河辺正三

河辺正三：激動の時代を生きた陸軍大将

河辺正三（かわべ まさかず）は、1886年（明治19年）12月5日に富山県で生まれ、1965年（昭和40年）3月2日に没した日本陸軍の軍人です。最終階級は陸軍大将。

生い立ちと教育

河辺正三は、河辺純三の三男として生まれました。彼の兄弟には、終戦時の参謀次長であった河辺虎四郎中将や、軍医大佐の瀧田俊吾がいます。正三と虎四郎は共に陸軍士官学校と名古屋陸軍幼年学校に合格し、それぞれの受験地まで草鞋を履いて往復したというエピソードが残っています。

旧制高岡中学校を経て、陸軍士官学校（19期）を卒業。さらに陸軍大学校（27期）を優等で卒業し、軍人としてのエリートコースを歩みました。

軍歴

1907年（明治40年）12月26日に歩兵少尉に任官し、石川県野田村に駐屯していた歩兵第35聯隊附として軍歴をスタートさせました。その後、名古屋歩兵第6聯隊長、教育総監部第一課長、支那駐屯歩兵旅団長、第3軍司令官、支那派遣軍総参謀長、緬甸方面軍司令官、中部軍司令官、航空総軍司令官、第1総軍司令官、第1復員司令官といった要職を歴任しました。

日中戦争のきっかけとなった盧溝橋事件の際には、支那駐屯歩兵旅団長として、牟田口廉也歩兵大佐（当時）の直属の上官でした。また、太平洋戦争のインパール作戦においては、緬甸方面軍司令官として第15軍司令官であった牟田口廉也中将を指揮する立場にありました。

戦後

1945年（昭和20年）12月2日、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）は日本政府に対し、河辺を逮捕するよう命令しました。戦犯容疑で巣鴨拘置所に勾留されましたが、1947年（昭和22年）に釈放されています。

1948年（昭和23年）12月9日には、丸の内裁判で田村浩（元陸軍中将）の証人として出廷しました。

人物像

河辺正三は、インド独立運動の指導者であるスバス・チャンドラ・ボースを高く評価していました。ラングーンでボースと会見した際、彼のインド独立にかける意志に感銘を受けたと伝えられています。また、インパール作戦の背景には、ボースに対する日本軍側の「情」があったと考察しています。

朝鮮戦争時には、失業復員軍人らを集めた義勇軍の総司令官となる計画がありましたが、憲法の制約により実現しませんでした。

年譜

1907年（明治40年）5月31日：陸軍士官学校卒業
1907年（明治40年）12月26日：歩兵少尉任官、歩兵第35聯隊附
1910年（明治43年）11月30日：歩兵中尉任官
1915年（大正4年）12月11日：陸軍大学校卒業
1917年（大正6年）8月6日：歩兵大尉任官、陸軍省軍務局瑞西国駐在
1923年（大正12年）8月6日：歩兵少佐任官、教育総監部課員
1927年（昭和2年）7月26日：歩兵中佐任官
1929年（昭和4年）8月1日：獨国在勤帝国大使館附武官、獨国駐在員取締
1931年（昭和6年）8月1日：歩兵大佐任官
1932年（昭和7年）4月11日：歩兵第6聯隊長
1933年（昭和8年）8月1日：陸軍歩兵学校教導隊長兼同校教官兼同校研究部々員
1934年（昭和9年）3月5日：教育総監部第一課長兼陸軍通信学校研究部々員、陸軍軍需審議会委員、航空研究委員会委員
1936年（昭和11年）3月7日：少将任官、教育総監部附
1936年（昭和11年）4月30日：支那駐屯歩兵旅団長
1937年（昭和12年）8月26日：北支那方面軍参謀副長
1938年（昭和13年）2月15日：中支那派遣軍参謀長
1939年（昭和14年）3月9日：中将任官
1940年（昭和15年）3月9日：第12師団長
1941年（昭和16年）3月1日：第3軍司令官
1942年（昭和17年）8月17日：支那派遣軍総参謀長
1943年（昭和18年）3月18日：緬甸方面軍司令官
1944年（昭和19年）8月30日：参謀本部附
1944年（昭和19年）12月1日：中部軍司令官
1945年（昭和20年）2月1日：第15方面軍司令官兼中部軍管区司令官
1945年（昭和20年）3月9日：大将任官
1945年（昭和20年）4月7日：航空総軍司令官
1945年（昭和20年）8月16日：兼陸軍航空本部長
1945年（昭和20年）10月1日：第1総軍司令官兼陸軍航空本部長
1945年（昭和20年）10月15日：第1復員司令官兼陸軍航空本部長
1945年（昭和20年）11月30日：予備役
* 1948年（昭和23年）1月31日：公職追放の仮指定を受ける

河辺正三は、激動の時代を生き、数々の重要な役職を歴任した軍人でした。彼の生涯は、日本の近代史を深く理解する上で欠かせないものと言えるでしょう。

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