池田峯雄

池田 峯雄

（いけだ みねお）

日本の農民運動家、政治家。1911年8月30日、茨城県筑波郡作岡村安食（現在のつくば市安食）で、小規模ながら地主の家に生まれました。しかし、茨城県立下妻中学校在学中の3年生の時、父が経営していた会社が倒産。一家は生活の立て直しのため、新治郡土浦町（現在の土浦市）へと転居を余儀なくされました。

土浦に移った後、池田氏は茨城県立土浦中学校（現在の茨城県立土浦第一高等学校）を卒業。その後、結城郡宗道村（現在の下妻市）で代用教員として教職に就きました。この教員生活を送る傍ら、旧制土浦中学校時代の同級生である小林孝祐を通じて文化サークルに参加するようになります。このサークル活動を通じて、当時の重要な農民運動組織であった全日本農民組合連合会（全農）の関係者、特に加藤四海らとの交流を深め、次第に農民運動の世界へと足を踏み入れていきました。

農民運動への関与を深める中で、1931年に発生した茨城県内の農民運動における大きな出来事である太田村事件に影響を受け、全農全会派の書記、さらには青年部長といった要職に就任しました。しかし、当時の農民運動は治安当局の厳しい監視下にあり、弾圧の対象となっていました。翌1932年9月、東茨城郡堅倉村（現在の小美玉市）で発生した小作争議を支援する活動中に、池田氏は検挙されてしまいます。この検挙により、1936年の秋まで長期間にわたる投獄生活を送ることとなりました。これは、戦前の日本の厳しい言論弾圧下での農民運動家としての活動が直面した現実でした。

第二次世界大戦が終結し、社会情勢が大きく変化する中で、池田氏は1945年に日本共産党へ入党しました。党員として、地元である茨城県での活動に力を注ぎ、党茨城県委員としても手腕を発揮しました。そして、1949年の第24回衆議院議員総選挙に、旧茨城3区（定数5）から日本共産党公認候補として立候補。激しい選挙戦を制し、初めて国会議員としての当選を果たしました。この選挙において、旧茨城3区から当選した五人の議員の中で、池田氏は最も若い議員でした。この当選は、池田氏自身の政治家としてのキャリアにおける頂点であり、また、茨城県における日本共産党の選挙史においても特筆すべき出来事となります。

しかし、衆議院議員としての活動は1期に留まりました。続く1952年の第25回衆議院議員総選挙では、現職議員として再選を目指しましたが、前回の選挙から得票数を大幅に減らし落選。その後も、1958年の第29回総選挙から1972年の第33回総選挙にかけて、日本共産党公認候補として旧茨城3区から計5回にわたり立候補しましたが、再び当選することは叶いませんでした。

特筆すべきは、池田峯雄氏が1949年の衆議院議員総選挙で旧茨城3区から当選したという事実が、2024年現在に至るまで、茨城県内の選挙区において日本共産党の候補者が国政選挙（衆議院議員総選挙または参議院議員通常選挙）で当選した唯一の事例であるという点です。これは、茨城県における共産党の選挙活動の歴史において、池田氏の当選がいかに異例であったかを示しています。

政治の第一線から退いた後も、池田氏は茨城県における農民運動や共産党の歴史を見守りました。1998年12月3日、胸膜炎のため茨城県つくば市内の病院で死去しました。享年87。

自身の経験に基づいた著作として、『茨城農民運動の回顧』（1980年、筑波書林）を残しています。この著書は、激動の時代における茨城県の農民運動の歩みを知る上で貴重な資料となっています。

池田峯雄氏は、戦前からの農民運動、戦後の政治活動を通じて、茨城県の社会運動史に大きな足跡を残した人物と言えるでしょう。

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