虞潭

虞潭（ぐ たん）

虞潭（263年? - 341年?）は、中国の晋代に活躍した官僚・軍人であり、字は思奥（しおく）といい、会稽郡余姚県（現在の浙江省寧波市余姚市）の出身です。祖父は呉の重臣であった虞翻であり、名門の家柄に生まれました。

生涯

虞潭は若い頃から才能を発揮し、揚州で従事や主簿を歴任し、秀才として推挙されました。斉王司馬冏に才能を認められ祭酒に任じられます。その後、沶郷県令、醴陵県令と地方官を歴任し、その手腕を発揮しました。

太安2年（303年）に張昌が反乱を起こすと、多くの郡県が張昌に屈服する中、虞潭は義兵を挙げ、張昌の部将である鄧穆らを討ち取りました。その功績により、建平郡太守を兼任するよう推挙されますが、病を理由に固辞しました。各地を転戦し、軍功を重ねた虞潭は、都亭侯の爵位を授けられました。

永興2年（305年）には、陳敏が反乱を起こすと、虞潭は東下して陳敏の弟である陳讃を江州に攻撃しました。広州刺史の王矩から廬陵郡太守に推挙され、諸軍とともに陳恢を平定すると、南康郡太守に転じ、東郷侯に進みました。

永嘉5年（311年）、琅邪王司馬睿の檄に応じ、江州刺史の華軼討伐のため廬陵へ進軍します。華軼は既に平定されていましたが、湘川の杜弢の反乱軍が依然として勢力を保っていました。江州刺史の衛展に安成郡太守を兼任するよう推挙されます。甘卓が杜弢の反乱軍に追われ宜陽に駐屯していたため、虞潭は軍を進めて甘卓を救援しました。甘卓から長沙郡太守を兼任するよう推挙されますが、固辞しました。王敦からも湘東郡太守を兼任するよう推挙されますが、病を理由に断りました。

杜弢の乱平定後、琅邪王司馬睿に召し出され、丞相軍諮祭酒となり、琅邪国中尉に転じました。建武元年（317年）、司馬睿が晋王となると、虞潭は屯騎校尉に任じられました。その後、右衛将軍、宗正卿と昇進しますが、病を理由に帰郷しました。

太寧2年（324年）、王含・沈充らが建康に迫ると、虞潭は一族や郡中の豪族たちを召集して、1万あまりの義軍を編成して起兵し、仮の明威将軍を自称しました。反乱を討つべく進軍し、上虞に入りました。明帝により冠軍将軍に任じられ、会稽国内史を兼ねました。長史の孔坦を先鋒として浙江を渡らせ、沈充に追いつかせました。虞潭自身は西陵に入り、孔坦の後詰めを務めました。沈充を捕らえると、撤兵し、建康に召還され、尚書に任じられました。ほどなく右衛将軍となり、散騎常侍の位を加えられました。

太寧3年（325年）、成帝が即位すると、虞潭は呉興郡太守として出向し、輔国将軍の号を加えられました。沈充を討った功績により、零県侯に進みました。咸和2年（327年）に蘇峻が反乱を起こすと、虞潭は都督三呉晋陵宣城義興五郡諸軍事に任じられました。咸和3年（328年）、建康が反乱軍に落とされ、成帝が石頭城に移されると、虞潭は呉興郡を固く守って情勢の変化を待ちました。陶侃らが東下してくると、虞潭は郗鑒・王舒らとともに挙兵しました。仮節・監揚州之江西諸軍事となり、諸軍と足並みを揃えて、反乱軍を東西から挟み撃ちにしました。督護の沈伊を呉県に派遣して反乱軍の管商と対峙させたが、沈伊が管商に敗れると、虞潭は自ら節を返上しました。

咸和4年（329年）に蘇峻の乱が平定されると、虞潭は老齢の母の介護を理由に、官を辞して余姚県に帰りました。成帝により鎮軍将軍・呉国内史に任じられ、また会稽国内史に転じました。出発しないうちにまた呉国に戻されました。前後の功績により、武昌県侯に進められました。戦乱の後で民衆は飢饉に苦しんでおり、虞潭は官倉を開いて米を振る舞うよう上表し、飢民を救恤しました。また滬瀆塁を修復して、海賊を防ぎました。

咸康2年（336年）、衛将軍に進みました。母が死去したため辞職して喪に服しました。喪が明けると、侍中・衛将軍として召還されました。建康に到着すると、侍中のまま右光禄大夫・開府儀同三司の位を加えられました。在官のまま死去し、享年79歳でした。開府・侍中のまま左光禄大夫の位を追贈され、諡は孝烈と贈られました。

子の虞仡が後を嗣ぎ、右将軍司馬に上りました。

人物

虞潭は、軍事的な才能に優れていただけでなく、民政にも手腕を発揮しました。戦乱で疲弊した民衆を救済し、飢饉対策や海賊対策に尽力するなど、民衆からの信頼も厚かった人物です。

家系

祖父：虞翻
父：虞忠
子：虞仡
孫：虞嘯父

伝記資料

* 『晋書』巻76 列伝第46

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