河戸駅

河戸駅（こうどえき）



広島県広島市安佐北区亀山1丁目に位置していた、西日本旅客鉄道（JR西日本）可部線にかつて存在した鉄道駅です。

概要



河戸駅は、可部駅から三段峡駅間の非電化区間廃止に伴い、2003年（平成15年）12月1日にその役割を終えました。廃止後、可部駅から旧河戸駅周辺までの区間を電化し、鉄道路線を復活させるための検討が進められました。その結果、2017年（平成29年）3月4日には、可部駅とあき亀山駅を結ぶ区間が営業を再開しました。これは、JR発足後初めての廃止された鉄道路線が復活した事例として特筆されます。ただし、旧河戸駅自体が復活したわけではなく、その位置を挟むような形で新たな駅（河戸帆待川駅、あき亀山駅）が設置されています。

歴史



河戸駅の歴史は、仮乗降場として始まった後、駅へと昇格しました。


駅構造



河戸駅は地上駅で、ホームは単式の1面1線構造でした。駅舎はなく、ホーム上には簡素な待合室があるのみでしたが、入口に近い待合室のそばには汲み取り式の便所が設置されていました。

廃線後しばらくは、駅名標が撤去され、待合室がフェンスで囲われるなど、当時の姿が比較的保たれていました。しかし、可部線の電化延伸工事に伴いホームは撤去されました。待合室については、現在はあき亀山駅近くの神社横に移築され、保存されています。

駅周辺の立地



河戸駅は、可部中心部の「可部地区」から見て西隣に位置する「亀山地区」内にありました。周辺は住宅密集地であり、駅は路地のような場所にひっそりと位置していました。

可部町一帯は、広島市内から約20km、自動車で30分圏内という立地条件から、1955年（昭和30年）には亀山地区に大規模な県営住宅が建設されるなど、宅地開発が進みました。河戸駅は、こうした人口増加に対応するため、既に開業していた可部線に仮乗降場として追加され、後に正式な駅へと昇格した経緯があります。昭和40年代（1965年～1975年）にかけても住宅団地の建設が相次ぎ、1969年（昭和44年）時点では、亀山地区の人口は可部町の総人口の約28%を占めるまでになっていました。

駅跡地付近には、寺院や幼稚園、スーパーマーケット、簡易郵便局などがあります。かつて駅の入口近くには中華料理店がありましたが、部分廃線後に閉店しました。

当駅から三段峡方面へ延びる線路は、南側を流れる太田川と広島県道267号宇津可部線に沿っていました。この県道は、可部駅方面から当駅前までは比較的整備されていましたが、そこから先は幅員が狭くなり、太田川に寄り添うように蛇行するため、線形が悪く、悪天候時には通行止めとなることもあります。線路と県道のさらに北側には国道191号が並行しており、こちらは交通量が多く、沿線には商店なども多く見られます。

当駅と可部駅の間には、国道54号や可部バイパスがあり、特に可部バイパスは2003年（平成15年）に可部線を跨ぐ部分が完成しています。このバイパス沿いを中心に、安佐北区役所や警察署、税務署といった公共機関、小学校、中学校、スーパーマーケットやドラッグストア、ホームセンターなどの商業施設が集まっています。

廃止から復活開業への道のり



可部線の可部駅以北の区間については、過去にも廃線問題が持ち上がったことがあります。1984年（昭和59年）に国鉄が非電化区間の部分廃止方針を示した際、代償案として可部駅～河戸駅間の電化計画が提示されました。しかし、河戸以遠の区間切り捨てに対する強い懸念や、当時の並行道路の状況の悪さから地元の強い反発を受け、この計画は棚上げとなりました。

