河瀬秀治

河瀬秀治（かわせ ひではる）

河瀬秀治は、天保10年12月15日（1840年1月19日）に生まれ、昭和3年（1928年）4月2日に没した日本の武士、官僚、そして実業家です。丹後国（現在の京都府北部）出身で、本姓は牛窪、通称を外衛、雅号を雲影と称しました。

生い立ちと藩士時代

河瀬秀治は、丹後国加佐郡田辺（現在の京都府舞鶴市）で、藩士・牛窪成弘の三男として誕生しました。幼少の頃からその才能を見込まれ、嘉永元年（1848年）に宮津藩の家老であった河瀬治休の養子となります。その後、藩主・本庄宗秀から一字を賜り、「秀治」と名乗るようになりました。文久2年（1862年）頃から尊王攘夷運動に参加し、政治的な活動にも関わるようになります。

慶応4年（1868年）の鳥羽・伏見の戦いにおいて、宮津藩は幕府軍に味方し大敗を喫してしまいます。これにより、宮津藩は西園寺公望を総督とする山陰道鎮撫軍の標的となってしまいます。しかし、河瀬は藩内の議論をまとめ、西園寺らと会見し恭順の意を表明。この迅速な対応により、藩主・本庄宗武とその父である宗秀（元老中）の罪は不問となりました。河瀬のこの時の働きは、その後の彼の活躍を暗示するものでした。

明治維新後の官僚としての活躍

明治2年（1869年）、河瀬は新政府に出仕し、武蔵知県事に任じられます。翌年には、小菅県と改称された同県の権知事、後に知事として手腕を発揮しました。この時期には外国語学校を開設するなど、教育にも力を注ぎました。明治4年（1871年）には、廃藩置県後の府県再編に伴い、新設された印旛県の県令に転任します。印旛県では、茶の生産拡大や牧場設置のため、ホーレス・ケプロンを招聘するなど、先進的な政策を推進しました。明治6年（1873年）には、府県の再編成の方針が決定し、河瀬は新設される熊谷県の初代県令に就任するために、群馬県と入間県の県令を兼務することになりました。同様に、印旛県では千葉県新設を前提に、木更津県の権令であった柴原和が印旛県権令を兼任しました。そして同年6月15日、熊谷県が発足し、河瀬は初代県令として着任しました。熊谷県では、県内の富岡製糸場の成功に倣い、近代的な製糸工場の設置を進め、前橋や熊谷に学校を新設するなど、地方の発展に貢献しました。

実業家としての転身と美術振興

明治7年（1874年）、河瀬は内務省に入省し、内務大丞兼勧業寮権頭として、明治10年（1877年）の内国勧業博覧会の成功に尽力しました。その後、欧州視察の経験を生かし、渋沢栄一や五代友厚らとともに、明治13年（1880年）に日本最初の商工会議所である東京商法会議所を設立。また、佐野常民とともに龍池会を結成し副会頭に就任。美術奨励にも力を注ぎました。さらに、アーネスト・フェノロサを支援し、鑑画会の設立にも貢献しました。

明治14年（1881年）に農商務省に移籍し、商務局長兼工務局長となります。しかし、農商務少輔であった品川弥二郎との対立により退官。退官後も龍池会副会頭の職務を続けながら、横浜正金銀行の取締役や茶業組合の結成に尽力し、茶の生産と輸出の拡大に貢献しました。さらに、益田孝とともに「中外商業新報」（現在の日本経済新聞）を創刊するなど、実業界でも活躍しました。

明治20年（1887年）には、製紙会社である富士製紙（後の王子製紙）の設立に発起人として参加し、設立から明治24年（1891年）までの4年間、初代社長を務めました。

家族と栄典

河瀬秀治の家族構成は、実父に牛窪謙下、養父に河瀬治休がいます。妻は木戸孝允の妻の妹である玉松、そして山口県士族の湯川欽次郎の姉であるてるがいます。長男の河瀬春太郎は地主であり、植物園「妙華園」を経営し、アメリカへの桜の寄贈にも協力しました。長女は田部芳の妻、二女は田辺勉吉の妻、三女は有泉寛の妻となりました。

河瀬秀治は、その功績により、従五位、勲四等瑞宝章、従四位を授与されています。

まとめ

河瀬秀治は、幕末から明治にかけて激動の時代を生き抜き、武士、官僚、そして実業家として、日本の近代化に大きく貢献した人物です。彼の功績は、政治、経済、文化など多岐にわたり、その足跡は日本の歴史に深く刻まれています。特に、県令としての地方行政、商工会議所の設立、美術振興、新聞創刊など、彼の活動は日本の近代化を力強く推し進めました。

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