江馬次郎

江馬次郎は、平安時代後期の武士であり、主に読み本系の『平家物語』や『曽我物語』などの物語にその名が登場します。しかし、同時代の史料や後世の編纂史料である『吾妻鏡』には記録されていません。

呼称について

江馬次郎の苗字は、文献によって「江間」や「江葉」と記されることがありますが、いずれも読み方は「えま」です。例えば、延慶本『平家物語』や『源平盛衰記』では「エマノ小次郎」、『源平闘諍録』では「江葉の小次郎近末」、真名本『曽我物語』では「江馬次郎」、流布本『曽我物語』では「江間小四郎」と様々な表記が見られます。

略歴

江馬次郎は、伊豆国田方郡江馬庄（現在の静岡県伊豆の国市江間）を拠点とする人物と考えられています。彼の名が特に見られるのは『曽我物語』です。永暦元年（1160年）に平治の乱で敗北し、伊豆に流罪となった源頼朝は、地元の武士である伊東祐親の三女（八重）と関係を持ち、千鶴御前という子をもうけました。しかし、この密通が祐親に露見すると、千鶴は殺害され、その生母も祐親に取り返されてしまいます。そして、祐親が娘を再嫁させた相手が江馬次郎でした。

治承4年（1180年）に平家打倒のために挙兵した頼朝は、石橋山の戦いで一度は敗北を喫しながらも、再起を果たし富士川の戦いで平家方を撃退するなど、関東地方の平定を進めました。江馬次郎は、寿永2年（1183年）に平家と源義仲が戦った篠原の戦いにおいて、平家方として討ち死にしました。一説によれば、彼の遺児は北条義時が引き取り、後に義時を烏帽子親として江馬小次郎と名乗ったと伝えられています。

参考文献

青木晃; 池田敬子; 北川忠彦 編『真名本 曾我物語』 1巻、平凡社〈東洋文庫〉、1987年。ISBN 4582804683。
梶原正昭; 大津雄一; 野中哲照 編『曽我物語』小学館〈新編日本古典文学全集〉、2002年。ISBN 4096580538。
「静岡県の地名」編集委員会 編「江馬庄」『日本歴史地名大系』 22巻《静岡県の地名》、平凡社、2000年。ISBN 4582490220。

登場作品

鎌倉殿の13人 - （2022年）、演：芹沢興人

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