その後、JR西日本が1998年（平成10年）9月に可部駅～三段峡駅間の鉄道路線廃止・バス転換計画を発表すると、地域住民の間で鉄道路線存続や電化を求める運動が活発化しました。1994年（平成6年）夏には亀山地区の住民約6,000世帯により『可部駅・河戸駅間電化促進期成同盟会』が結成され、電化に向けた働きかけや、試験増便時の駐輪場整備といった利用促進活動が行われました。しかし、利用実績はJR西日本が示す基準に届かず、2003年（平成15年）の区間廃止に至りました。

廃止後も、旧河戸駅周辺の住民と広島市は月に一度の連絡会を開催するなど、電化延伸に向けた連携を続けました。住民による電化延伸の要望活動や、電化復活を訴えるパレードも行われました。一方で、具体的な資金集めや広島市の財政的な制約から、計画はなかなか進展しませんでした。しかし、廃線から5年間で住民が増加したことや、2008年（平成20年）9月末に国の幹線鉄道等活性化事業費補助の対象に選定されたことを受け、電化復活に向けた議論が本格的に行われることとなりました。

地域住民は、まちづくりフェスタの開催や、可部線復活を願うクッキーの試作、さらには鉄道会社の事例を参考に枕木オーナー制度や駅命名権といった住民プランの提案など、多様な活動を展開しました。2009年（平成21年）12月には、広島市とJR可部線活性化協議会が、可部線の電化延伸による一部復活案を活性化計画の素案に盛り込むことを明らかにしました。これを受けて、宅地開発の構想や区画整理事業の準備も進められ、さらなる住民増加による利用需要の喚起が図られました。

そして2011年（平成23年）2月、広島市は可部駅から廃止区間にある河戸駅西側に設置予定の新駅までの約2kmを電化し、復活させる方針を固めたことを発表しました。これはJR西日本との合意を経て、廃線跡を活用した新たな鉄道路線として位置づけられることになりました。計画では、建設費の大半を広島市と国が負担し、JR西日本が維持管理費を負担する方向で調整が進められました。しかし、路線の新設扱いとなるため、原則として新たな踏切の設置が難しい点が課題となり、関係機関との協議が必要となりました。

新駅の設置場所については、荒下県営住宅跡地への建設に向けて調整が進められましたが、同時期に安佐市民病院の移転先としても検討されていたため、紆余曲折がありました。電化復活に向けた当初の目標であった2015年春の開業は、踏切の設置箇所調整や、駅建設用地の境界確定作業に時間を要したことから、2016年春、さらに2017年春へと二度延期されました。

その間、地域住民の活動も続き、目的を達成した『可部駅・河戸駅間電化促進期成同盟会』は解散し、後継組織へと引き継がれました。また、地元の神社が可部線電化延伸の方針を受けて『長井ふたたびの宮』と改称される出来事もありました。2016年12月には、『長井ふたたびの宮』の近くに、旧河戸駅の待合室が移築・復元されて保存されました。

2016年7月8日、JR西日本は営業再開区間に設置される新駅の名称を発表しました。中間駅は河戸帆待川駅、終着駅はあき亀山駅と命名されました。こうして、廃止から約13年3ヶ月、広島市が復活方針を固めてから約6年1ヶ月の歳月を経て、2017年（平成29年）3月4日のダイヤ改正により、可部駅からあき亀山駅間の営業が再開されました。

旧河戸駅は復活せず、新たな駅が設置された形ですが、この駅の存在と地域住民の活動が、JR化後初の廃線復活という歴史的な出来事につながる重要な一歩となりました。なお、河戸駅以北の可部線跡地については、観光鉄道としての復活計画なども検討されましたが、中断され、一部では線路や駅舎の撤去が行われています。

廃駅後、河戸駅周辺には広島交通の「河戸バス停」が設置され、可部駅や宇津方面を結ぶ可部線代替バスが運行されてきました。可部駅～あき亀山駅間の復活開業後も、この代替バスは引き続き運行されています。

廃止時点の隣の駅


西日本旅客鉄道（JR西日本） 可部線
可部駅 - 河戸駅 - 今井田駅

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