていませんが、これらの道標は当時の面影を伝え、今もなお人々の心を魅了しています。

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