沈充

沈充（しん じゅう）

沈充（生年不詳 - 324年）は、東晋初期に生きた軍人であり、字を士居と名乗りました。呉興郡武康県を本貫とし、子には東晋の揚武将軍である沈勁がいます。彼は王敦の乱において王敦側として重要な役割を果たしましたが、最終的には追討軍に敗れました。

生涯

王敦との出会いと台頭

大興3年（320年）10月、沈充は王敦によって招かれ、参軍に任じられます。彼は同郷の銭鳳を推挙し、銭鳳もまた王敦に重用されるようになりました。沈充と銭鳳は王敦の野望に賛同し、様々な策謀を巡らせて王敦の信任を得ていきます。父の葬儀を外部に委ねるほど、王敦との関係を深めていきました。

湘州刺史の任官を巡る動き

11月、王敦は宣城内史であった沈充を、揚威将軍甘卓に代えて湘州刺史に任じるよう朝廷に働きかけますが、司馬睿はこれを認めず、左将軍司馬氶を湘州刺史に任命しました。

王敦の乱での活躍

大興4年（321年）1月、王敦が武昌で挙兵すると、沈充は龍驤将軍として呉興郡で兵を挙げ、これに呼応しました。王敦は沈充を大都督・東呉諸軍事に任じ、その軍事力を高く評価しました。4月には呉国を攻略し、呉国内史張茂とその三人の子を討ち取るという戦果を挙げています。6月には、銭鳳と共に王敦の主要な謀臣とされ、王敦は二人の進言にのみ従うようになったと言われています。二人の讒言によって命を落とした者は少なくありません。

周札一族の滅亡

太寧元年（323年）12月、王敦は会稽国内史周札（周玘の弟）の一族の隆盛を妬んでいました。銭鳳は周札一族の権勢を除くため、沈充を利用して周札一族を滅ぼそうと画策します。銭鳳の進言を受けた王敦は、周札一族を反逆者として粛清することを決定しました。太寧2年（324年）1月、王敦は周札及びその一族が反逆を計画しているとして、諮議参軍周筵を処刑しました。参軍賀鸞を沈充の元に派遣し、沈充は周札の兄弟やその子らを奇襲して殺害。会稽に進軍し、周札を襲撃しました。不意を突かれた周札は数百人で応戦しますが、兵は逃げ散り、周札は討ち取られました。

王敦の死と沈充の最期

7月、王敦が病死すると、皇帝司馬紹は沈充を説得するため、同郡出身の沈楨を派遣し、朝廷に帰順すれば司空に任じると伝えました。しかし、沈充は「三公は人々が仰ぎ見るほどの重職、どうして自分のような者が任じられようか！甘言や手厚い贈物は古くから人が畏れるものである。丈夫たるもの、始まりと終わりは貫かねばならぬ。自分が道を変えてしまえば、誰が自分を受け容れようか！」と拒絶し、再び兵を挙げて建康を目指します。

挙兵前、沈充は妻子に「男児として豹尾旗を立てるほどの高位に就けなかった。もう、ここに還ることもないだろう」と告げました。これに対し、前宗正卿虞潭は会稽で沈充討伐のために兵を挙げ、司馬紹は虞潭を冠軍将軍・会稽内史に任じました。前安東将軍劉超・宣城内史鍾雅も沈充討伐に呼応し、虞潭は長史孔坦を前鋒として浙江を渡り、沈充軍を追撃しました。

1万余の兵を率いて驃騎大将軍王含らの軍に合流しようとした沈充に対し、司馬顧颺は建康を湖水で水没させる進言をしますが、沈充は聞き入れませんでした。朝廷側は北方から北中郎将劉遐・奮威将軍蘇峻らを呼び寄せ、王含らの軍と合流した沈充は、劉遐らが到着したばかりで疲労しているとみて夜襲を仕掛けますが、劉遐らの反撃に遭い大敗。青渓で劉遐に敗れました。

尋陽郡太守周光が1千余の兵を率いて駆けつけ、王敦が既に亡くなっているにも関わらず銭鳳と共に反逆を続ける兄の周撫を諌めたことで、兵士たちは戦意を喪失し逃亡が相次ぎました。王含らは陣を焼いて逃亡し、庾亮率いる追討軍が沈充らを追撃。沈充は逃走中に道に迷い、かつての部下である呉儒の家に辿り着きます。呉儒は沈充を家に入れると、彼を殺害し、その首級を建康に送りました。

人物・逸話

幼少の頃から兵書を好み、呉興では勇敢で強い人物として知られていました。しかし、沈充と銭鳳は、媚びへつらいが上手く、悪賢い人物であるとも評されています。王敦が権力を握ると、沈充らは驕り高ぶり、思うがままに殺戮を行ったため、人々は彼らの没落を予見していました。沈充の子である沈勁は、連座して処刑されるところを同郷の銭挙に匿われ、後に呉儒の一族を滅ぼしたと伝えられています。

もう一度検索